odd_hatchの読書ノート

エントリーは2800を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2022/10/06

2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

週刊本 INDEX

2012/05/03 丹生谷貴志「天使と増殖」(朝日出版社) 2012/05/04 天野祐吉「巷談コピー南北朝」(朝日出版社) 2012/05/05 小田晋「グリコ・森永事件」(朝日出版社) 2012/05/07 磯崎新「ポスト・モダン原論」(朝日出版社) 2012/05/08 フェリックス・ガタ…

トーヴェ・ヤンソン「ムーミン谷の彗星」(講談社文庫)

小学生のころ、読書は好きだったが、貧しい家だったので本を買ってもらうことはあまりなかった。あるとき、母が移動図書館で借りてきたものを読んでいっぺんに好きになってしまった。小学4年生から卒業するまでに、「ムーミン」「ドリトル先生」「ツバメ号…

トーヴェ・ヤンソン「たのしいムーミン一家」(講談社文庫)

第2作。彗星事件(事件の詳細は「ムーミン谷の彗星」を参照)の翌年、冬眠から覚めたムーミン谷のお話。彗星事件でムーミン谷に逃れたヘムレンさんやじゃこうねずみもいるし、スナフキンも旅には出ていない(途中で出立するが)。お話は、ムーミンが遊びに出…

トーヴェ・ヤンソン「ムーミンパパの思い出」(講談社文庫)

第3作目で1950年の作。 風邪を引いてすっかり弱気になってしまったパパ。ベッドに引きこもっているのをママが心配して、自分の思い出を書いたらと勧めた。パパの思い出と、それを読み聞かせられた子供たちの会話が交互に現れる。 よく知られるように、パパは…

トーヴェ・ヤンソン「ムーミン谷の夏まつり」(講談社文庫)

その年の夏のムーミン谷はとても暑く、しかも休火山が活動を開始していた。ムーミントロールはスナフキンが帰ってこないので不満気味。スノークのお嬢さんはムーミンの気を引こうとするが失敗してしまう。ある蒸し暑い夜、不気味な地鳴りと地割れが起こり、…

トーヴェ・ヤンソン「ムーミン谷の冬」(講談社文庫)

1957年初出の第5作。 冬になると、スナフキンはバックパックを背負って南に行き、ムーミン一家は松葉を腹いっぱい食べて11月から4月まで冬眠してすごす。その冬もそうやって過ごすはずだったが、ムーミントロールは真冬のあるとき目を覚ましてもう眠れなくな…

トーヴェ・ヤンソン「ムーミン谷の仲間たち」(講談社文庫)

1963年に発表された短編集。ムーミン一家が主人公になることはめったになくて、新しいキャラクターのほうに描写の力を入れる。 春のしらべ ・・・ スナフキンは春の調べが生まれてくるのを待っていた。彼の歌は孤独の時でないと生まれない。そのきざしはあっ…

トーヴェ・ヤンソン「ムーミンパパ海へ行く」(講談社文庫)

憂鬱が募ったムーミンパパは、家族の賛同を得ないで、灯台守になることにした。付き添うのは、ママにムーミントロールにちびのメイ(いつのまにかムーミン家の養子になっていた)の3人。島には灯台はあるものの無人で放置され、無口で人嫌いの漁師がいるだ…

トーヴェ・ヤンソン「ムーミン谷の十一月」(講談社文庫)

秋がムーミン谷に近づく。そろそろ雪に閉ざされ、みんな家に閉じこもることになるのだ。そのようなある日、谷の人々が突然、人恋しくなった。 スナフキンは旅の途中、「雨の曲」を作ろうとしたが、どうしてもメロディが生まれてこなかった。雨にふさわしい五…

ヤコブセン「ここに薔薇ありせば」(岩波文庫)

著者の名は、クラシック音楽ファンにとってはシェーンベルクの大作「グレの歌」の原作者であるということで知られている。杉田玄白プロジェクトによって、グレの歌の元が収録されている「サボテンの花ひらく」が翻訳されて読むことができる。まことにありが…

イヴァシュキェヴィッチ「尼僧ヨアンナ」(岩波文庫)

バブルの時代の1980年代後半、深夜のTVでこの小説を原作にする映画が放送された。その録画をみたときには、荒野とそこにある修道院が印象的だったが、ストーリーがまったく謎であった。この小説を読むと、謎はどこにもなくて、とても明晰。もう一度映画…

カレル・チャペック「ロボット」(岩波文庫)

「ロボットという言葉はこの戯曲で生まれて世界中に広まった.舞台は人造人間の製造販売を一手にまかなっている工場.人間の労働を肩代わりしていたロボットたちが団結して反乱を起こし,人類抹殺を開始する.機械文明の発達がはたして人間に幸福をもたらす…

カレル・チャペック「山椒魚戦争」(岩波文庫)

「赤道直下のタナ・マサ島の「魔の入江」には二本足で子供のような手をもった真黒な怪物がたくさん棲んでいた。無気味な姿に似ずおとなしい性質で、やがて人間の指図のままにさまざまな労働を肩替りしはじめるが…。この作品を通じてチャペックは人類の愚行を…

深見弾編「東欧SF傑作集 上」(創元推理文庫)

東欧SF傑作集の上巻。この地方のSFの読書はレムを数冊くらい。頼りない読書からの印象ではあるが、東欧共産主義国家のSFにはどこか冷たい空気が流れている。それはあまり心地よくない温度であって、その物語世界にいることは気持ちのいいものではない…

深見弾編「東欧SF傑作集 下」(創元推理文庫)

東欧SF傑作集の下巻。1980年に編まれた時には下記の国別分類が有効だったが、1989年の東欧革命で分裂したり、なくなってしまった国もある。チェコスロヴァキアの作家はかろうじてチャペックとパリに亡命したミラン・クンデラをしっているだけ。その他の国…

スタニスワフ・レム「エデン」(早川書房)

「惑星エデン―宇宙空間に巨大なオパールのしずくのように煌めくその星に、6人の地球人科学者を乗せた宇宙探査船が不時着した。だが、地表で彼らが見たものは、巨大な生体オートメーション工場と、その大量の廃棄物、そしてエデン人の累々たる死骸の堆積だっ…

スタニスワフ・レム「星からの帰還」(ハヤカワ文庫)

星間宇宙船プロメテウス号を建造し、彼らは10年間の調査探索の旅に出た。帰還したとき、地球時間で127年が経過している。そのとき、地球では驚くほどの変化が生じている。宇宙船乗組員たちはとまどう。 西暦2200年頃の地球は、機械文明を発達させている。超…

スタニスワフ・レム「ソラリスの陽のもとに」(ハヤカワ文庫)

惑星ソラリスは発見されてから数百年がたっているが、地球人の研究を頑強に拒んでいる。二つの恒星を周回する惑星であり、通常は軌道は安定しないのだが、この惑星は安定した軌道を持っている。それはどうやら、惑星全体を占める海のためであるらしい。地球…

スタニスワフ・レム「砂漠の惑星」(ハヤカワ文庫)

「6年前に消息をたった宇宙巡洋艦コンドル号捜索のため“砂漠の惑星”に降り立った無敵号が発見したのは、無残に傾きそそりたつ変わり果てた船体だった。生存者なし。攻撃を受けた形跡はなく、防御機能もそのまま残され、ただ船内だけが驚くべき混乱状態にあっ…

スタニスワフ・レム「天の声」(サンリオSF文庫)

小熊座に観測機を向けていたらニュートリノの信号を受信した。でたらめなノイズだと放置していたら、それは規則性をもっていることがわかった。およそ416時間ごとに繰り返され、二進法で表示されているらしい。人類初めての知的生命体とのコンタクト! いろめ…

スタニスワフ・レム「枯草熱」(サンリオSF文庫)

火星飛行士だった「私」は探偵に転職し、ある「事件」の調査を依頼される。50歳過ぎの中年男性が泳ぎに出て溺死したり、狂って窓から飛び降りたり、高速道路を歩いて轢き殺されたり、拳銃を口にくわえて自殺したり。その数12人。共通点はというと、50歳くら…

「けいおん!」が面白い(何周遅れ?)

おくればせながらアニメ「けいおん!」が面白くなった。 きっかけはニコニコ動画のMADだが、マンガを買い、Amazon.comでUSA版DVDを購入した(国内版だと中古で3-4万円かかるのが、送料込みで1万円だった)。 同じ音楽を主題にしたアニメに「のだめカンタービ…

INDEX 科学史関連

2013/02/28 科学を考えるときに考えておくとよいこと 2013/02/27 吉田光邦「日本科学史」(講談社学術文庫) 2013/02/26 村上陽一郎「ペスト大流行」(岩波新書) 2013/02/25 小田垣雅也「キリスト教の歴史」(講談社学術文庫) 2013/02/22 生松敬三/木田元…

科学の「権威」について

趣向を変えて、昨日のtwitterのつぶやきを再録します。 科学が権威をもつということについて考えてみた。①科学者集団の内部の人たちは、科学は疑うもの、確立していなくて正しさは将来変わりうる可能性がある。一方、すでにある言明は覆すことが困難であるこ…