odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

岩田規久男 「「小さな政府」を問いなおす」(ちくま新書)

2006年初出で構造改革、郵政民営化などを「小さな政府」を進めた小泉政権の政策を検討する。そのために、「小さな政府」のアイデアの由来と具体的な事例も解説する。 第1章 「大きな政府」へ ・・・ 大きな政府が求められるのは、1)貧困層の増加→所得再分…

岩田規久男「日本経済を学ぶ」(ちくま新書)

2005年頭に出た新書。「金融入門」「国際金融入門」「マクロ経済学を学ぶ」で勉強した後に、実践編のこの本を読む。 第1章 戦後復興から高度経済成長期まで ・・・ 戦後の経済成長は、政府の「余計な干渉はしない、勝手にやってください」という政策で実現…

岩田規久男 「マクロ経済学を学ぶ」(ちくま新書)

経済学のマクロ的側面は、国民総生産、国内総生産、雇用量、物価などの集計量。これらがどのようにして決定されるかを明らかにするのがマクロ経済学。 第1章 国民総生産の決定 ・・・ 国民総生産GNPはある一定期間に国民が生産されたモノとサービスの合計額…

岩田規久男 「国際金融入門(旧版)」(岩波新書)

国際金融入門(旧版)では扱わなかった国際金融の概論。国際収支と為替レートの話にフォーカスしている。 なお、自分が読んだのは1995年初版の第1版。のちの2009年に改定されたので、そちらを読むことを薦めます。 序 章 安定的な国際金融を求めて ・・・ 新…

岩田規久男 「金融入門(旧版)」(岩波新書)

ここでは、モノやサービスの販売が行われる商品市場ではなくて、資金や貨幣の売買が行われる金融市場の仕組みと政府や中央銀行のできることを解説している。金融市場は目に見えにくい市場であるので(それこそ個人投資をしたり、企業の経理や財務担当になら…

小栗虫太郎 INDEX

2014/05/23 小栗虫太郎「完全犯罪」(春陽文庫) 2014/05/22 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(現代教養文庫) 黒死館殺人事件1 2014/05/21 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(ハヤカワポケットミステリ) 黒死館殺人事件2 2014/05/20 小栗虫太郎「日本探偵小説…

小栗虫太郎「完全犯罪」(春陽文庫) 館が「犯人」になれる人物を見つけると彼の意識を「変態」心理化させ、まるで現実的ではない方法で人を殺害させる。

小栗の初期短編を収録したもの。1901年生まれで、若いころから秀才。19歳で結婚。21歳で亡父の遺産で印刷所を開業するものの4年で倒産。以後は働かずに小説を書き、ずっと売れないまま。一家は転々と放浪し、最初に売れたのが「完全犯罪」。結核で倒れた横溝…

小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(現代教養文庫) 黒死館殺人事件1 小栗虫太郎の畢生の大作。多くの人が混乱し、困惑した作品。その理由はすさまじいまでの圧縮にある。

1934年の雑誌「新青年」に連載された小栗虫太郎の畢生の大作。多くの人が混乱し、困惑した作品。これで4度目の読み直し。章ごとにメモを取って、細部を忘れないようにして読むことにした。これが正しい読み方かどうかは置いておくとして、行ってみようかGO。…

小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(ハヤカワポケットミステリ) 黒死館殺人事件2 摩訶不思議な状況に法水の饒舌と錯乱の論理に面食らうが、現在の事件と過去の確執に注目しよう。

2014/05/22 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(現代教養文庫) 黒死館殺人事件1 の続き 第四篇 詩と甲冑と幻影造型 古代時計室へ ・・・ 乙骨耕案医師による伸子診察の報告。失神は故意か内発であり、目覚めた時に自分の名前を書かせたら「降矢木伸子」と書い…

小栗虫太郎「日本探偵小説全集 6」(創元推理文庫) 黒死館殺人事件3 真犯人の名が明かされたあとの解決編はわずか数ページで最初の事件しか説明していないが、全部の事件は「解決」している。

2014/05/22 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(現代教養文庫) 黒死館殺人事件1 2014/05/21 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(ハヤカワポケットミステリ) 黒死館殺人事件2 の続き 第七篇 法水は遂に逸せり!? シャビエル上人の手が…… ・・・ レヴェズとの対話。…

小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(河出文庫) 黒死館殺人事件4 「客観的」「合理的」な思考よりも象徴思考や呪術的思考が優先される「本格」探偵小説。

2014/05/22 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(現代教養文庫) 黒死館殺人事件1 2014/05/21 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(ハヤカワポケットミステリ) 黒死館殺人事件2 2014/05/20 小栗虫太郎「日本探偵小説全集 6」(創元推理文庫) 黒死館殺人事件3 の続き…

小栗虫太郎「白蟻」(現代教養文庫) 中編(一編130枚)の傑作3本を収録。デビュー作、中期、最後期と、小栗の作家生活を鳥瞰できる作品を集めた。

小栗の中編(一編130枚)の傑作3本を収録。デビュー作、中期、最後期と、小栗の作家生活を鳥瞰できる作品を集めた。 完全犯罪 昭8.7 ・・・ 小栗虫太郎「完全犯罪」(春陽文庫)に詳細を書いたので省略。再読しての感想は、法水シリーズは「黒死館殺人事件」…

小栗虫太郎「青い鷺」(現代教養文庫) 「二十世紀鉄仮面」を併録。ちゃんと書けば1000枚くらいの長編になる素材を惜しげなく400枚に圧縮。

作家が「新伝奇小説」と銘打った作品。「黒死館」やその他の「本格」探偵小説が、暗く、閉鎖的で、書物の引用にまみれていたのが、東南アジアから五島列島に架空都市までの広がりとアクションをもち、ユーモアと恋愛がある。 二十世紀鉄仮面 1936.05-08 ・・…

小栗虫太郎「潜航艇「鷹の城」」(現代教養文庫) 「本格」探偵小説から別の小説分野の開拓を模索していた時代。法水麟太郎にふさわしい場所はもうない。

昭和10年代の作品を収録。「本格」探偵小説から別の小説分野の開拓を模索していた時代。ときどき思い出したように法水麟太郎が登場する。でももう彼にふさわしい場所はなくなってしまったみたい。 潜航艇「鷹の城」 1935.04-05 ・・・ 1915年オーストリア海…

小栗虫太郎「紅毛傾城」(現代教養文庫) 小栗流の「本格探偵小説」はすでに極めた次の苦闘。周辺諸国の異境の地を舞台にした新・伝奇小説の試み。

「日本探偵小説全集 6」(創元推理文庫)に収録されたが、触れることができなかった次の作の感想をここに。オフェリア殺し 1935.02 ・・・ 稀代の沙翁俳優・風間九十郎が失踪したため、急遽、法水が自作の戯曲で主演・ハムレットを務めることになった。沙翁…

小栗虫太郎「成吉思汗の後宮」(講談社文庫) 新・伝奇小説は、この国の歴史に題材をもとめず、世界史(主に西洋史)の変革期に題材をとる。

小栗虫太郎は1946年に45歳で病没しているので、出版年から書いた時の年齢がわかる。「黒死館」のような「本格」ものは30代前半で、ここにあるような伝奇・冒険小説は30代後半。ほとんどの小説に日本人は登場しない。 海螺斎沿海州先占記 1941.10 ・・・ 室賀…

小栗虫太郎「人外魔境」(角川文庫) ほぼ地球全土を舞台にした戦前冒険小説。折竹は軍部から派遣された諜報部員でもある。

昭和14年1939年から昭和16年1941年にかけて雑誌「新青年」に連載された冒険小説。 有尾人 ・・・ コンゴ・モザンビイク(ママ)に住む日系人・座間のもとに有尾人が届けられる。それは、秘境「悪魔の尿溜」からさまよい出たものとしれた。フィアンセ・マヌエ…

黒井千次「永遠なる子供 エゴン・シーレ」(河出書房新社) シーレの作風の変化は、彼の自意識が中二病のような子供の独我論から、大人になって他者がいる世界を発見したという青年男性の成長心理で説明できる。

「1918年にウィーンで28歳の生を閉じたシーレの絵が現代人をひきつけてやまない秘密はなにか。天才画家の短い生涯をたどり、秘められた精神と感覚のドラマを追究する画期的労作。」 初版は1984年。たしかにこのあと数年間、バブルが終わるまでの間、エゴン・…

柏木博「肖像の中の権力」(講談社学術文庫) 作家性とは無縁のグラフィックから権力の意思とか大衆の欲望が見えてくる。1930~40年代の日本メディアの研究。

絵葉書、雑誌の表紙、ポスター、広告など、およそ作家性とは無縁のグラフィックがある。その作者の無名性により意味合いはないとされるが、たくさん収集したとき、おのずと権力の意思とか大衆の欲望が見えてくる。まあ、そんなことをとくに1930-40年代の上記…

デイヴィッド・ウイングローブ編「最新版SFガイドマップ」(サンリオSF文庫) サイバーパンクより前の1984年の最新を網羅。評論のできは悪いが書誌情報は有益。

1972年のジョン・ガッテニョ「SF小説」(文庫クセジュ)ではSF小説の未来は明るい。それから12年後の1984年にイギリスで出たこの「最新版SFガイドマップ」になるとSFは危機にあるか解体寸前であるような認識に変化している。どういうところが危機かという…

ジョン・ガッテニョ「SF小説」(文庫クセジュ) SFは方法とテーマの文学。人間や社会にペシミスティック出会っても科学への信頼は揺るがない。

これを読むと、ミステリ(探偵小説)は形式の文学だなあと思う。形式は犯罪→探偵→捜査(解決)で構成される。そこにはしばしばテーマはない。形式を踏まえていれば、何の内容もなくてかまわない。量産されるミステリ(探偵小説)はそういうものだ。また作品…

ボワロ&ナルスジャック「探偵小説」(文庫クセジュ) 科学的な知識を持って論理的に神秘や謎に取り組む作家・読者と無責任な大衆社会のセンセーショナリズムが探偵小説を作った

フランスのミステリ事情はあまりこの国では知られていない。ガボリオ、ボアゴベ、ルルー、ミシェル・ルブラン、シムノン、アルレー、ジャブリゾ、カレフ、本書の作家を除いて、複数の翻訳があるのはあと何人いるのだろう。これを続けると、自分の無知を天下…

権田満治「日本探偵作家論」(講談社文庫) 戦前探偵小説が読めなかった時代、リアリズム文学流行の時代にロマン主義復活を目す。踏み込みが浅いのはしかたない。

1970年から雑誌「幻影城」に連載された論文に、書下ろしを加えて1975年に出版。その年の「日本推理作家協会賞」の評論部門を受賞。講談社文庫にはいったのは1977年。 取り上げられた作家は以下の通り。 小酒井不木、江戸川乱歩、甲賀三郎、大下宇陀児、横溝…