odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ロバート・ハインライン「輪廻の蛇」(ハヤカワ文庫) 1940年代の短編集。若いころはセンチメンタルで過去を向いた人だった。

1959年に刊行された短編集だが、書かれたのは1940年代。 ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業 ・・・ 昼の記憶を持たない男が夫婦の私立探偵に自分が何をしているか調べてくれと依頼する。冒頭はアイリッシュのような犯罪小説。しかし、探偵の経験することは…

ロバート・ハインライン「失われた遺産」(ハヤカワ文庫) 1940年代の短編集。ストーリーテリングよりも著者の主張が先走った若書きの小説。

1953年初出の短編集。1940年代の短編が収録。 深淵 1948 ・・・ 月から地球を訪れた男。税関をぬけたところでさっそくスリに会う。ホテルに入ると服が消えている。財布も入れ替わっている。男は月から重要なマイクロフィルムを運ぶという危険な仕事をしてい…

ヘンリー・カットナー「御先祖様はアトランティス人」(ソノラマ文庫) ヤンキー気質を全面に出したほら話の作家という評価。クトゥルフ神話のたくさんの書き手のひとりだったらしい。

「読書の快楽」角川文庫1985年で紹介されたときには、すでに絶版品切れで入手に苦労した一冊。 ヘンリー・カットナーは1930年代から活躍したパルプ雑誌専門の短編小説家。いくつものペンネームを使って大量の短編を書いたが、44歳で早世。完成度とかワンダー…

小田実 INDEX

2011/12/07 小田実「何でも見てやろう」(河出書房新社) 2015/09/07 小田実「日本の知識人」(講談社文庫)-1 2015/09/04 小田実「日本の知識人」(講談社文庫)-2 2013/08/01 小田実/開高健「世界カタコト辞典」(文春文庫) 2015/09/03 小田実「「物」の…

ロス・マクドナルド INDEX

2015/09/25 ロス・マクドナルド「トラブルはわが影法師」(ハヤカワ文庫) 2015/09/24 ロス・マクドナルド「人の死に行く道」(ハヤカワ文庫) 2015/09/23 ロス・マクドナルド「象牙色の嘲笑」(ハヤカワ文庫) 2015/09/22 ロス・マクドナルド「凶悪の浜」(…

ロス・マクドナルド「トラブルはわが影法師」(ハヤカワ文庫)

1945年2月(この日付は重要)、久しぶりの休暇を得た海軍少尉サム・ドレイクはホノルル経由で、デトロイトに変えることになった(このおかげでサムは沖縄戦を経験しなくて済んだし、たぶん原爆投下にもかかわっていない)。海軍の友人に誘われてパーティにい…

ロス・マクドナルド「人の死に行く道」(ハヤカワ文庫)

探偵リュー・アーチャーの登場第3作。初登場の「動く標的」はまだ読んでいないが、ポール・ニューマン主演の1960年代の映画は面白かった。小説そのままに、探偵が捜査しているのがほとんどで、暴力はときたま。たくさんの登場人物がでてくるので、観客は記憶…

ロス・マクドナルド「象牙色の嘲笑」(ハヤカワ文庫)

高校生の時に読んで、なんだかよくわからず、もう一度読みなおそうと思っていた。難しいと感じたのは、プロットが複雑だったからだった(ルーシーの殺人は資産家の息子の失踪に関係していて、その息子が付き合っていた女はギャングの愛人で、愛人は二股かけ…

ロス・マクドナルド「凶悪の浜」(創元推理文庫)

「常夏の南カリフォルニア、ロサンジェルス郊外。太平洋の青い波に洗われるマリブ海浜に背中から心臓を打ち抜かれた若い女の死体が発見された。迷宮入りとなったこの事件の2年後、再び惨したいが漂着し、あい前後して別に二つの殺人事件が発生する。非常の…

ロス・マクドナルド「ファーガスン事件」(ハヤカワ文庫)

1960年初出の長編第14作にはリュー・アーチャーが登場しない。かわりに、ウィリアム・ガナースンという弁護士が登場。父がペンシルヴァニア出身、朝鮮戦争に出兵して帰国後弁護士資格を取得。ロサンゼルスの売れない弁護士。見た目や性格はアーチャーと変わ…

ロス・マクドナルド「ウィチャリー家の女」(ハヤカワ文庫)

「女の名前はフィービ・ウィチャリー、年齢は21才。彼女は霧深い11月の早朝、サンフランシスコの波止場から姿を消した。それから三ヶ月 、フィービの行方はようとして知れなかった。そして今、私立探偵リュウ・アーチャーは父親のホーマー・ウィチャリー…

ロス・マクドナルド「縞模様の霊柩車」(ハヤカワ文庫)

24歳の娘ハリエットが気に入らない芸術家の男と結婚しようとしている。娘には叔母から莫大な遺産が入ることになっているが、自由に使えるのは25歳になってから。そのため海軍軍人の父マーク・ブラックウェルは厳格に育ててきたが、娘は孤独で、放縦な性格に…

ロス・マクドナルド「さむけ」(ハヤカワ文庫)

「実直そうな青年アレックスは、茫然自失の状態だった。新婚旅行の初日に新妻のドリーが失踪したというのだ。アーチャーは見るに見かねて調査を開始した。ほどなくドリーの居所はつかめたが、彼女は夫の許へ帰るつもりはないという。数日後アレックスを尋ね…

ロス・マクドナルド「ブラック・マネー」(ハヤカワ文庫)

アーチャーが頼まれたのは、大学を卒業した24歳の娘ジニーの行方。富豪の娘でフィアンセもいたが、突然インテリ風のフランス人と結婚し、駆け落ちするといいだしたのだ。フランス人の正体と行く先を突き止め、できれば阻止してほしい。願ってきたのはフィア…

ロス・マクドナルド「ドルの向こう側」(ハヤカワ文庫)

過去と現在が入り組んでいるので、注意深くなければならない。ストーリーはアーチャーに寄り添うが、プロットは過去20年前から現在(1964年刊)までの長さになる。 「大実業家の息子トムが脱走したので探してほしい-----アーチャーは少年院の院長から依頼を…

ロス・マクドナルド「一瞬の敵」(ハヤカワ文庫)

アーチャー視点でないサマリーをつくると、19歳の粗暴な青年デイヴィがいる。孤児で、とても攻撃的で、LSDもやっていて、カウンセラーにかかっていたが殴り倒した後、職に就けずに居所を転々としている。彼には秘密があり、3歳の時に青年の父親が轢死に会い…

ロス・マクドナルド「別れの顔」(ハヤカワ文庫)

「ロスアンジェルスに住む元警察官の私立探偵リュウ・アーチャーはアイリーンという裕福な中年婦人から依頼を受ける。空き巣に入られ、彼女の大切にしていた黄金の小箱が盗まれたというのだ。アイリーンは息子の大学生ニックが盗ったのではないかと怖れていた…

ロス・マクドナルド「地中の男」(ハヤカワ文庫)

初出の1971年の親子問題を図式化すると、親は1930年代の不況と1940年代の戦争の経験者。社会の不安定さと貧困を見てきたので秩序と平穏を求める。子らは1950-60年代の高度経済成長期に子供時代をすごし、ベトナム戦争の理不尽に出会う。国内では公民権運動が…

小田実「日本の知識人」(講談社文庫)-1

1964年刊行。 「知識人」という言葉がどのような人たちを指すのか。大体わかったような気分になるけど、その内実を見ると、けっこうあいまい。実際に、歴史や社会によって異なっている。18世紀のイギリスと19世紀のロシアと20世紀の日本(それも前半と後半は…

小田実「日本の知識人」(講談社文庫)-2

承前 2015/09/07 小田実「日本の知識人」(講談社文庫)-1 この本の主題は知識人であるが、同時に高等教育と学生にも言及する。著者は知識人をできるだけ広くとらえるようにしていて、学生もふくまれるという立場をとっているので。1960年代は、下記にあるよ…

小田実「「物」の思想、「人間」の思想」(講談社文庫)-1

「何でも見てやろう」のあとの大きな出来事は、ベトナム戦争が始まったこと。著者は市民によるベトナム戦争反対の運動体「ベトナムに平和を!市民連合」をつくる。「ワシントンポスト」に反戦広告(岡本太郎の「殺すな」の文字が印象的)を出したり、米軍脱走兵…

小田実「「物」の思想、「人間」の思想」(講談社文庫)-2

続けて歴史と現実について。 人間のなかの歴史 1969.1 ・・・ 人間の中にある、人間に食い込む「歴史」を考える。それは時間の体積ではない。時間の堆積は切れ目折れ目のないのっぺらぼうなものだが、歴史は切れ目折れ目があって、人間の中を変える。たとえ…

小田実「義務としての旅」(岩波新書) 1965~66年、さまざまな国のベトナム反戦運動の連携を探る世界の旅にでかける。

「何でも見てやろう」から5年後、新たな旅に出る。世界を眺めることを目的としていた前回の旅と異なるのは、さまざまな国のベトナム反戦運動の連携を探る明確なミッションがあったこと。まずこの国で「ベトナムに平和を!反戦連合」の運動を始めた後、作家…