odd_hatchの読書ノート

エントリーは3400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2025/9/26

2026-01-01から1年間の記事一覧

ジョン・ポリドリ「吸血鬼」(青空文庫) 民話のバンパイアは農民の不死者だったが、本作から貴族出身で血を吸うものになった。

世界で最初の「吸血鬼」小説とされるもの。1819年。 孤児だが多額の資産をもっているオードブリ青年が、老人ルスヴン卿に関心をもつ。彼は社交界ですこぶる評判が悪い。純真な乙女に取り入ってねんごろになるが、すぐに飽きて女を侮辱して捨ててしまうのだ。…

岡本綺堂 INDEX

2026/05/14 岡本綺堂「世界怪談名作集1」(青空文庫)-1 ブルワー・リットン卿「幽霊屋敷と幽霊ハンター」 世界システムの覇権国に脅威をもたらすものと秩序を守るものの対決。 1929年2026/05/13 岡本綺堂「世界怪談名作集1」(青空文庫)-2 プーシキンと…

岡本綺堂「世界怪談名作集1」(青空文庫)-1 ブルワー・リットン卿「幽霊屋敷と幽霊ハンター」 世界システムの覇権国に脅威をもたらすものと秩序を守るものの対決。

岡本綺堂編訳の「世界怪談名作集」を読む。昭和4年1929年初出。世界の怪談の邦訳は明治13年(1881年)からあるが(下記井上勤訳の「龍動(ロンドン)鬼談」)、余程の好事家だけのものだった。それより「牡丹灯籠」「真景累が淵」「番町皿屋敷」のような…

岡本綺堂「世界怪談名作集1」(青空文庫)-2 プーシキンとディケンズ、怪談として読むか世界文学として読むか。

2026/05/14 岡本綺堂「世界怪談名作集1」(青空文庫)-1 ブルワー・リットン卿「幽霊屋敷と幽霊ハンター」 世界システムの覇権国に脅威をもたらすものと秩序を守るものの対決。 1929年の続き 今から見直すと、岡本綺堂が選択した西洋怪談(一編だけ中国産)…

岡本綺堂「世界怪談名作集2」(青空文庫)-1 19世紀の怪談の恐怖の源泉は不死者ノスフェラトゥ。最後の審判で救われないものに誘惑されると天国に行けないから。

2026/05/13 岡本綺堂「世界怪談名作集1」(青空文庫)-2 プーシキンとディケンズ、怪談として読むか世界文学として読むか。 1929年の続き 19世紀の怪談、怪奇小説を読むと、恐怖の源泉になっているのは不死者(アンデッド)なのがわかった。不死者は殺害さ…

岡本綺堂「世界怪談名作集2」(青空文庫)-2 怪談は女性嫌悪をあらわにする。(付)メスメリズムについて

2026/05/12 岡本綺堂「世界怪談名作集2」(青空文庫)-1 19世紀の怪談の恐怖の源泉は不死者ノスフェラトゥ。最後の審判で救われないものに誘惑されると天国に行けないから。 1929年の続き 19世紀の怪談、怪奇小説を読みふける。でもここまで来ると、怪異に…

エドガー・A・ポー INDEX

エドガー・A・ポー INDEX

エドガー・A・ポー「探偵小説短編集」(青空文庫) 犯罪を起こすような特異な人(アノマリー)が都市の秘密を暴くことをポーは発見した。

21世紀になって新潮文庫のエドガー・A・ポーが巽孝之氏による新翻訳になった。そのために、昭和にでていた佐々木直次郎訳がパブリックドメインになった。青空文庫で手軽に読めるようになったので、なつかしさのあまり再読する。このエントリーでは探偵小説と…

エドガー・A・ポー「ゴシック・怪奇短編集」(青空文庫) 不死者アンデッド、分身、メスメリズムと催眠術。ポーの怪談は多種多様。

2026/05/08 エドガー・A・ポー「探偵小説短編集」(青空文庫) 犯罪を起こすような特異な人(アノマリー)が都市の秘密を暴くことをポーは発見した。 の続き 21世紀になって新潮文庫のエドガー・A・ポーが巽孝之氏による新翻訳になった。そのために、昭和に…

エドガー・A・ポー「催眠術の啓示」(創元推理文庫) 「存在の大いなる連鎖」に基づくポーの宇宙と霊魂の考え。この延長に「ユリイカ」があるはず。

2026/05/07 エドガー・A・ポー「ゴシック・怪奇短編集」(青空文庫) 不死者アンデッド、分身、メスメリズムと催眠術。ポーの怪談は多種多様。 の続き 「催眠術の啓示」1844.08を読みたいのだが、青空文庫にはなかったので、創元推理文庫で再読。とてもおも…

創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 1」(創元推理文庫) 19世紀の英国怪奇小説名作選。「猿の手」「秘書奇譚」

創元推理文庫が1969年に編んだ「怪奇小説傑作選」全5冊。1から3巻が英米編、4巻が仏独編、5巻が東欧ロシア編。それぞれの著名文学研究者が編集に参加した。そのまえにハヤカワポケットミステリーで「幻想と怪奇」全2巻を都筑道夫編集で出していた。こ…

創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 2」(創元推理文庫)-1 20世紀前半の「モダンホラー」。不死者アンデッドと吸血鬼だけが恐ろしいのではない。

2026/04/28 創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 1」(創元推理文庫) 19世紀の英国怪奇小説名作選。「猿の手」「秘書奇譚」 1969年の続き 解説の平井呈一によると、第2巻は20世紀の「モダンホラー」を集めた。21世紀には「モダンホラー」はS.キング以降の…

創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 2」(創元推理文庫)-2 西洋の外を恐れるようになったのは植民地主義の裏返しで西洋の自信喪失の現れ。

2026/04/27 創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 2」(創元推理文庫)-1 20世紀前半の「モダンホラー」。不死者アンデッドと吸血鬼だけが恐ろしいのではない。 1969年の続き 20世紀前半の怪奇小説の特長は、映画の影響を受けていること。ジョルジ・メリエス…

創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 3」(創元推理文庫) 19世紀に生まれた怪奇小説と探偵小説とSFは相互に影響し越境しながらジャンルを盛り上げていった。

2026/04/24 創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 2」(創元推理文庫)-2 西洋の外を恐れるようになったのは植民地主義の裏返しで西洋の自信喪失の現れ。 1969年の続き 第3巻は「英米の時代を異にしたいろいろな作家」の「それぞれほんものの代表作」を集め…

ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ「カーミラ・緑茶」(BOOKS桜鈴堂) ゴシックロマンスの伝統を忠実に守って新規性を見出せず、マイナー作家になってしまった。

ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュはアイルランド出身の作家(姓からフランスの人とずっと思ってました)。 カーミラ1872 ・・・ とても信じがたい危難を経験した女性ローラの口伝。父がシュロス城を購入して子供のころから住んでいる。周囲には人家はなく…

ロバート・スティーブンソン「ジキル博士とハイド氏」(青空文庫) 薬剤で分裂したもう一つの自我は抑圧階級であるジェントリに報復する。

10年ぶりの再読。前回の感想は以下のエントリー。 odd-hatch.hatenablog.jp ロンドンで国会議員が残虐な方法で殺害されるという事件が起きた。目撃者によると、犯人は小柄で見ただけで恐怖を催すような異相の持主。これは最近ロンドン界隈で話題になっている…

ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-4 ペンシルバニアの吸血鬼が倫敦を侵略するので城を破壊するのが正当化されるのは植民地をもつ世界覇権国だから。

6年ぶりの再読。おもしろかった。前回の感想でストーリーをまとめたので、今回はなし。2020/04/13 ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-1 1897年2020/04/10 ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-2 1897年2020/04/0…

ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-5 吸血鬼に襲われた女性の症状は肺病とヒステリー。上流階級の女性は社会進出をめざす。

2026/04/20 ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-4 ペンシルバニアの吸血鬼が倫敦を侵略するので城を破壊するのが正当化されるのは植民地をもつ世界覇権国だから。 1897年の続き 小説には二人の女性が登場する。ルーシーとミナ。彼女ら…

ブラム・ストーカー「ドラキュラの客人」(19世紀堂書店) ストーカーの怪奇短編集。「ドラキュラ」の陰に隠れてあまりバッとしない。

ブラム・ストーカーの死後、未発表の短編を未亡人がまとめて出版した。 ドラキュラの客人 ・・・ 下記の説明を参照。 「『ドラキュラの客』はブラム・ストーカーが死後の1914年に発表した短編で、ヴァンパイア伝承を踏まえたゴシックホラーです。物語は弁護…

小川公代「ブラム・ストーカー『ドラキュラ』」(NHK出版 日本放送協会) 近代と前近代、男と女などの二項対立におさまりきれない「あわい」の存在に目を向けよう。

ストーカーの「ドラキュラ」かあ。もう二回読んで解釈したし、参考書を数冊読んだぞ。もう新しい見方なんぞないだろ。ま、一つお手並み拝見と行くか。 という思い込みで読んだら、予想をよいほうに裏切られました。男視点で読むと読み落しがたくさんあること…

丹治愛「ドラキュラ・シンドローム」(講談社学術文庫)-1 ドラキュラは帝国主義・反ユダヤ主義・感染症としての外国恐怖(ゼノフォビア)の物語。

ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」を再読して、植民地小説、女性の社会参加を書いた小説だというのはわかった。その考えはどこまで広げられるのかということで、解説書を読む。驚くのは、似たような関心で「ドラキュラ」を読む人はたくさんいて、「…

丹治愛「ドラキュラ・シンドローム」(講談社学術文庫)-2 「ドラキュラ」は19世紀末ヨーロッパの変化を読み解く格好のテキスト。

2026/04/14 丹治愛「ドラキュラ・シンドローム」(講談社学術文庫)-1 ドラキュラは帝国主義・反ユダヤ主義・感染症としての画国恐怖(ゼノフォビア)の物語。 1997年の続き 2023年に追加された「増補 もうひとつの外国恐怖症」によると、1997年から2023年ま…

ハワード・ラブクラフト「ラブクラフト傑作集」(KINDLE堂本秋次訳) この作家がのちのモダンホラーを作ったが、人種差別がひどいので忘れられるべき。

ラブクラフトとは相性が悪い。創元推理文庫のラブクラフト傑作集・全集を5巻まで読んだが、ピンとこなかった。ファンにならなかった。四半世紀ぶりに、創元推理文庫編集部「怪奇小説傑作選 3」を読んだら、そこに「ダンウィッチの怪」が載っていた。これは…

ノエル・キャロル 「ホラーの哲学」(フィルムアート社)-1 とても不満な一冊。「存在の大いなる連鎖」や流出論をつかえば、説明はもっと簡潔になるのに。

ホラーを哲学する。分析を明快にするために、ホラーは18世紀後半に生まれて、テキスト・音声・映像で表現されたもの(小説や詩、戯曲、ラジオドラマ、映画、TVドラマなど。マンガやアニメ、ゲームも入れていいだろう)。さらに自然科学では許されない存在が…

ノエル・キャロル 「ホラーの哲学」(フィルムアート社)-2 同じ話の解決のつけ方の違いで、ホラーと探偵小説とSFが生まれた。西洋ホラーと日本怪談の特長を比較してみた。

2026/04/09 ノエル・キャロル 「ホラーの哲学」(フィルムアート社)-1 とても不満な一冊。「存在の大いなる連鎖」や流出論をつかえば、説明はもっと簡潔になるのに。 1990年の続き 19世紀の小説をたくさん読むと、こういう気づきがある。 ある男(なぜ男か…

ファーガス・ヒューム「二輪馬車の秘密」(扶桑社) 丸亭素人と横溝正史がカットしたロマンスがこの小説の本道。日本人男性が訳すとミソジニーがあらわになる。

ファーガス・ヒュームの「二輪馬車の秘密」を読了。 19世紀にもっとも売れた探偵小説なのだそう。とはいえ、作者の報酬はちっぽけだった。そのかわりに生涯140冊の本をだすことができた。何が幸いするか、わからない。 「7月12日は、オーストラリア人作家フ…

丸亭素人「鬼車」(扶桑社) ヒュームの「二輪馬車の秘密」をミステリの完成度を高めるために刈り込んだらつまらなくなってしまった。

丸亭素人(まるてい・そじん)(1864-1913)はwikiにも項目がない。そこで九鬼紫郎「探偵小説百科」(金園社)を引用する。 「"今日新聞"が"都新聞"と改題したのは明治二一年で、黒岩涙香は翌年一一月に都新聞〟の主筆になる。彼はそのとき「美人の獄(フロレ…

南陽外史「魔法医者 魔法医師ニコラ」(扶桑社) 独逸医師のアルバイトでチベットまで旅した日本人の冒険談。後半は近代海戦の悲惨な描写が続く。

明治探偵冒険小説を電子書籍で復刻するプロジェクトが進んでいる。名のみ知っているが読むことがかなわなかった明治期の探偵冒険小説が手軽に読めるのはありがたい。この時期のものは黒岩涙香くらいしか入手できないからね。 本書はガイ・ブースビーの「ドク…

黒岩涙香「法庭の美人 ダーク・デイズ」(扶桑社) 妻による殺人の発覚を恐れる未熟な青年の逃避行。探偵がいない19世紀のクライムストーリー。

黒岩涙香の翻案が復刻された。「法廷の美人」は涙香の新聞連載小説の第一作で1888年に出た。もとはヒュー・コンウェイという英国の作家が書いた「ダーク・デイズ」1884年。わずか4年で邦訳がでるとは驚き。涙香の本を探す能力はとても素早い。 ヒュー・コン…

H・G・ウェルズ「タイム・マシン」(角川文庫) 19世紀幽霊小説のフォーマットで、外国人嫌悪と人類退化の恐怖を語る。

山形浩生訳でウェルズ「タイム・マシン」三度目を読んだ。時間旅行者が友人たちに冒険旅行を語っているという状況なので、旅行者の語りを「です」「ます」の口語口調にした。そのためにとても読みやすい、わかりやすい。過去の昭和の邦訳が報告書の堅苦しい…