odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

サンリオSF文庫

デイヴィッド・ウイングローブ編「最新版SFガイドマップ」(サンリオSF文庫)

1972年のジョン・ガッテニョ「SF小説」(文庫クセジュ)ではSF小説の未来は明るい。それから12年後の1984年にイギリスで出たこの「最新版SFガイドマップ」になるとSFは危機にあるか解体寸前であるような認識に変化している。どういうところが危機かという…

E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-3

2014/04/18 E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-1 2014/04/21 E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-2 ダニエルの不安定さは、小説の書き方に表れている。表向きの話は、博士号を取得した25歳の若者が就職先を探してニュー…

E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-2

2014/04/18 E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-1 1は息子の話だったが、こちらは父の話。 アイザックソン事件はローゼンバーグ事件を模しているのはあきらか。 ローゼンバーグ事件 - Wikipedia ローゼンバーグの獄中書簡は山田晃訳「愛は…

E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-1

自分の知り合いだった人に、大正生まれで共産党員の父を持つ昭和30年代生まれの人がいた。都内の高校から大学に進学するにつれ、1970年代のこととして新左翼の運動に共感をもっていく。その結果、家族内では当時の左翼運動を巡る議論が白熱したという。とき…

トマス・ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」(サンリオSF文庫)

ある夏の日の午後、エディパ(オイディプスの女性名とのこと)・マース夫人(夫はラティーノのDJ)はカリフォルニア州の不動産業者大立者であるピアス・インヴェラリティ(これもなにかのもじりらしい)の遺言執行人に指名された。かつて付き合ったことがあ…

ウラジミール・ナボコフ「ナボコフの一ダース」(サンリオSF文庫)

タイトルは「一ダース」だけど、収録されているのは13編。なんてサービスのよいナボコフさんなんでしょう。ロシア貴族でロシア革命で西洋に亡命。ロシア語とフランス語と英語を自在に操る文章の魔術師。その短編集を読んでみた。 フィアルタの春 1938 ・・・…

ウラジミール・ナボコフ「ベンドシニスター」(サンリオSF文庫)

ドイツとロシアに隣接としているその架空の国は、パドゥクという独裁者が指導する普通人党が支配している。独裁者の主張は「均等主義(イクォーリズム)」というもので、共産主義は経済の平等の達成を目指したが、ここでは能力と権能についての平等を達成し…

アーシュラ・ル・グィン「コンパス・ローズ」(サンリオSF文庫)

「風の十二方位」に続く短編集は1974-82年に書かれた短編を収録。タイトルの由来は著者によると、 「”風のバラ”、つまり羅針盤(コンパス)が示す四つの方位、東西南北は、いまだだれの口にものぼったことのない五つ目の方位、つまり中心、コンパス面(ロー…

アーシュラ・ル・グィン「天のろくろ」(サンリオSF文庫)

タイトルの「天のろくろ」は、まあ運命みたいな、あるいは世界を創造管理している超越的な存在のいいかな。解説によると、作者はこのことば(「The Lathe of Heaven」)を荘子に見つけた(第二十三)というが、あいにく英訳した訳者の誤訳であるとこのこと。…

レイ・ブラッドベリ「ブラッドベリは歌う」(サンリオSF文庫)-2「歌おう、感電するほどの喜びを!」

続けて「歌おう、感電するほどの喜びを!」収録分から。 吾は歌う、この身の充電するまで! ・・・ 母を亡くしたあと、子供たちはある広告を見つける。「電子お祖母ちゃん」! 13歳のトムと11歳のティモシーはすぐにお祖母さんになつくが、末っ子のアガサはど…

レイ・ブラッドベリ「ブラッドベリは歌う」(サンリオSF文庫)-1「キリマンジャロ・マシーン」

原題は「I Sing The Body Electriv!」。初出は1980年代初め。サンリオ文庫は520ページもあるぶっとい文庫で、ハヤカワ文庫で再販されたときは「キリマンジャロ・マシーン」と「歌おう、感電するほどの喜びを!」の2冊に分けられた模様。ハヤカワ文庫版はもっ…

ボブ・ショウ「見知らぬ者たちの船」(サンリオSF文庫)

測量調査船サラフォード号は、辺境の惑星をめぐって地図を作る仕事。開発予定もない異境の地であっても地図は必要だというのでひどい条件で仕事をしている。そのため、短期間で金を稼ぐ目的の連中しか来ない。タイトル「見知らぬ者たち」というのはすぐにメ…

ボブ・ショウ「おれは誰だ」(サンリオSF文庫)

2386年では徴兵に応じたものは過去一年間の記憶を消されることになっていた。しかし、今回応募したウォーレン・ピース(この名前の由来は笑える)は施術に失敗したのか、過去すべての記憶を失ってしまった。まっさらのタブラ・ラサの状態でいきなり兵士にな…

トム・リーミー「サンディエゴ・ライトフット・スー」(サンリオSF文庫)

トム・リーミーは1935年テキサス州生まれ。長じてファンジンを作っていたが、作家にはならず映画界で仕事をしていた。40代になって作家に転業。しかし1977年に心臓麻痺で死亡。実質的な活動期間は3年で、長編「沈黙の声」とこの短編集がほぼすべての作品。…

アンナ・カヴァン「氷」(サンリオSF文庫)

奇妙な小説だ。世界が突然、氷で覆われることになり、行政・国家機能が停止する。北の国から徐々に氷河に襲われるようになり、次々と氷の下に埋もれてしまう。人は南に逃げていくが、氷の速度が上回る。この環境激変の理由は一切説明がないし、それに対抗し…

スタニスワフ・レム「天の声」(サンリオSF文庫)

小熊座に観測機を向けていたらニュートリノの信号を受信した。でたらめなノイズだと放置していたら、それは規則性をもっていることがわかった。およそ416時間ごとに繰り返され、二進法で表示されているらしい。人類初めての知的生命体とのコンタクト! いろめ…

スタニスワフ・レム「枯草熱」(サンリオSF文庫)

火星飛行士だった「私」は探偵に転職し、ある「事件」の調査を依頼される。50歳過ぎの中年男性が泳ぎに出て溺死したり、狂って窓から飛び降りたり、高速道路を歩いて轢き殺されたり、拳銃を口にくわえて自殺したり。その数12人。共通点はというと、50歳くら…

モルデジャイ・ロシュワルト「レベル・セブン」(サンリオSF文庫)

1959年作。 主人公の軍人「ぼく」に突然、召喚命令が下る。命令受領と同時に、地下施設に行けというのだ。身の回りのものはもちだせず、別れの挨拶もできない。関係者には失踪扱いされたということになっている。すなわち、彼は全面核戦争に対処する最終対応…

ピーター・ディキンスン「緑色遺伝子」(サンリオSF文庫)

時代はわからないがたぶん1973年ごろ(小説の初出時の年)。100年ほど前から遺伝子の突然変化が形質化したのか、肌の色が緑色の子供が生まれるようになった(肌の色が白・黒・赤・黄のいずれでもないことに注意)。アングロサクソン系の人たち(もちろんイン…

リリアン・ヘルマン「眠れない時代」(サンリオSF文庫)

「未完の女」は戦争終了までのことがおもに書かれている。そして1976年に出版されたこちらの「眠れない時代」はまさに非米活動委員会の証言の模様が描かれる。 非常に単純化して、この時代とヘルマンのことを書いてみると、 ・非米活動委員会は1937年設立。…