ドストエフスキー2
19世紀ロシアの革命運動の歴史を簡単にまとめる。前回は共産主義の立場から読んだ。荒畑寒村「ロシア革命運動の曙」(岩波新書) 今回は、ロシアの革命運動をドストエフスキーの目から見るとどうなるかという視点で見る。ドスト氏の小説の解説には、小説の…
米川正夫訳ドストエーフスキイ全集から後期短編や評論、講演などを抜粋したページを作った。これを再読する。 odd-hatch.hatenablog.jp エドガー・ポーの三つの短編 1861.01 ・・・ ドスト氏はエドガー・A・ポーの特長をこう捉える。「彼はほとんど常にもっ…
宣告 1876.10 ・・・ 「退屈のために自殺したある男、もちろん、唯物論者のある考察」なので、「罪と罰」のラスコーリニコフとスヴィドリガイロフ(とマルメラードフ)の自殺と対比するために、しっかり読もうと思う。 本文全文 odd-hatch.hatenablog.jp と…
おとなしい女 1876.11 ・・・ 「作家の日記」1876年11月号に掲載された短編を読む。本文全文。 odd-hatch.hatenablog.jp odd-hatch.hatenablog.jp サマリーは下記を参照。2019/12/10 フョードル・ドストエフスキー「作家の日記 上」(河出書房)-3(1876年下…
「作家の日記」で発表された短編他。 おかしな人間の夢 1877.4 ・・・ ドスト氏は小説でユートピアを語ることがなかった(はず)なので、この他の短編はとても珍重。でもそこはドスト氏、一筋縄ではいかない。自殺を決意した男が見る夢という設定なので、そ…
ああ、やられてしまった。そりゃ俺も「カラマーゾフの兄弟」の続編をこんな感じになるのかなと妄想したりしたものだが、もっとすごいのがここにあった。脱帽。 1874年(というのは著者が推定した事件の年代)にロシア帝国を震撼させた「カラマーゾフ家の父殺…
1880年6月8日にドストエフスキーはロシヤ文学愛好者協会でプーシキン論を講演した。この協会にはロシア派と西洋派がいて険悪であり、前者と目されていたドストエフスキーは講演を気にしていた。幸い、いずれからも賞賛を浴びることになった。なので、この年…
ドスト氏は社会変革を強く望んでいた。それは若いころからあり、ペトラシェフスキー事件で流刑にあっても失せることはなかった。しかし監獄体験で、西洋由来の自由主義・民主主義・社会主義ではロシア社会を変革できないと確信することになり、別のやり方に…
2024/10/03 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 1」(光文社古典新訳文庫)第1部第1・2編 女好き・神がかり・金儲けの一家が初めて揃う 1880年の続き 再読して驚愕するのは、後の怒涛の展開ですっかり忘れてしまった第1部にとても重要な情…
2024/10/02 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 1」(光文社古典新訳文庫)第1部第3編「女好きな男ども」 のちの殺人事件の推理の手がかりが書かれている。 1880年の続き 修道僧ラキーチンは、カラマーゾフ家には女好き、神がかり、金儲けの…
2024/10/01 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 2」(光文社古典新訳文庫)第2部第4編「錯乱」 錯乱しているのはカラマーゾフの兄弟だけではない。関係者も錯乱している。 1880年の続き さて、この小説で最も重たいところにきた。解説や評論…
2024/09/30 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 2」(光文社古典新訳文庫)第2部第5編「プロとコントラ」 イワンの長広舌。肯定しているのは誰で、否定しているのは誰? 1880年の続き イワンが作った物語詩「大審問官」を検討。編のタイトル…
2024/09/27 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 2」(光文社古典新訳文庫)第2部第5編「プロとコントラ」から「大審問官」 全体主義運動が演出する「奇跡・神秘・権威」が大衆を支配する 1880年の続き 第6編「ロシアの修道僧」 ・・・ 死に…
2024/09/26 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 2」(光文社古典新訳文庫)第2部第6編「ロシアの修道僧」 正義を実行しようとするゾシマは町を追い出される。 1880年の続き 修道僧ラキーチンは、カラマーゾフ家には女好き、神がかり、金儲け…
2024/09/24 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 3」(光文社古典新訳文庫)第3部第7編「アリョーシャ」 一本の葱が差し出され受け取ったアリョーシャは「生涯変わらない確固とした戦士」に生まれ変わる 1880年に続く これまでほとんど登場し…
2024/09/23 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 3」(光文社古典新訳文庫)第3部第8編「ミーチャ」 何もかも失ったと思い詰めたドミートリーはモークロエの大宴会で愛を見出す 1880年の続き 前の編では、ドミートリー(ミーチャ)が大慌てに…
2024/09/20 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 3」(光文社古典新訳文庫)第3部第9編「予審」 好色で金に執着していたドミートリーは逮捕されて神を愛している自分を発見し苦しみを引き受けることを決意する 1880年の続き 「カラマーゾフの…
2024/09/19 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 4」(光文社古典新訳文庫)第4部第10編「少年たち」 13歳にして「社会主義者」をなのる若造登場。スタヴローギンによく似た少年は続編の主人公? 1880年の続き 次の編では次兄イワンに焦点が…
2024/09/17 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 4」(光文社古典新訳文庫)第4部第11編「兄イワン」 思春期のリーザは気まぐれで、他人をいじめ、他人にいじめられることを望む 1880年の続き モスクワから帰ってきたイワンは、兄弟たちにあ…
2024/09/16 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 4」(光文社古典新訳文庫)第4部第11編「兄イワン」(承前) 「お前のやりたいことを代わりに俺たちがやったのだ」という大審問官の論理でイワンはスメルジャコフに追い詰められる 1880年の続…
2024/09/13 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 4」(光文社古典新訳文庫)第4部第11編「兄イワン」(承前) イワンの前に現れた紳士は悪魔でありスメルジャコフでありイワン自身である。この章は「大審問官」のパロディ。 1880年の続き フ…
2024/09/12 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 4」(光文社古典新訳文庫)第4部第11編「兄イワン」(承前) ドミートリーは世界と神を愛するようになり無実の人殺しの罪を引き受けることを決意する 1880年の続き 2000年ころに新潮文庫がキ…
2024/09/10 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 4」(光文社古典新訳文庫)第4部第12編「誤審」 ミーチャへの告発と弁護が交錯する法廷シーン。探偵小説マニアにはたまらない。 1880年の続き 第11編「誤審」(承前) ・・・ 前の章まででキ…
2024/09/09 フョードル・ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 4」(光文社古典新訳文庫)第4部第12編「誤審」(承前) 否定する人=ヨーロッパは破滅し、肯定する人=ロシアは苦痛を受け入れる。 1880年の続き 裁判が終わってから5日目。町の人々の関心…
約20年ぶりの再読。前回の初読ではあれほど感動したのが、今回は困惑で終わってしまった。発見するところも少なく、小説に負けてしまった。そりゃ、登場するキャラの会話を楽しんだし、とんちんかんなユーモアも堪能したし、大審問官のような議論に頭をひね…
書簡を除くドスト氏の文章を全部読み、感想を書いた。自分の読みはどれくらいのものだったのか。ドスト氏自身の文章を読んでいるときには一切手を触れてこなかった他人の評論を、答え合わせみたいな気持ちで読んでみる。 ドストエフスキー翻訳家による解説書…
2024/09/03 原卓也「ドストエフスキー」(講談社現代新書)-1 「ペテルブルク」「革命」「シベリア」「ロシア正教」がキーワード。入門用参考書として最適。 1981年の続き 前半分はドスト氏の前半生と外的な影響。後半はドスト氏の後半生と内的なテーマ。 恋…
すでにみたように埴谷雄高はドストエフスキーに震撼された作家。2021/06/24 埴谷雄高「文学論集」(講談社)-1 1973年 1965年にNHKラジオで「人と思想」を放送したので、その講演に加筆した。参照したのは、米川正夫の「研究(全集補巻)」。2019/11/26 米川…
2024/08/30 埴谷雄高「ドストエフスキイ」(NHKブックス)-1 いまだに周期的に読まれる「異常な時代における異常な作家」。 1965年の続き 「罪と罰」で感じたアレレは以後の大長編でも続くことになる。 「白痴」 ・・・ 主要キャラが登場するなり、事件が立…
著者は精神科医で小説家。若いときからドストエフスキーを読んできたが、死刑囚との会話を重ね犯罪者の心理を研究したことと、病跡学の知見を得たことで、ドストエフスキーを解読する手がかりを得た。そこで、1973年に本書にまとめた。 他者と自分の発見 ・…