哲学思想
絵葉書、雑誌の表紙、ポスター、広告など、およそ作家性とは無縁のグラフィックがある。その作者の無名性により意味合いはないとされるが、たくさん収集したとき、おのずと権力の意思とか大衆の欲望が見えてくる。まあ、そんなことをとくに1930-40年代の上記…
サブタイトルが「いうことをきかせる原理・きく原理」となっていて、もしかしたらこちらのほうが主題をよくあらわしている。「権威と権力」というタイトルであっても、予想するような権威と権力の定義を明らかにすることはしていない。むしろ、われわれはい…
この絶滅収容所の記録を前にすると、おののき、恐怖し、震撼し、その記述が際限なく続くことに絶句し、沈黙するしかないところにいってしまう。これほどの惨劇をよくも人間が・・・とか、これほどの虐待をよくも人間が・・・とか、これほどの勇気をよくも人…
1984年に村上龍と坂本龍一がゲストを読んで対談した記録。ゲストで呼ばれたのは、吉本隆明、河合雅雄、浅田彰、柄谷行人、蓮実重彦、山口昌男。 この時代、浅田彰の「構造と力」が売れて、ニューアカデミズムという名前で若手の哲学者・評論家の本が大量に流…
山口昌男の文章を読むと、元気が湧いてくる。大量の引用、大量の書肆、たくさんの人名、たくさんの作品、幾多の地名。自分の知らないことはたくさんある、それを知ることは楽しい、それがつながることは楽しい。こんな気分になって、知的エネルギーがわいて…
1973年初出で、雑誌「歴史」に一挙掲載されたとか。たぶん著者の基本的な考えがまとめられている。「中心と周縁」理論は以下の引用で概要を理解できるので、とても長くなるが引用しておく。自分の備忘をかねて。 「政治権力の究極的なよりどころは生賛を神に…
1970年代前半の論文が収録。哲学・思想系の「オカタイ」雑誌に掲載されたものだと思うけど、高校の世界史と倫理社会(今はなんて学科名だい?)の知識を持っていればだいたい理解できる。面白いのは、いくつかのキーワードを元にそこにリンクするほかの本・著…
ずっと自分は他人の性格を読んだり、行動パターンを見出せない(というバイアスを持っているのだろうなあ)。なので、クラスメートや会社の同僚を紹介するのがすごく苦手。自分の行動にも臆病なところと激情的なところがあって、状況に応じてどの感情が先に…
2013/04/09 渡邊芳之 「「モード」性格論」(紀伊国屋書店)-1の続き この章は「血液型性格診断」の問題を説明。重要なことなので、詳細にまとめる。 第3章 血液型神話解体 ・・・ この「学説」の提唱者は日本人。1930年代の古川竹二という東京師範学校の教…
昭和10年に山本有三らといっしょに編集した「日本小国民文庫」の一冊。のちに(1960年代)、ポプラ社で復刻されている。たぶん小学生のときに読んだとおもうのだが、記憶は定かではない。しっかりと読んだのは岩波文庫に収録された1982年のとき。今回は約30…
「旧約聖書を生んだユダヤの歴史から説き起こし、真のイエス像と使徒たちの布教活動を考察。その後の迫害や教義の確立、正統と異端との論争、教会の堕落と改革運動など、古代から中世を経て近代、現代に至るキリスト教の歴史を、各時代の思想、政治・社会情…
1976年に中公新書ででたものを1996年に文庫化したもの。1930年前後に生まれた二人の対談で、19世紀から現在までの思想を概括したもの。哲学書を読み始めたものにとっては、それまでの読書の結果を位置づけていくいい指導書になるのではないかしら。デカル…
最初に読んだのは、落合太郎訳の岩波文庫だった(本文より訳注のページ数が多いというのに驚愕。これが学問なのかとその高さに呆然とした)。あとで小場瀬卓三訳角川文庫も読んだ。今調べると、 谷川多佳子訳岩波文庫、 山田弘明訳ちくま学芸文庫、野田又夫…
「哲学原理」は「方法序説」第4部以降にデカルトがこれは確実な知識あるいは原理だと「証明」したものを箇条書きにまとめたもの(原本からそうであったかは不明。もう少しあとに編集された本によるのではないかな)とされる。前半第1部には「我思う故に我あ…
老舗の雑誌みすずに掲載された対談集。1959年から1970年まで。誰もかれも亡くなってしまったなあ、という感慨にふけり、2011年7月現在吉田秀和が存命という驚き。書籍をめぐる対談は同社から出版された本の販促も兼ねていたのだろう。 芸術と政治――クルト・…
作者の経歴とこの本の出版年を知ることは重要。プラハ生まれでウィーン大学で教授を務める。ナチス政権誕生と同時にスイスに亡命。この本は1932年に出版。 自分が読むのに困難を覚えたのは、どうやらカント哲学を基礎としているらしいこと(当為とか自由律と…
初出は1887年。もはや原文を読むことはかなわない。そこで桑原武夫による現代語訳でよむ(とはいえ「メートルがあがる」なんていう昭和20年代の流行り言葉がでてくるので、「現代」と呼ぶにはちょっと。「メートルがあがる」の意味がわかる人はすくなくなった…
ガーンディが本格的にインド解放、独立の運動を開始する直前、帰国途中の船中で書いた本。1909年の作で、当時40歳。 国民会議とその指導者たち ・・・ 国民会議は1885年創設の独立および自治をめざす組織と思える。1909年には、ある種の若者はこの穏健な組織…
これも20年近く前に読もうとしたもの。中途まで読んで挫折した論文はすっとばして、次のヴィトゲンシュタインに入ったらすらすらと読めた。 仮に同じテーマで論文集を編もうという企画が10年をさかのぼって1970年代にあったとしたら、経験論と合理論から…
大学卒業後、どこからの関心か忘れたけれど哲学を知りたくなった。たぶん別冊宝島の哲学特集あたりに端緒があり、それ以前に科学論や科学史を読んでいたからその延長になるのだろう。そういうわけで、当時(1985年からだったかな)刊行を始めた「新岩波講座哲…
1950年代にフルブライト留学生として欧米を訪問した経験を持つ著者が、同時代に書いた批評論文集。戦中は東大医学部生でありつつ、中村真一郎・福永武彦らの仏文学生と文学をたしなみ、堀田善衛・田村隆一などとも親交があった(堀田善衛「若き日の詩人たちの…
この本の基底にあるのは、1930年代にこの国の哲学徒としてファシズムに対する抵抗(行動でも思想でも)を行うことができなかったこと、「アウシュビッツ」「ヒロシマ」という大規模なジェノサイドが行われたことに対する批判を有効に行えていないこと、これ…
「ヒューマニズムは,すでに光を失った過去の思想にすぎないのだろうか.破綻したのは個人主義的ヒューマニズムにすぎず,人間疎外が極点に達している現代こそ,人間性回復の転機をふくむものであると著者は主張する.ヒューマニズム思想を歴史的にたどりつ…
サルトルが「実存主義はヒューマニズムである」というと、ハイデガーはそうではないというのであったが(どちらも読んでいない)、ではヒューマニズムは何かというと判然としない。為政者も革命家も自分が「ヒューマニズム」であることは否定しないが、とき…
「戦時期日本の精神史」につづいて1945-1980年の精神史をカナダの大学生に語る。この時代になると、転向論で分析するのは難しい。代わりに注目するのが大衆文化。マンガに寄席にTV番組に歌謡曲に・・・という具合。だいたい同じ時代に吉本隆明「マス・イメー…
もしもこの国の歴史を全く知らない人に現代史を説明することになったら。その人にはこの国に住む人の常識とされることがまったく伝わらない。「国体」「転向」「226事件」「満州事変」「隣組」「天皇機関説」がそのままでは伝わらない。「ちゃぶ台」「おひつ…
2012/06/30 鶴見俊輔「語りつぐ戦後史 I」(思想の科学社) 2012/07/02 鶴見俊輔「語りつぐ戦後史 II」(思想の科学社) の続き。 1巻、2巻が戦争中にすでに職業についていた人たち、すなわち自分はいかにあるか(食うか)がはっきりしている人たちだった。3…
2012/06/30 鶴見俊輔「語りつぐ戦後史 I」(思想の科学社) の続き。 都留重人 ・・・ アメリカは戦争の前から日本を対共産主義の橋頭堡とすることを考えていて、占領政策もその方針で行われた。このとき、日本の官僚制度をそのまま利用した。昭和22年ころか…
雑誌「思想の科学」が創刊されて20年くらいたつ1967年に、多田道太郎の企画で雑誌に関係の深い人との対談をすることになった。聞き手は鶴見俊輔で、3年ほどで30人以上の対談が集まった。この第1巻では、「思想の科学」創刊に関わったひとたちを集めた。あと民科…
哲学素人の自分が、「論理実証主義」が云々、「言語ゲーム」が云々、「日常言語」が云々をいっても間違いだらけになるので、その種のことは書かない。1970年代の高校倫理の教科書や参考書にはウィトゲンシュタインは載っていなかった。でも1980年代には大学…