日本文学
たしか1974年にNHK銀河テレビ小説でこれを原作にしたドラマをやっていた(夜9時40分から二十分のテレビドラマで、2週間10回の構成だったと思う*1。五輪真弓の主題歌がかっこいいものだった。「落日のテーマ」というんだそうだ。サビのところは覚えている…
老人の書く文章の中には、衒いも気取りもなく、技巧もまったく入っていないようなのに、その言葉の選び方と話の進め方がうまくて、とても真似ができないと思わせるようなものがある。たとえば、石川淳「狂風記」や金子光晴「どくろ杯」「ねむれ巴里」などが…
不良という言葉には、ひどく人を魅了するところがあるのだが、そこらでオートバイをふかせているような矮小な連中は置いておくとして、金子光晴のスケールになると、もう太刀打ちできないと思い知らされる。なにしろ、旧制中学の頃から素行不良で退学ばかり…
最初に読んだのは高校1年、それとも2年? 3年生になって理系クラスにいたが、なぜか文学史には強いということになって(国語の授業で昭和10年代の文学史を略述せよという質問をあてられ、直前によんだ「風俗小説論」を使って、プロレタリア文学と新感覚派、…
1914年から17年あたりにかけての旧制中学生の記録。旧制中学の生活記録が克明に記された読み物は北杜夫の「どくとるマンボウ青春記」や畑正憲の「ムツゴロウの青春記」が有名。それらは戦後の新制高校に残った雰囲気を記したものなので、こちらのほうが希少…
この著者の「日本の近代小説」「日本の現代小説」(岩波新書)は、高校生の時のブックリストとして重宝した。昭和35年で記述が切れていたのが残念だったが、これらに載っている小説を文庫で追いかけたのだった。ではどうしてこの本を知ったかというと、「現…
小樽市と思われる漁港街の製缶工場における労働運動を描いた文学。書かれたのが1930年なので、前年の株暴落から始まる世界恐慌のあおりを受けた状況と思われる。この時期、おそらく伊藤整はすでに上京していたはずだ(小樽市出身で、伊藤は小樽商業高校で小…
作者は坪田繁治と同郷、同級生であったというのが最初の驚き。『渦巻ける烏の群』『橇』『二銭銅貨』『豚群』の4編を収録。 農村での地主、官憲の弾圧、それに対する小作農民の状況を描いた2編と、シベリア出兵の下級兵士が上官の非道によって憤死する様を描…
前日のエントリーで「1920-40年までの経済史を知っておくことは重要」と書いたけど、それにぴったりの記事があったので、ここでアップ。 昭和5年から10年の間の労働争議。多くの場合は、工場労働者の悲惨な現実と、資本家および為政者の腐敗弾劾として読むこ…
谷崎潤一郎の初期短編のうち、犯罪に関係しているものを集めた。谷崎潤一郎はこれしか読んでいない、恥ずかしながら。「春琴抄」「鍵」など気になる小説はあるのだがねえ。もう読む時期を失してしまったのだろう。柳湯の事件1917 ・・・ 弁護士事務所に駆け込…
「ユートピア」関連書籍。以下を書いたのは「太陽の都」「ダフニスとクロエ―」「潮騒」を書くもっと前のことです。 20代のころ、自前のユートピア文学史を構想したことがあった。そしてモア「ユートピア」、カンパネルラ「太陽の都」、バトラー「エレホン」…
昨日取り上げた「ダフニスとクロエー」をこの国に移植したものはなんだろうと考えて、この作品を取り上げることにする。もちろん、初出当時からこのことは指摘されていたのであって、とくに目新しい意見ではない。 いくつか釈明をしておくと、以下を書いたの…