odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

都筑道夫

都筑道夫「十七人目の死神」(角川文庫) 1960年代に書いて単行本に収録されていなかった怪談小説。本文よりも、作家によるあとがきのほうがおもしろかった。

主に1960年代に書いて単行本に収録されていなかった怪談小説を自分でまとめて(古いものに手を入れて再発表したものが多いので1970年代の発表日付がついているが)、一作ごとにあとがきを追加したもの。1972年にでた。お気に入りの短編は、1975年の 都筑道夫…

都筑道夫「夢幻地獄四十八景」(講談社文庫) 伊呂波48文字で始まるショートショート集。SF、ミステリー、時代劇、活劇、現代風俗もの、などジャンルの広がりが大きい。

1972年出版のショートショート集。文庫になったのは1980年。 ショートショートだけを集めたものはいっきに読み通すのがなかなか難しい。話題や主題が奔放に飛んでいくので、数編前のがどんな話だったかを思い出せなくなる。そのうえ一冊全体の印象を持てない…

都筑道夫「吸血鬼飼育法」(角川文庫)

ファースト・エイド・エージェンシー主宰の片岡直次郎。よろずもめごと解決業とでもいうか、どんな依頼であっても、「ノー・ジョブ・トゥースモール、ノー・プロプレム・トゥー・ビッグ」と涼しい顔をする。きちんと報酬をいただければ、何でも(自らコロシ…

都筑道夫「危険冒険大犯罪」(角川文庫)

単行本の初出は1974年。収録された中短編は記述からすると、もう少し前に書かれたと思う。 俺は切り札 ・・・ ファースト・エイド・エージェンシー主宰の片岡直次郎。今回の依頼は、フランスの大画家ゲクランの描いた「拘束衣を来た狂女」の本物を入手しろと…

都筑道夫「七十五羽の烏」(角川文庫)

「タロー・モノノベ、サイキック・ディテクティヴ」に最初に依頼してきたのは、無為の日々をすごすこと一月半たってのこと。茨城の叔父が「滝夜叉姫」の怨霊に殺されるかも、心配なので調査してという若い女によるもの。茨城は平将門の旗揚げの土地で、古い…

都筑道夫「七十五羽の烏」(光文社文庫)

デュパンの昔から、探偵というとスノッブで人嫌いで高踏派で韜晦趣味があるという相場だった。そういう現実には存在しない「名探偵」がたくさんいたので、反動としてリアルな私立探偵や警察官が主人公になることがあった。第3の道を開いたのが、レックス・…

都筑道夫「最長不倒距離」(角川文庫)

「七十五羽の烏」事件を解決したので、ものぐさ太郎の父が勝手に新たな依頼人と契約してしまった。今度は黒馬温泉の老舗旅館。むかし心中事件があって幽霊が出ると評判だったのに、最近ちっともでない。どうにかもう一度出るようにならないか、という突拍子…

都筑道夫「朱漆の壁に血がしたたる」(角川文庫)

推理作家の紬志津夫(短編「悪役俳優」1989.12@袋小路にも同名の作家が登場)が、読者の応募した不可能状況を解決するチャレンジに取組ことになった。謎解きはできるが、そうする合理的な理由を思いつかないと悩む。再婚した若い妻が、昔似たような事件があ…

都筑道夫「魔女保険」「幽霊売ります」(角川文庫)

角川文庫のショートショート集成。1973年に「悪意辞典 ショートショート集成2」というタイトルで単行本になった。「幽霊売ります」と「魔女保険」の分冊になった文庫版の初出は1980年。ほかに「悪夢図鑑」「悪業年鑑」というタイトルでショートショート集成…

都筑道夫「あなたも人が殺せる」「感傷的対話」(角川文庫)

角川文庫のショートショート集成。1973年に「悪夢図鑑 ショートショート集成1」というタイトルで単行本になった。「あなたも人が殺せる」「感傷的対話」との分冊になった文庫版の初出は1979年。ほかに「悪意辞典」「悪業年鑑」というタイトルでショートショ…

都筑道夫「スリラー料理」「ダジャレー男爵の悲しみ」(角川文庫)

角川文庫のショートショート集成。1973年に「悪業年鑑 ショートショート集成3」というタイトルで単行本になった。「ダジャレー男爵の悲しみ」「スリラー料理」との分冊になった文庫版の初出は1980年。ほかに「悪夢図鑑」「悪意辞典」というタイトルでショー…

都筑道夫「にぎやかな悪霊たち」(講談社文庫) オカルト評論家出雲耕平に持ち込まれるいろいろな心霊現象の相談をつるかめコンビが右往左往しながら調べる連作。

オカルト評論家出雲耕平に持ち込まれるいろいろな心霊現象の相談をおれ(鶴来六輔)が右往左往しながら調べる連作。相棒のカメラマンは亀田で、ふたりあわせて「つるかめ」コンビと言われている。ビルには喫茶店ブルブルがあり、アルバイトの由香里ともいろ…

都筑道夫「キリオン・スレイの生活と推理」(角川文庫)

ベトナム戦争のあおりで、ヒッピーなどガイコクジンが多数来ていたこの国(当時は固定相場でドル高円安で、特に米人はきやすい)。キリオン・スレイも何となく日本にきて、アメリカで知り合った青山富雄、通称トニイの家に居候を決め込んでいる。このなまけ…

都筑道夫「キリオン・スレイの復活と死」(角川文庫)

1974年のキリオン・スレイ第2作。キリオンの日本滞在も長くなって、だいぶ達者に日本語を操るようになったが、世間話や推理比べになると、とんちんかんな言葉を持ち出してくる。 ロープウェイの霊枢車 ・・・ 女性モデル3人とカメラマン、編集者が富雄とキ…

都筑道夫「キリオン・スレイの再訪と直感」(角川文庫)

1978年のキリオン・スレイ第3作。タイトルを「〜〜が死につながる」と統一するのは、スタイリッシュな作者の趣味の発露だろう。「全戸冷暖房バス死体つき」、「妄想名探偵」、泡姫シルビアシリーズが同じ趣向でタイトルをまとめている。 如雨露と綿菓子が死…

都筑道夫「キリオン・スレイの敗北と逆襲」(角川文庫)

あれ(前作「キリオン・スレイの再訪と直感」1978年)から何年たったのか、キリオン・スレイはアメリカに戻っている(1983年初出)。オキソーローの青山富雄(トニイ)も翻訳家として独り立ち。今日は、ニューヨークツアーのガイドとして観光客5人を連れて…

都筑道夫「神州魔法陣 上巻」(時代小説文庫)-1

腕の良い掘り細工師の巳之吉、正体不明の浪人の内藤端午、未来予知能力のあるお近らが、30年前に死んだ平賀源内の野望を食い止めようとする。死人を操り、付け火に殺人を繰り返す彼らの目的は得体が知れない。それぞれ異能を持つが、強大な敵組織には歯が…

都筑道夫「神州魔法陣 上巻」(時代小説文庫)-2

2017/07/21 都筑道夫「神州魔法陣 上巻」(時代小説文庫)-1 1978年 京が事件の焦点であり、そこにいるはずの若侍と会うことが必須の事項、しかしながら死の可能性も高まっている。事件を知るのは彼らのみとなると、旅に出ざるを得ない。徒歩の旅では道中さ…

都筑道夫「神州魔法陣 下巻」(時代小説文庫)

2017/07/21 都筑道夫「神州魔法陣 上巻」(時代小説文庫)-1 1978年 2017/07/20 都筑道夫「神州魔法陣 上巻」(時代小説文庫)-2 1978年 源内らの妨害はいよいよ激しくなる。端午らは旅程を進みはしても、敵の意図を挫くには後れを取っているのではないかと…

都筑道夫「フォークロスコープ日本」(集英社文庫) 過去現在未来を一覧する日本民話絵図。じっくり一行一行につきあう読書をしましょう。

フォークロスコープは作者の造語で,、フォークロアとスコープをくっつけ、過去現在未来を一覧する日本民話絵図といったつもりだそうな。短編は別々の雑誌に、時期を変えて収録されたが、初出年は作者の記憶で書いた解説に基づくので不正確(昭和37-8年とあっ…

都筑道夫「ミステリイ指南」(講談社文庫)

本多勝一「日本語の作文技術」(朝日新聞社)や木下是雄「理科系の作文技術」(中公新書)で、文章の書き方や論理構成を勉強したとする。そのあと、小説を書きたいと思ったときに、どうやって小説を書くかを知りたいと思う(いきなり始めると、たいてい途中…

都筑道夫「西洋骨牌探偵術」(光文社文庫) 泥縄でタロウ・カードを覚えた誠実な占い師は足を使って依頼人の悩みを解決する。

鍬形修二は妻に三度も別れ、頼りの兄も亡くなった。タロウ・カードを泥縄で覚えて占い家業をするものの、誠実な占い師は足を使って依頼人の悩みを解決するはめになる。5編しかないが、印象深い探偵の登場。 腎臓プール ・・・ 邸内のプールに飛び込んだ妹(…

都筑道夫「悪魔はあくまで悪魔である」(角川文庫) 1974年から1976年にかけて雑誌「野生時代」に連載された短編を24編収録。

1974年から1976年にかけて雑誌「野生時代」に連載された短編を24編収録。このあと同じタイトルで「都筑道夫恐怖短篇集成〈1〉」ちくま文庫が出版されているが、たぶん収録内容が異なる。ご注意あれ。角川文庫版のほうがよいのは、雑誌に掲載されたときに描か…

都筑道夫「阿蘭陀すてれん」(角川文庫) 1977年初出の怪奇、SFものショートショート集。1985年に新潮文庫で出たときは「25階の窓」。

1977年初出のショートショート集。1985年に新潮文庫で出たときは収録短編を4編減らし、総タイトルも「25階の窓」に改題された(収録作品が25編だったので総タイトルに25がついたとのこと)。このあと同じタイトルで「都筑道夫恐怖短篇集成〈2〉」ちくま文庫…

都筑道夫「雪崩連太郎幻視行」(集英社文庫)

雪崩連太郎は旅行雑誌に主に怪奇譚を発表しているルポライター。1970年代に反知性・反理性のムーブメントがあって、オカルトがずいぶん流行った。映画「エクソシスト」とかユリ・ゲラーとかスプーン曲げ少年など。そういう傾向が旅行雑誌にも反映したので、…

都筑道夫「雪崩連太郎怨霊行」(集英社文庫)

2015/06/08 都筑道夫「雪崩連太郎幻視行」(集英社文庫) すごいどうでもいい話をすると、この本の最初のタイトルは「雪崩連太郎幻視行/怨霊紀行」だった。マンガ家たがみよしひさがこの作家のファンらしく、最初に刊行された短編マンガ集のタイトルは「怨霊…

都筑道夫「黒い招き猫」(角川文庫) 1978年の怪談ショートショート集。怪談は合理的で論理的な思考をする物語。

怪談ショートショート集。1978年角川文庫初出。 黒い招き猫*/目のない賽*/腕時計*/幽霊屋敷*/新世代語辞典/夜のオルフェウス/粘土の人形*/過疎地帯/呪法/静かな夜/小鳥たち*/ひどい熱/狐つき/壁の影*/宙づりの女/心霊現象/百物語/ベランダの眺め/もういや!/…

都筑道夫「翔び去りしものの伝説」(徳間文庫) 転生したら、西洋中世の騎士小説みたいな場所で王子の身代わりになり暗殺されることになった件。ホープ「ゼンダ城の虜」のリメイク。

その世界は、西洋中世の騎士小説みたいな場所。ひとつの王国が周辺地域を収めているが、王位継承者が不在だった。老臣、重臣らは無能。そこで二人の魔術師が暗躍を開始。ひとりの黒魔術師ルンツ博士は地球で事故にあった男をこの世界に呼び寄せ、誘拐してお…

都筑道夫「都筑道夫スリラーハウス」(角川文庫) 1979年初出のショートショート集。ふしぎや恐怖は、本人の深層心理の中にある。自分のなかの怪物をみつけることが、たまらなく恐ろしい。

1979年初出のショートショート集。文庫になったのは1984年。 安定の品質。アイデアも、落ちも、文章も。どの一編でも付け足しがいらないくらいに練られている。名人芸。 物語の主人公の多くは、著者とおなじ50歳前後。暮らしに不満はないが、なんとなく物足…

都筑道夫「銀河盗賊ビリイ・アレグロ」(集英社文庫) 銀河をまたにかけるその名を知らぬ者のいない大盗賊。飛び切りの難題の依頼で盗みを働く。

いつともしれない遥か未来。それともむかしむかしか。主人公は、ビリィ・アレグロ・ラトロデクトス・ナルセ。銀河をまたにかけるその名を知らぬ者のいない大盗賊。一人で行動するのを常として、あいぼうは高速宇宙船「ブラック・ウィドウ」。そこにつまれた…