odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-2

2021/03/19 木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-1 2014年の続き 1917年は重要な転機。 ひとつはロシア革命。この年の2月革命でロマノフ朝が倒される。きっかけは都市民による食料要求デモだった。ロシアは食糧輸出国で国内の備蓄は潤沢だったが、軍隊…

今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1

1913年から1925年にかけて。大正時代を扱う。タイトルは「大正デモクラシー」であるが、そこにフォーカスしてこの時代を見るのは危険。21世紀の10年代の言葉でいえば、日本が「ネトウヨ化」していく過程となる。すなわち、政・官・財がそろってネトウヨ化し…

今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-2

2021/03/16 今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1 の続き 大正時代には、軍や官僚が植民地や軍隊駐屯地でさまざまな策謀をめぐらした。その名をみると、東京軍事裁判で起訴された軍人や政治家(吉田茂もいた)の名前が頻出する。彼らは…

吉村昭「関東大震災」(文春文庫)

関東大震災の被害は、小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま学芸文庫)で。odd-hatch.hatenablog.jp と言いながら、テキストでないと伝わらない情報もある。本書の指摘を抜き書きで。 ・震災による家屋の倒壊や火災(出火の原因は薬品由来という。学校、…

小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま学芸文庫)

初出2003年は関東大震災から80年目(阪神大震災から8年目)。その節目の年に編集された。震災記念館(だったか?)の設立準備中に、震災直後に撮影されたネガフィルムと焼き付けが大量に見つかった。それまでは引用で見ていた写真のオリジナルが発見されたの…

江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-1

松田道雄「世界の歴史22 ロシアの革命」(河出文庫)の記述がほぼロシアに限定されていたので、こちらので20世紀初頭(1914-1929年)までの状況を確認する。 重要なできごとは第一次大戦(WW1)。三国協商と三国同盟の対決とされるが、むしろ19世紀の帝国主…

江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-2

2021/03/09 江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-1 の続き 第一次大戦(WW1)はおもにヨーロッパと大西洋で戦われたので、東アジアは政治的・経済的な空白ができた。そこに入り込んだのが日本。日露戦争のあと、帝政ロシアと協力関係に…

林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-1

原著は1966年(ということは1913年生まれの林健太郎が53歳の時の著作)。1976年に講談社学術文庫に収録。もとは文芸春秋の「大世界史」第22巻。この後に1930年代を書いた本があるので、記述は1933年まで。多くの戦間期の本は1933年のナチス政権以後にフォー…

林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-2

2021/03/05 林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-1 1976年の続き WW1の総力戦は、動員された労働者、下層階級の力を大きくする。専制国家が打倒されたこともあり、貴族政は後退(貴族が資産を失ったのも大きい)。戦後はインフレと帰還兵士の失業…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1

1926年から1936年までの昭和ゼロ年代。大正デモクラシーは「内には民本主義、外には帝国主義」であったが、この10年間で内はファシズムになった。 驚くべきことは、ファシズム体制が完成するまでに、象徴的な事件もカリスマ的な人物もでてこないこと。メルク…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 の続き 20世紀前半の国内政治がわかりにくいのは、元老だの元老院だのがあり、選挙で選出されていないものが政治的な決定を下すことができ、首相にいたっては天皇の裁可がないと組閣がで…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-3

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 2021/03/01 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2 の続き 経済で重要なのは、関東大震災の復興事業と金解禁、世界不況。前二つは、別に読んだ本のエントリーに詳述した…

エーリヒ・マティアス「なぜヒトラーを阻止できなかったか」(岩波現代選書)

WW2敗戦後、まず哲学者が表題の反省をした。ヤスパースやマイネッケ(「ドイツの悲劇」中公文庫)、マックス・ピカート(「沈黙の世界」みすず書房)を読んだ記憶がある。ドイツ精神を問題にした抽象的な議論のあとに、社会学や政治学から反省の書が出た。こ…

ドロレス・イバルリ「奴らを通すな―スペイン市民戦争の背景」(同時代社)

2015年の夏、国会議事堂前の安保法制反対街宣で「ノー・パサラン」のコールが起きた。「ノー・パサラン」は「奴らを通すな!」(¡No pasarán!)という意味で、ファシズムに抗する人たちの世界共通のスローガン。20世紀の初めから多くの人が発してきたが、有名…

林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-1

226事件終了後から敗戦まで。1936年から1945年までの10年間。 東アジアに日本主導のブロック経済圏をつくり、先進国の仲間入りをすること。これくらいが日本の国家目標であって、ブロック経済圏構想はおもに陸軍によって実施運営されることになった。軍事に…

林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-2

2021/02/22 林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-1 の続き 治安維持法、国家総動員法によって日本を運営する<システム>@カレル・ヴァン・ウォルフレンの外にいる人たちは、政治決定に参加することができなくなった。選挙があっても、政党が解党し…

太平洋戦争研究会「日中戦争がよくわかる本」(PHP文庫)

ここでいう日中戦争は1937年の日華事変から1945年の敗戦まで。 とはいえ、日本軍が中国大陸に軍隊を常駐するようになったのは1900年の義和団事件のとき。以来30年以上にわたって、常駐した軍隊が中国軍と交戦したり、市民に暴虐をふるうことがあったので、19…

秦郁彦「南京事件」(中公新書)

自分が読んだのは1986年初版のもの。2007年に増補版がでて、「南京事件論争史」の章が追加された。 「南京事件」は史上三度あるが、ここでは1937年末から翌年初めにかけてのものを扱う。「南京大虐殺」「南京アトローシティ」などの呼称もあるが、ここでは「…

笠原十九司「南京事件」(岩波新書)

南京事件の経緯は秦郁彦「南京事件」(中公新書)の感想に書いたので、それ以外のところを補足する。秦の本だと、アトロシティに注目が集まって、なぜ南京を攻略するのかが見えてこない。 単純化すると、前年の226事件で陸軍内部の抗争が終結。日独防共協定…

笠原十九司「増補 南京事件論争史」(平凡社ライブラリ)

1937年12月の南京事件(南京大虐殺、南京アトロシティ)は、事件当初から軍の知るところになっていたし、大本営にも伝えられ中止のために参謀などが派遣されたが止められず、現地発の情報は西洋に伝えられていた。現地軍はこのときの資料や記録を敗戦直後に…

吉田裕「日本軍兵士」(中公新書)

大岡昇平「俘虜記」(新潮文庫)や「野火」、野間宏「真空地帯」(新潮文庫)を読むと、日本軍は腐敗が激しい、隊内暴力が蔓延している、兵隊を粗末に扱うなど、日本軍のだめなところがたくさん目に付く。これまではおそらく軍全体の問題ではあるのだろうが…

常石敬一「七三一部隊」(講談社現代新書)

2010年代にめだつ歴史捏造のひとつのねたが「731部隊は防疫給水専門だった(だから人体実験はしていないし、捕虜の虐待もしていない)」というものがある。南京事件や従軍「慰安婦(性奴隷)」否定ほどの勢力はないものの、SNSではしつこく書き込みが行われ…

栗原俊雄「特攻 戦争と日本人」(中公新書)

栗原俊雄「戦艦大和」(岩波新書)では、戦艦による水上特攻をテーマにしたが、こちらは15年戦争(1931-1945)の生還を期さない戦闘を取り上げる。 さまざまな事情で生還を期さない戦いを選択することは、戦場においてみられる。飛行機や戦車や船舶の運行に…

栗原俊雄「戦艦大和」(岩波新書)

戦艦大和のことは昭和40年代半ばに読んだ少年向け戦争ノンフィクションで知った。悲惨な結末に戦慄したが、その後あまりに痛ましくてきちんと調べ直したことがない。「太平洋戦争」の通史を読むと必ず言及されるし、沈没した船体を引き揚げるプロジェクト…

大岡昇平「野火」(角川文庫)

何度も「野火」を読んでいるけど、どうにももどかしいというか、はぐらかされているというか、こちらがテーマをつかみきれていないというか、上手く読めない。とりわけ後半の「人肉食い」を巡る禁忌と乗り越えの議論がわからない。 補充兵として召集された「…

村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-1

1929年から1945年。1920年代の緊張緩和は1929年アメリカ発の成果不況によって破られる。これによると、アメリカ経済は数年前から不調になっていたが、株価だけが高騰。株価の下落によってアメリカの経済が沈滞。アメリカの企業はヨーロッパ、南アメリカ、東…

村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-2

2021/02/02 村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-1 の続き。 日本は1930年代から一種の鎖国をするようになり、権力の情報統制があったので、諸外国の実情はわからないようになっていた。敗戦とスターリンの死によって、ふたつの巨…

雨宮昭一「占領と改革」(岩波新書)

通常、1945年の敗戦で日本は占領された(間接統治だけと思われるが、沖縄諸島他はアメリカのと直接統治、北方四島他はソ連の直接統治)が、「占領政策ですべてが変わった」「日本の政党やリーダーは古くて何も変えようとしなかった」などと説明される。その…

佐藤卓己/孫安石 「東アジアの終戦記念日―敗北と勝利のあいだ」(ちくま新書)

「昭和20年8月15日正午、快晴酷暑のなか、玉音放送が流れ、日本人は一斉に頭を垂れた」というのが終戦や敗戦のイメージ。そこに皇居前の玉砂利で土下座する人々の写真(東京空襲や原爆のきのこ雲なども)を加えて、ビジュアルイメージが完成する。でも、それ…

蝋山政道「日本の歴史26 よみがえる日本」(中公文庫)

1945年の敗戦から1967年(おそらく執筆時)までの約20年間。現在進行中のできごと、存命中の人々を記述するので、これまでの歴史研究者ではなく政治学者が執筆する。戦前の昭和3年に東大法学部の教授になり、川合栄次郎といっしょに昭和14年辞任。その後、翼…