odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

阿刀田高 他「密室殺人事件」(角川文庫) 1980年代の国産密室トリック短編集。

 収録されているのは
阿刀田高「天国に一番近いプール」
折原一「不透明な密室」◆
栗本薫「袋小路の死神」◆
黒崎緑「洋書騒動」
清水義範「モルグ街の殺人」◆
法月綸太郎「緑の扉は危険」◆
羽場博行「虚像の殺意」
連城三城彦「ある東京の扉」
 ちょっと古い本なので、1982-1992年に発表されたものが収録されている。◆は別の本で既読だったもの。でも、ほとんど内容を忘れていた。(ふと、疑問になったのだが、この本を数年前に読んでいたかもしれない。自分の記憶装置である脳からこの記憶が脱落しているのは、密室からの消失事件だ! 苦笑)
 少し前にH.S.サンテッスン「密室殺人傑作選」を読んでいたので、ほとんどで仕掛けは見当がついてしまった。これは(繰り返すが)自分の推理が優れているわけではなくて、たんに経験値が多いから。にもかかわらず、同じ趣向のさまざまな変奏を読みたくなるのは、同じ物語を読むという倦怠と、ナラティブの多彩さを味わいたいという怠惰にあるからですね。大岡昇平のいうとおり、知的な蕩尽であるのでしょう。