odd_hatchの読書ノート

エントリーは2200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。

マイケル・デル「デルの革命」(日経ビジネス文庫)

 あまりビジネス本は読まない。社内の経営会議とか取締役会の経験のほうが身につくことになったから。でもいくつかたまってきたので、しばらく取り上げることにする。


 最初期のコンピューターオタクが、顧客の仕様に合わせたPCを販売することを思いつき、19歳で起業してから18年間で年間2兆円の売り上げをあげる会社を作るまで。ダイレクト・モデルという直販(電話とインターネットで受注する)モデルが大成功をおさめた。
 気のついたポイント。
・通常はダイレクト・モデルという販売スタイルに注意が向けられるが、むしろ工場の製造方法の改革が成功のポイントだったのではないか。ジャスト・イン・タイムの部品調達をさらに追及している。トヨタカンバン方式よりもさらに調達時間を短くした方法。たぶんそれは、TOC(Theory of Constraints;制約理論または制約条件の理論)に書かれたボトルネックからのスケジュール作成と、必要量の事前発注(2日後にAという部品が9725個必要、などというような発注スタイルになっているはず)。これが電話、fax以外の別の方法も使って、かつ全員が共有できるしくみになっている。インターネットのない時代。このあたりは詳しく書かれていない。自分のもっとも注目したところ。
・会社の成長がきわめて速い。それにつれて、組織の拡大と人材の育成が必要になるのだが、それを実行できたこと。成長のスピードと組織の充実はなかなか一致しないのだが、これを可能にしたのはなにか? デル本人の意識と経営を補佐する人たち、さらに周囲の協力者その他かな。モチベーションの維持、官僚的にならない組織、二重の指示系統、こういうデルの組織モデルは興味深いが、これもあまり深く説明されていない。
選択と集中。失敗の研究。顧客のニーズに集中した商品開発(PC、サーバーなどのハードだけではない。ソフトインストールなどのサービスも開発している)。いまや常識であることへの徹底的なこだわり。
 というわけで、素晴らしい話がたくさん書かれているのだが、著者は「ダイレクト・モデル」の説明に集中している。でも、ここに書かなかったことが成功のポイントだと思う。それが書かれていないことで、読者にはもどかしい思いがする。

 日本では「マウス・コンピュータ」などがデルのダイレクト・モデルでPCを販売中。あるいは液晶テレビでも同じような販売方法を行う会社がベンチャーである。IPOできた会社もあるけど、さほどぱっとしないなあ。なぜかねえ。むしろ「ジャパネットたかた」のほうがデルに近いモデルによる日本の成功例なのかも。