odd_hatchの読書ノート

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太田肇「ベンチャー企業の「仕事」」(中公新書)

経済再生のカギを握るベンチャー。そこに働く人々はいったい何を思い、どのように仕事をしているのか。また、会社は彼らの「やる気」をどう引き出そうとしているのか。これまでイメージだけで語られがちだったベンチャーの実態を検証すると、先進的な側面とともに、マネジメントや組織上の問題点が浮き彫りになる。そしてこれは日本の企業すべてが直面する課題でもある。21世紀型の理想的な働き方とは何か、改革への道筋を示す。中央公論新社

 最近の日本の起業には2種類があって、若い年齢での会社になじめなかった人が起こしたものと、ある程度の年齢を経てからの起業。ビジネスモデルの独自性は置いておくとして、多くのベンチャー企業の問題点は、経営者以外の人にとってはハイリスク・ローリターンになってしまうこと。ベンチャーに入る理由のひとつは、経営の練習をすることにあるが、忙しすぎて体験できなかったり、上司の父権が強すぎて部下を萎縮させたり。また、組織の作り方が起業者の経験した会社をモデルにしてしまうので、日本型の会社になってしまう。ベンチャーこそ個人の力を必要とするのに、組織に所属させるものになってしまう。またカリスマのあるような強い個性の持ち主が経営者になると、父権主義的な抑圧的な風土になってしまう。
 こういう組織はある程度の人数を超え、拠点が増え、業務が多岐にわたるようになると、経営者のビジョンやミッションが全体と共有できなくなる。そこで売上が止まるか、部下が大挙して辞職して組織が小さくなるか、膨大なコストをかけて内部改革をすることになる。店頭公開を目標にすると、この種のリスクとコストがかかるので、現経営者と起業を目指すものは注意しておいてください。
 ここで指摘されたほかの問題点。選別と序列を重視する日本型能力主義、集団作業を前提にした勤務形態、個と全体を密接に結びつける有機的組織、組織の内部に社員を囲い込む兼業規制。こうした大企業型のシステムがベンチャー起業に起きている。これはベンチャーの特性と反するシステムになる。
 急成長したベンチャー企業の内部統制が、パターナリズムで行われ、社員の自主性を損なうというのもよくみられること(個人的な見聞の範囲内です)。
 起業には、ビジネスモデルや技術の斬新性のことがいろいろ言われるのだが、それは当然。たいていの起業向け指南書あはこのあたりと資金調達のところを書いている。この本から学ぶとなると、それらをクリアしたうえで、実は組織論や評価、マネジメントのほうが、企業の成長には重要だといえる。たしかにこのあたりのいい本はないからなあ。「デルの革命」で感じたことを補強するような内容だった。