「エンゲルスの著作。1850年に『新ライン新聞・政治経済評論』第5・6合併号に掲載したもの。ドイツの三月革命(1848〜49)の敗北から2年間にわたる革命運動の沈滞した状況下にあって、大農民戦争(1524〜25)の時期に力強く闘ったドイツ農民の姿を描いて労働運動を鼓舞するとともに、現在当面している敵も300年前のときとたいして変わっていないという点で、その闘いが容易でないことを労働者階級に自覚させる目的で書かれたもの。
農民戦争においては農民と都市下層民が封建的勢力に対して統一的な抵抗を展開できず、それが敗北の一因となったことを指摘し、農民戦争と三月革命ではともに領邦割拠した地方諸侯が地方ごとに一揆(いっき)を撃破した点、また上層市民層が断固として農民の側について闘争しなかった点において類似していることをあげ、いまや革命の担い手としての労働者階級が登場してきた点に、今後のドイツにおける進歩の展望をみいだそうとしている。」*1
対象とする時代は16世紀初頭。思想史的には、ルター・カルヴァン等の宗教改革があったという点を抑えておこう。またフランスではカソリックとプロテスタントの宗教戦争があったということ、この直前にプラハのフス派のの農民一揆があり、イタリアでは海運業が起こり初期の資本主義的な会社組織ができていたということ、小規模な金融資本が生まれたり、マニファクチュアのいくつかが生産資本を持つようになって拡大していた(その結果農民の片手間な手工業が没落し、農民が貧困化していった)ことあたりが重要。西ヨーロッパの資本主義化がはじまったあたりで、国境を越えた(このころはネーション=ステートの観念はなかったので移動はほぼ自由。移動できる人は限られていたが)資本によって成長するものと零泊するものの差が顕著になっていたのだった。
そこにおいて、いろいろな一揆、反権力闘争などがおきたのだった。そのなかでトーマス・ミュンツァーに率いられた農民一揆に現在(1850年)の共産主義革命との類似と可能性と失敗を見出そうという主題。まあ、江戸時代の農民一揆に、自由民権運動の萌芽が見られるとか、自由と民主の主張と組織論があるとか、そういう研究があったなあ。
歴史学としてみたらこの記述はおかしくねえ、牽強付会じゃねえの、というところが目について内容を楽しめなかった。訳も古めかしいし(1950年初版)、旧字旧かなだし。現在絶版中もやむをえないな。
重要なことを忘れていた。この本は18歳で買ったのだが、その理由は堀田善衛「若き日の詩人たちの肖像」の中で触れられていたからだった。小説の中で「ドイツ農民戦争」の一部が引用され、「デューラーによるドイツ農民戦争の記念塔設計図」が掲載されていたからだった。買ってはいたものの、読了したのは1994年で、再読(途中で断念)が2010年。堀田善衛ほどのよみとりはなかなかできないなあ。
2010/09/17
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*1:どのサイトの引用なのか分からなくなりました。すみません。