odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

レフ・トロツキー「永続革命論」(光文社文庫) ターリンとの政争に敗れ、本人不在で行われた裁判への反駁。自分はレーニンに忠実だったという弁明。

 「自らが発見した理論と法則によって権力を握り、指導者としてロシア革命を勝利に導いたのち、その理論と法則ゆえに最大級の異端として、もろとも歴史から葬り去られたトロツキーの革命理論が現代に甦る。付録として本邦初訳の「レーニンとの意見の相違」ほか5論稿収録。」

 スターリンとの政争に敗れ、国外に追放され、本人不在のまま裁判が行われていた。裁判では証人がトロツキーを弾劾するが、それを反駁するために書かれた。なので、「永続革命」という観念を展開するのではなく、事実の間違いやスターリンの思想の批判にあてられる。
第1章 本書の強いられた性格とその目的
第2章 永続革命はプロレタリアートによる「飛躍」ではなく、プロレタリアートの指導下での国民の刷新である
第3章 「民主主義独裁」の三要素?諸階級、諸課題、政治力学
第4章 永続革命論は実践においてどんな姿で現われたか?
第5章 「民主主義独裁」はわが国において実現されたのか、そしてそれはいつのことか?
第6章 歴史的段階の飛び越えについて
第7章 民主主義独裁のスローガンは東方にとって今日何を意味するか?
第8章 マルクス主義から平和主義へ
 自分なりに永続革命論を通俗化してしまうと、ある国の社会主義はそれ一国だけでは成立しない。周辺国家が社会主義になり、互いに協力すること、および資本主義国家の労働者階級の支援・協力が必要である。すなわち、世界全体の社会主義化が完成し、社会主義グローバル化が実現するまで、革命は継続されなければならない。このような国際化を放棄すると、一国の社会主義はその国家のメシアニズム化がおこり、自らのみが選ばれた社会主義者として傲慢になる。こんなところかな。論文のほとんどがラデックへの批判で、過去から自分は主張を変えていない、それは常にレーニンと一致していた、ということが書かれている。上のようなまとめは、最後の附録10ページくらいにまとめられている。
 スターリントロツキーの違い、とくに国家運営とか計画経済あたり、はどのくらい大きいのかというと、さほど差はないだろう。レーニンの敷いた国家資本主義路線の乗っているかぎり、政策に差はさほどでてこない。ポイントはどこを収奪先にするかで、国内の人民か国外の権力かくらいかねえ。
 論文の性格上仕方がないが、ここには(他に読んだ「ロシア革命史」「裏切られた革命」でも)経済がない。