odd_hatchの読書ノート

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いかりや長介「だめだこりゃ」(新潮文庫)

 餓鬼のころに「八時だよ!全員集合」を欠かさず見ていたのだよなあ。最近のバラエティ番組でドリフターズのメンバーが結成当時から上記の番組制作の裏話を話すようになったなあ。wikipedhiaの「ドリフターズ」とメンバーのページは充実していて、読むだけでも楽しいなあ。そういうことはおいておくとして。
 自分にとっては、「和久平八郎」その他の俳優よりも、「全員集合」「大爆笑」で爆笑コントを連発するコメディアンのほうが重要。
 気づいた点は
・ほとんどのネタは、いかりやが発案。読みあわせとリハーサルで徹底的に練っていったこと。アドリブを嫌って、全部自分でコントロールしようとしたところ。(出自がジャズなのに、アドリブ嫌いというのは解せないねえ)
・初期のドリフターズでうまくいかないときに「やる気がないのなら辞めちまえ」と怒ったところ、主力メンバーが辞めてしまう。以降いかりやは絶対に「辞めちまえ」といわないように決意。
・それが理由か、約20年近くメンバー交代のないまま活動を継続。しかも休みなしで生放送番組を皆勤。
・高木や荒井など芸のないような部下に「芸」を作っていったこと。番組最後のころには、視聴率のプレッシャーで胃潰瘍になっていたこと。
ドリフターズには関係ないけど、昭和30年代の芸能人には、ジャズバンド出身者がたくさんいたのだった。意外な歌手が子供のころからの歌手活動をしていたことが興味深い。まずこういうところで実力を養わないと、芸能界にいけないシステムがあったのだな。
 ここで読むいかりやは、自尊心が強いが自分の「笑い」に自信を持つことができず、あきられることに怯えながらも他人には傲慢なところがあり、プレッシャーで体を壊しながらも、仕事に全力で取り組む孤独なリーダー。チャップリンにしろ、藤山寛美にしろ、きわめて個性的なコメディアンがエゴイストでわがままであることは珍しいことではない。おそらく昭和の高度成長経済時代にはこのタイプのリーダーがたくさんいたことだろう。昭和一桁世代の典型的なやり方だったのだろう。
 「全員集合」を終えた後は、他のメンバーは仕事の数をしぼっていったようだが、彼は常に仕事を抱えていた。亡くなる直前まで仕事をもっていた。これはなにかの強迫観念みたいなものがあったのかしら。仕事を持っていないと貧困になってしまうというトラウマがあったのかしら。画面に映るにこやかで強面の表情の裏に、小心で卑屈で、しかしエゴイスティックな心情があったのだろうか。
  ここはやはり居作昌果「8時だよ全員集合伝説」 (双葉文庫) も読んで、あの怪物番組の裏側を複数の視点で検証しておかないと。

  

2014/10/06 小林信彦「日本の喜劇人」(新潮文庫)
2012/09/10 徳川夢声「夢声戦争日記 抄」(中公文庫)