odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

土田直鎮「日本の歴史05 王朝の貴族」( 中公文庫) 平安期は民衆や地方の武士に関する資料が少ないので、歴史記述は貴族ばかりになる。

 西暦1000年を境に前後50年の約100年を記載。タイトルにあるように天皇を中心にした摂関政治のことを記述している。それは当時の資料がどうしても貴族の日記や公文書、さらには歴史物語に偏するためで、民衆や地方の武士に関する資料が少ないから(文書が散逸、紛失したから。考古物件に頼ることになるから)。
 網野善彦「日本中世の民衆像」などとつきあわせると、こんな制度であったと仮構できるかしら。
200年には九州あたりで国が作られる。それに対応して作られた国が次第に東方に広がっていく。
・奈良や平安時代の前半を通じて、これらの国を統括する政治権力ができる。これは天皇を中心においた政治権力。初期は指導者の強力なカリスマ性に依存していたが、次第に複数の指導者が協力する制度ができてくる。簒奪したのが、たとえばここに出てくる藤原道長
・この中央集権の体制の基礎となるのが荘園制度。とはいえ、中国的な官僚制度までにはいたらず、地方の「村」「惣」などを基盤にした権力、国を完全に統制しているわけではなかった。
・この「王朝の貴族」に書かれた時代は、とりあえず中央と地方の折り合いはできていた。
鎌倉幕府は、王朝の貴族の制度にはあまり手をつけず、その政権で疎外されていた武士、地方の荘園の指示を取り付けたもの。それぞれの政権の首都から離れると、二重権力体制があって、それぞれの荘園は思惑にしたがって、王朝についたり、幕府についたりした。
・このような二重権力体制がしばらく続いたが、王朝の荘園制度が解体したのは、南北朝から応仁の乱あたりにかけて。その後の戦国時代で再編成。このとき「村」「惣」の自治権が壊滅。そして中央集権制度が列島の隅々まで(比喩として)行き渡る。

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 平安朝の貴族たちは日々の儀式をいかに正確に行うかということに気を配っていた。一つの儀式(たとえば正月)は数日続き、それが細かい規則にのっとって行われる。ほぼ毎日何らかの儀式があり、旱魃や長雨があると急きょ儀式を追加することになる。それらを執行するのは左右の大臣たちで、彼は数十の部署を調整し、数百の人を指揮し、問題のつど天皇(や蔵人頭など)に裁可を得なければならない。式の規則を明記した書物はないから、父の日記を手がかりに古い儀式の執行を調べなければならない。というわけで、儀式を執行できるということが出世の(ひとつの)手段になってくる。
 ああ、この世界はマーヴィン・ピークゴーメンガースト城」と同じだ。スティアパイクがのし上がったのは、この城で唯一の儀式執行官になるところからだった。

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