odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

荒俣宏「知識人99人の死に方」(角川文庫)

 知名人がどのように亡くなったかをまとめた本としては、山田風太郎の作(「人間臨終図鑑」)のほうが有名だろうか。彼は数歳で亡くなった人から、90歳を越える高齢の人まで1000人近くの事例を集めたのではなかったか。あいにくあまりに大きな本だったので、購入を見送っているうちにみあたらなくなった(2012/5/25現在では、徳間文庫で現役のようだ)。
 それに比べると、この本はコンパクトであるぶん、簡単に読み進められた。「知識人」と銘打ってあるが、ほとんどが日本の作家。それもこの百年の間になくなった人ばかり。そういう点では物足りない。とはいうものの、永井荷風石川淳中井英夫(虚無への供物の著者)の三人が異色のおもしろさ。それぞれわがまま放題であり、人柄なのか、功績なのか、晩年の生き方の自由闊達さはうらやましい限り。とはいえ、周囲の人たちには大迷惑をかけたようで、そこは相当に割り引かないといけないかな(晩年の中井英夫のことは笠井潔「天啓の器」(双葉社文庫)に書かれていたと思う)。ここには死そのものよりも、晩年の創作活動が衰えた時期の記載が多いので、死そのものに望んだときに彼らがどのように反応したかはあまりわからない。そういう意味では即物的な記述に終始し、ハイデガーやアリエス、ジャンケレヴィッチのような思索はまずない。
 彼らの死にざまを読みながら気になったのは2点。
・高齢でありながら自殺した人が多いこと。高名な指揮者にも、ギュンター・ヴァント、ゲオルグ・ティントナーなど。ヴィルヘルム・フルトヴェングラーカルロス・クライバーにもそういううわさがあった(否定されている)。
・階段・廊下などで転倒し頭部を強打して死亡する例が多いこと。リタイア後には、自宅改装は必須なのかなあ、金がいるなあ
 そう簡単に老衰で眠るように死ぬというわけにはいかない。長生きであっても、痴呆や老衰で家族の介護が必要になるというトレードオフがある。
 おそらく自分自身は、永井荷風森茉莉のように独居で誰にも見取られずに死亡するだろう。異臭がして発見されるという、都会の孤独死をそのまま行うような気がする。事故に気をつけるとともに、遺書と葬儀費用(現金がよさそうだ)を用意しておくこと、死後の処理が簡単なように持物を減らすことが必要と思った(自炊PDFを推進する理由のひとつ)。うーん、面倒くせえなあ。