晩年の指揮者が「週刊金曜日」に連載したエッセイ。音楽活動の裏方にいる人たちの仕事を紹介したもの。たとえば、楽器運搬、ステージマネージャー、調律師、チラシ配布、そういう人たち。同じような内容を「フィルハーモニーの風景」(岩波新書)で書いていて、そちらのほうが面白かった(初めて書いたネタだから、書き手も新鮮だったのだろうね)。こちらは別のところでかいたネタの使いまわし、あるいは最新情報の紹介になったので、面白さは半減。
こういう有名人(別の仕事を持っていて、そちらが非常に忙しい人)が気軽なエッセイを書くときには、別のライターが編集作業をしたほうがいいと思った。岩城宏之と中村紘子を比較したとき、プロフェッショナルが文章のチェックを入れている(と思われる)後者のほうがずっと面白い。