odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

河邑厚徳「エンデの遺言」(NHK出版)

 主題はエンデの「金」に対する疑問と、その解決方法。ここでは地域通貨LETS)が取り上げられている。
 最大の収穫は、邦訳が一冊も出ていない経済学者シルビオ・ゲゼルを知ったこと。経済学者として、「国家に抗する貨幣」のあり方を考えていた人がいるとは思わなかった。
 ゲゼルの問題意識はみっつで、
1.貨幣に利子が生じるのはよくない。退蔵することで利益がでるのはおかしい。
2.貨幣は流動していることが肝要。流動することによって、生産と消費の流通がよくなり、それが生活の質を上げる
3.貨幣を鋳造する権利を持っているのが国家だけであるのはおかしい。
あたり。そこで彼の提案は、退蔵すると価値を減じる貨幣にしよう → 貯金にまわすとそのうち使えなくなるから、すぐに次の人にまわさないといけない、貨幣は共同体でも製造できるようにしよう → この貨幣は逆利子になっているから貨幣発行による利益はでない、ということになる。
 でゲゼルの面白いのは、第1次大戦後のハイパーインフレでこの地域貨幣の実験を行ったこと。オーストリア(でよかったのかな)もインフレの影響を免れず、特に重要な産業もない山間の村では不況で苦境にあった。男たちは村を棄てて、出稼ぎに出ようかという相談のときに、誰かの発案(たしか村長)で地域貨幣を発行した。そしたら、あーら不思議、半年のうちに村の経済は持ち直し、噂を聞きつけた周囲の村もこの地域貨幣に参加するようになった。とはいえ、貨幣の鋳造権を奪われてはならんと、国家は軍隊を派遣してこの運動を破壊し、国家の貨幣を押しつけた。村は再び貧困にあえぐ状況に戻った。こういう話が綴られる。
 とはいえ今の自分が地域貨幣に懐疑的になるのは、下記サイトでゲゼルの主著「自然的経済秩序」を取得して読んでいるのだが、理解できないこと。何が理解できないかをわからないというもどかしさ。とりわけ、「「ロビンソン・クルーソー物語」を理解できないから。
シルビオ・ゲゼル研究室
http://www3.plala.or.jp/mig/gesell/index-jp.html
ロビンソン・クルーソー物語」
シルビオ・ゲゼルの「ロビンソン・クルーソー物語」 ゲゼル研究会

2014/07/03 ミヒャエル・エンデ「モモ」(岩波書店)

 もうひとつは、地域貨幣は成功事例が喧伝されることが多いが、同じ実験は1920-30年代にスペイン、中南米でも行われ、たいていは失敗するかしていたのだ。その事例はたとえば、堀田善衛「バルセローナにて」(集英社文庫)、ヤーギン/スタニスロー「市場対国家」(日経ビジネス文庫)にある。

エンデの遺言「根源からお金を問うこと」

エンデの遺言「根源からお金を問うこと」

エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)

エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)