odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

都筑道夫「びっくり博覧会」(集英社文庫)

 1982年初版のショートショート集。主には1979-80年にでたものを集めていて、ところどころにずっと古いのが載っている。読んでいる間は、古い時に書かれたもの(1965−75年の間)であるとは思わせない。そういう安定した力量の持ち主。ここらの書き方は、読者よりもほかの作家がほめているみたい。素人目にはわからない細部に同業の職人がうーんと唸っている図。

 それをことに感じたのは、いくつかのショートショートが小説を書く小説になっている。「怪談作法」「午前二時の骨牌」がことに。そこには作者と思しい語り手が、小説を書くときに注意することとか、落ちのつけ方の同業他社製品を批判していたり、複数のおちを用意して読者に選ばせたり、と普通読者には気づかれないようにしているところを書いている。そこまで手の内をさらしてよいのかしら。あるいは、ある程度キャリアを積んだエンターテイメント小説作家が「文学」に色気を出すと自伝的な純文学を書きだすらしいがそういうものかしら。まあ後者は邪推。
 読んだらすぐにストーリーを忘れてしまうもので、作者の作品だけを続けて読むと、ことにそうなってしまうが、初出のように新聞や雑誌にほかの書き手の膨大な文章のなかに作者の一編がはいっていると、そこだけ光って見えるのではないかな。