odd_hatchの読書ノート

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ハーマン・メルヴィル「白鯨 上」(新潮文庫)-3 登場人物表

 という具合に、イシュマエルみたいにどうでもいいことを書くしかないが、もはやネタは尽きた。なので、あとはこれからハーマン・メルヴィル「白鯨」を読む人のための資料を提供することにする。
 まずは登場人物表。だいたい登場順。
イシュマエル ・・・ 語り手。40代前半。世界の放浪者で、博物記録の収集家。長老教会(この小説にはモルモン教とかさまざまな異教が登場する。宗教の博覧会でもある)
クィークェグ ・・・ 銛打ち(スターバックのボートに乗る)。「人食い人種(ママ)」。イシュマエルの莫逆の友になる。
スターバック ・・・ 一等航海士。妻子持ち。高身長。がっしりした体格。唯一エイハブに進言できる。
スタブ ・・・ 二等航海士。のんきもの、陽気な男。
フラスク ・・・ 二等航海士。小男、剽軽者。
タシュテゴ ・・・ 銛打ち(スタブのボートに乗る)。インディアン。
ダグー ・・・ 銛打ち(フラスクのボートに乗る)。アフリカン。
ピップ ・・・ アフリカンの少年。捕鯨ボートから振り落とされてから狂気の道化になる。
エイハブ ・・・ 船長。58歳(130章に略歴あり)。前回の日本沖航海で、モービー・ディックに襲われ片足をなくし、鯨の骨の義足をつけている。不機嫌、執念、決意。
フェダラー ・・・ 拝火(ゾロアスター)教徒。エイハブが個人的に雇い、他の水夫とは別の部屋に入れている。エイハブの死を予言。
大工 ・・・ 万能多彩。棺、ブイ、義足などをつくる。
鍛冶屋 ・・・ 腕の良い職人だったのが酒で身を持ち崩して、老人になって捕鯨船に乗ることになる。
「ピークォド号」はおよそ30人が乗り込むが、名を持ち、発言が採録されたのはこの人たちのみ。出航前のニュー・ベドフォードには宿屋の主人や神父などが名をもって現れるが、まあ気にしなくてよいだろう。
(当時、アメリカは独立したものの、個々の州(ステート)の自治権は強い。それがあってか、登場人物は「国家」に帰属するという意識はまずない。ピークォド号の採用面接でも、宗派は聞かれても出身や国籍は聞かれない。なので、この船はほとんど世界中の人種・民族の男が乗っている。ニュー・ベドフォードやナンタケットの都市もたぶん同じ。あらゆる人種が宿の部屋を共有し、同じ酒場で飯を食う。北方の港町なので、奴隷制は見られない。そういう自由と平等が実現している場所と集団である。)
 いったい彼らは総じてシェークスピアのようなセリフを語る雄弁家である。彼らの比喩や妄念、その裏打ちになる博識、これらは19世紀のもの。できれば聖書のいくつかの書を読んでおくことは必要かも。
 あとこの小説では予言をするものが多々いる。出航前に不吉を語るイライジャであり、自らの死を幻視するクィークェグであり、エイハブの死の条件を示すフェダラーである。その予言はエイハブに向かうのであって、どのように実現するかを確認することは読書に重要。
 「白鯨」はそう簡単には全体をつかむことのできないのであるが、まるでこの小説が「モービー・ディック」そのもののように不可知を示し、エイハブたる読者の挑戦をことごとく拒否しているかのよう。
 という具合に、難解な小説であるのだが、自分が真に驚いたのは、ハーマン・メルヴィルが「白鯨」を書いたのは、作家が31歳だったときだということ。なるほど昔の人は知的に早熟であったが、それにしてもこの年齢!