2018/03/02 河野健二「世界の歴史15 フランス革命」(河出文庫)-1
(以下は若書き。かっこ内が再読時の補足)
まとめでパトリオティズムとナショナリズムの違いを説明している。前者は郷土や地縁などに根ざした感情に由来するもので、後者は国家(国民=ネーション)に由来するもの。この区別は自分の中ではまだよく整理されていないが、重要な区別であるだろう。おうおうにして、前者と後者は区別されないで使われるから。前者の説明をしながら、その実は後者にもっていって国家総動員体制に持っていこうというのはよくある。
またナショナリズムに関しても、拡散型ナショナリズムと収斂型ナショナリズムがあるとしている。前者はフランス革命後のフランスが行ったこと。これは「普遍的価値」(この革命とその後の国家では「自由・平等・友愛」)を周辺国家に広めよう、往々にして軍事力を背景にして押し付けが行われる。後者は、自国内の利益を優先しようとするもので、保護・保守の力になっていく。
この区別も面白い。この拡散型と収斂型のナショナリズムは、ロシア革命でも、明治維新でも見られたことだった。ロシア革命のスターリンとトロツキーの違いというのも、収斂型と拡散型で説明できそうであるし、明治維新の大久保と西郷の差異も同じ種類のように思われる(ついでにいうと、明治維新から40年は収斂型のナショナリズムであり、日露戦争からの40年は拡散型のナショナリズムで、その後は政治の収斂型と経済の拡散型が同時進行という図式になりそうだ)。
(この前を書いた今井宏「世界の歴史13 絶対君主の時代」(河出文庫)では、絶対王政の成立にあたって、求心化と遠心化が起きたと説明する。急進化は国王を中心にする中央集権化。教会やコミューン(自治体)が担ってきた公共的役割を国家に集中することをふくむ。一方、遠心化は地方の自治を強化する運動。中央集権が強化されるときに、遠心化や拡散型の運動が起きたというのがヨーロッパの特異なところ。16-18世紀の絶対王政やそのあとの国民国家の時代にあって、ヨーロッパ内の戦争は多発したにもかかわらず、ついに帝国ができなかったことの理由のひとつになるのかもしれない。さらに、革命・反動の経験や地方分権の強さは21世紀にはシティズンシップの拡大にも関係しているのかもしれない。あと、本書にあったが、ナポレオンの軍隊が最初の国民軍とされる。それは正しいが、ナポレオンの軍隊に対抗するレジスタンスやゲリラの活動でフランス以外の国でもナショナリズムは強化されたのだった。)
また、フランス革命のスローガンは「自由・平等・友愛」が有名だが、ここに至るまでにはいくつかの改訂が行われ、最終形のこのスローガンは「革命」の主体であった人民の理念ではなく、ブルジョアのそれであったということも重要。ハンナ・アーレントや柄谷行人がこのスローガンを批判していたが、それまで「博愛」と訳されていたものを「友愛」とすることで疑問が氷解。「友愛」であるとき、前提になるのは「友人」の間の関係が前提になっていて、「友人」関係の外にある人は「愛」の対象から除外されるのだ。ここのところが拡散型ナショナリズムとつながるとき、不寛容や迫害の理由付けになる。(いっぽう、ナポレオンのスローガンは「所有・平等・自由」であった。専制権力そのものやそれを支える階層の欲望が個々に端的にあらわれている。所有を優先することはすでに持っている人々には有利であるが、少額しか持たないものや全く持たないものには関係ない。平等や自由がうたわれていても、所有の格差を解消しないし、資産の再分配を行わないのは社会を不安定にする。)
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フランス革命のスローガン「自由・平等・友愛」は両立しないコンセプトや規範であり、資本主義分析も必要ということを、柄谷行人が「自由・平等・友愛」@戦前の思考」(講談社学術文庫)で書いているので、メモしておく。