odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

ロバート・スティーブンソン「宝島」(新潮文庫)

 最初に読んだのは小学館のカラー版名作全集「少年少女 世界の文学」イギリス編で。キャロル「不思議の国のアリス」「ベオウルフ」も載っていた。   f:id:odd_hatch:20200427091235p:plain
 病気がちの父が経営している「ベンボ―提督亭」にフリント船長と名乗る船乗りがやってきた。そのときから15歳のジム・ホーキンス少年の冒険が始まる。

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という具合に、マンガや映画のあおりによくあるような文章から始めたが、そうなるのも無理はない。1881年から連載され1883年に出版された本書は、そのあとの秘境冒険小説のプロトタイプになった。この影響を受けない秘境冒険小説を構想するのができないほどに、確固たる地盤を固めている。といいながら、秘境を冒険する小説はいろいろ書かれてきたので(バトラー「エレホン」メルヴィル「白鯨」などなど。たぶん18世紀にまでさかのぼれる)、すべてがこの本から始まるわけではない。

 さて、フリント船長は謎の集団に殺される。母といっしょに船長の宿屋代を回収しようとしたジムは、手帳と地図を発見。立派な医師リヴジー先生に見せると、これは君、海賊の宝を隠し場所が書かれているのだよ、ということで、大地主の支援をもとに船を手配する。お調子者の大地主が惚れ込んだ片足の大男ジョン・シルヴァーがあっという間に船員を集め、勇躍大西洋に出帆する。

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しかし、道中、シルヴァー一味の悪巧みを知り、目的の島に到着したと同時に、ジムらは船員の「クーデター」にあって船を失う。

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ジムら7人はシルヴァー一味19人の襲撃を避けながら、島の捜索に着手。

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怖いもの知らずのジム少年はかってに島をほっつき歩いては、謎の男ベン・ガンを見つけたり、シルヴァー一味が確保したヒスパニオーラ号を奪取して(その際初めて人を殺してしまう)、別の入り江に隠す。

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勇んで帰還すると、リヴジー先生らは砦をシルヴァーらに明け渡してすでにいない。シルヴァーは先生から譲られた地図を頼りに宝の捜索に向かう。

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 どこかで読んだか見たかしたストーリー。それ以外のところに注目すると、
・決意してからしばらくの間は、探検や冒険に参加するヒューマンリソースの確保。ここで、異能の持ち主がそれぞれの意図を持って集まる。シルヴァーのような従順な仮面をかぶりながら何か別の目的を隠したジョーカーがいる。そのほかにもお調子者のトリックスターや規律を重んじるリーダー、分析に優れる参謀、みんなのマスコットなど、よくあるキャラクターが勢ぞろい。
(卑屈と傲慢、緻密と豪胆、道化で策士など、多面性と矛盾の塊であるジョン・シルヴァーの造形がすばらしい。彼がでしゃばるたびに、物語が推進する。さらに、宝探しと同時に、少年ジムが様々な体験をへて大人に成長する教養小説の物語ももっている。その話でもジムのメンターになるのはジョン・シルヴァーだ。)

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・プロジェクト管理からすると、関係者がヴィジョンとミッションを共有していないうえ、コミュニケーション管理と危機管理がおろそかになっている。たいていの探検プロジェクトでは、関係者が良好なコミュニケーションが取れるように、出発までに時間をかけて、リスクを減らすものだが、ここでは急ぎすぎた。まあ、内部の敵対と分裂がないと、スリルとサスペンスが薄れるからねえ。
・探検隊が二つの勢力に分かれて争う。人の命は安くて、拳銃とナイフをみな装備しているからすぐに流血沙汰になる。敵味方に被害が出て、元は7対19だったのが、6対15に、4対8にと、事態の推移に伴い、人数が数値で示される。黒澤明七人の侍」のように彼我兵力差を強調するテクニック。

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・この探検のもとになるのは、3年前の別の冒険。その時の首領が客死し、宝の行方が分からなくなった。それを再発見するのが旅の目的になる。行方不明になったのは、ここでは海賊の集めた財宝や貨幣であったが、人であることもある。前世期のキャプテン・クックらの海賊や探検家が財宝を残したまま死んだという伝説があって、かっこうのネタになった。
・現地には謎の男が住まっていて、探検隊に容易に心を開かない。彼は探検隊のじゃまをしていたが、彼の過去を知るにつけて理解が進み、協力体制をとる。しばしば謎の男が秘めている情報が探検の謎を解くカギになる。
 というような話が、1883年に書かれていたのに注目。と同時に、その時代ですら、命が安く、探検グループが孤立する物語を執筆時の「現代」にすることができなかったと見え、時代は18世紀(たぶん100年前の1780年前後)に設定されている。

    

 

「宝島」を最初に読んだのは、カラー版名作全集「少年少女 世界の文学 4巻」で(「ベーオウルフ」も一緒に収録)。おれは7歳で読んだのだよな。新潮文庫版は初出時の挿絵も載っているのが魅力だが、子供向けの学研版の挿絵も魅力的なので、いくつか紹介した。

 

  なんと少年少女向け版が電子書籍になっていた!

 

1934年の映画

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1999年の映画

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