odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

清水弟「フランスの憂鬱」(岩波新書)

 ミッテラン政権(1981-1995)まで長期政権になったフランスの1980年代をみる。この10年間は、国家主導型経済に対する自由主義バックラッシュがあり、民営化や規制緩和が進んだ。ではフランスはどうだったか。ヤーギン/スタニスロー「市場対国家 上下」(日経ビジネス文庫)では触れられていないので、本書で補完したかったが、それはどうもうまくいかない。というのも、新聞社の駐在記者の視点なので、現在進行中のできごとを整理するのに精いっぱいで(それにフランス滞在は3年と短い)、背後の事象を捉えるまでにはいたらない。現地の知識人・文化人の意見に目を配るまでにもいかない。なので、書かれていることは皮相的。

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 とりあえずわかることは、フランスもまたドゴールにしてから国家主導型のケインズ主義的な保護経済政策をしてきたが、ミッテランレジスタンスの闘士で社会党を支持基盤にもつことからわかるように、政策は社会主義的。なので企業の国有化はさらに進み(ルノーが国有企業になったのはミッテラン政権下)、インフレ抑制に注力した。その結果、経済は発展したのではあるが、企業が人員整理を進めたことがあり、失業率は高い。くわえて財政政策には積極的でなく、公務員の給与は据え置かれるか減らされた。公務員(警察官まで!)や農民、高校生らが繰り返しデモを起こし、社会不安を起こす(とはいえ、フランス革命以来の伝統で、国民はデモによる不便をあまり気にせず、デモを支持する)。またこの時代には中東、東欧、アフリカからの移民難民が増加していた。ときに強制送還などの強硬処置をする。イスラムの増加は表現の自由と信仰の自由でバッティングを起こし、大きな問題になる。とくに公教育でヒジャブをつけることについて。一方で移民反対の極右が台頭する。その支持者がアルジェリア、モロッコなどの旧植民地にルーツを持つ人というのが衝撃的。
 目次は以下の通り。
1 ミッテラン政権の11年 /2 エリゼ宮殿の憂鬱 /3 病める?フランス社会 /4 ポスト・ミッテランの肖像 /5 外交大国のかげり /6 欧州統合はフランスを救うか
 初出は1992年。その直前にヨーロッパ(とその周辺)に大きな変化が起きた。1989年からの東欧革命。1991年にはロシアで旧主派のクーデターがある。ユーゴスラヴィアでは内戦勃発。フランスは連合軍の一員として参戦。1991年湾岸戦争。こういう戦争と内戦が周辺で起き、人権違反事件が相次ぐ。一方、1991年のマーストリヒト条約ではフランスはEU実現にむけて中心的な活躍をする。これらは初出当時現在進行中のできごとであるので、評価が下されない。