odd_hatchの読書ノート

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梶田孝道「統合と分裂のヨーロッパ」(岩波新書)-1

  欧州連合の成立を目前に控えたヨーロッパ。国・民族単位で社会を見るやりかたができなくなるできごとであって、現状と行く末を注視する。初出は1993年。それからおよそ30年がたった2020年の視点で当時を読み直す。民族を考えるときに、ホームランドをもつ民族(ナショナリズム)ともたない移民・難民(エスニシティ)を分けて考える。第1部はナショナリズム、第2部はエスニシティを考える。

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序章 新しい現実・新しい方法 ・・・ 1.EC(超国家)・国家・民族という三空間共存、2.多文化共存、3.ナショナリズム(と外国人排斥)運動。この3つ。

第1部 「三空間並存時代」の到来
EC・国家・地域—ヨーロッパの社会空間はどう変わるか ・・・ 西ヨーロッパでは三空間が併存することで民族独立・分離の傾向が弱まることが予想される。帰属意識アイデンティティも変化するであろう。一方で、従来とおりの国家帰属意識を強くもつ人々もいる。

「三空間並存モデル」を応用する ・・・ 東欧・ソ連ではどうか。西ヨーロッパとは逆に超国家・連邦などの統合の枠組みがなくなり、民族国家化が進み、少数民族の迫害差別が起きた。ECに親和的なキリスト教・非共産党・豊かな国と、非親和的で共産党の影響が残りイスラムが多数いるアジアの貧しい国に分かれている。またイギリス・スペインの少数民族独立運動を抱えている国では、民族の分離・独立の運動は弱まると予想する。

EC統合により国家はどう変わるか ・・・ ECの理念は他国共存型民主主義。多数の中心、多数の文化、多数の言語。中央集権の強い大国フランスは適合に苦しみ、連邦制を取り多言語が共存する小国ベルギーは適合している。

 

 同じ圏内に長年住んでいる人々の持つナショナリズムは超国家・国家・地域の分権と統合が進むことによって、過去のような民族紛争・独立運動は減っていくのではないかという予想。実際に、北アイルランドカタルーニャなどでの紛争はへった。2章の東欧・ソ連では1990年代に分裂が進み、ときに深刻で悲惨な内戦や民族浄化が起こった。とりあえずは、東欧ソ連圏では民族国家が成立し、21世紀には内戦は収まりつつある。とはいえ別の形のナショナリズムが登場する可能性もある。イングランド(UK)がEUから離脱することが国民投票で決まった後、スコットランドではイングランドから離れて独立するべきという運動が起きた(2020年にイングランド国民投票を拒否して、以後新型コロナウィルス感染もあって動きなし)。
 EU内の貧しい国を支援するかどうかでは、EU内でも、国の中でも異論が出ている(たいていは税金を貧しい国に回すのは嫌だという意見)。なので、EUアイデンティティにするまでにはなかなかいかない。

 

2020/10/06 梶田孝道「統合と分裂のヨーロッパ」(岩波新書)-2 1993年