odd_hatchの読書ノート

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有賀夏紀「アメリカの20世紀 下」(中公新書)

2020/10/12 有賀夏紀「アメリカの20世紀 上」(中公新書) 2002年の続き

 

 下巻はWW2の後をまとめる。自分のライフタイムに重なる時代になるので、これまで通史を読んでいなかった。なので新鮮。

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第6章 冷戦下の「黄金時代」 ・・・ 1945年から1960年。WW2終結アメリカは国際的な指導力をもったが、ソ連他の共産主義諸国との対立、対決を招く。冷戦と封じ込め政策。代理戦争としての朝鮮戦争中東戦争ベトナム独立、キューバ危機など。この事態で日本は占領国から反共の一翼を担う国家へと変貌させられた。国内では軍産複合体が強化され、経済成長が継続し大衆消費社会となった。多くのアメリカ人にとっては「黄金時代」。

第7章 激動の時代 ・・・ 1960-70年代。経済成長は続いたが、アメリカの自信と誇りを失う。冷戦とベトナム戦争。国内の公民権運動(と触発されたエスニック・マイノリティ、ジェンダー・マイノリティの「解放」運動)。アメリカ的生活様式への批判も。長期化する戦争と社会保障の充実はインフレと増税になる。

第8章 保守の時代 ・・・ ベトナム戦争の長期化の末に、長年(ニューディール以来)続いた民主党政権共和党に移る。以後、レーガン、ブッシュと保守政権が続く。ただしニクソンの辞任はアメリカの憲法制度の危機とみられた。石油ショック以降の不況とインフレはアメリカの製造業の海外移転を促す。レーガンは「小さな政府」を標榜し、60年代の社会保障を打ち切る政策をとる。対外的には軍事力を背景にした威圧外交を続け、ベトナム敗戦以降も軍事介入を続ける。

第9章 文化戦争の世紀末 ・・・ 移民制限が撤廃されてから、アジア系とヒスパニックの人口が急増。白人の人口比率が下がりだす。多文化主義アメリカの統合を問題にしないので、キリスト教原理主義宗教右派をもつネオリベと対立するようになった。熟練労働がなくなり、低賃金サービス業がふえた。犯罪麻薬が増加。少子高齢化が進む。家族の在り方も多様化している。90年代は民主党のリベラルが政権を取り、経済成長があった。アメリカのリベラルは福祉国家型、自由経済主義のネオリベコミュニタリアンへと主流が変わる。

「九月十一日」が示すアメリカ ・・・ 1年前のテロの記憶。ブッシュのいうアメリカの「自由」とは何か。アメリカ史研究には多文化主義トランスナショナルアメリカを対象とすべきという議論がある。

 

 本書は2002年初出。すでに20年の歴史が加わったので、自分の記録を頼りに、トピックを挙げておこう。ゼロ年代:イラン・アフガニスタン侵攻(ブッシュのいう戦争の理由に根拠がなかったことが判明)、金融・IT産業の成長、初の黒人大統領誕生、リーマンショック
10年代:国家の枠からでるグローバル企業、ビジネスマン・トランプが大統領に選出、イスラムフォビア、メキシコとの国境に壁、ヘイトスピーチヘイトクライム
 ディケードをまとめるにあたって、大統領の発言と行動を重視する。もともとアメリ憲法では議会の権限のほうが大きく、大統領は牽制役であったのだが(渡辺靖編「現代アメリカ」有斐閣)、20世紀になり連邦政府で扱う問題が多数出てきて、大統領の仕事や役割が広がっていった。その結果、大統領の意思がアメリカの政治や経済に大きな影響をもつようになる。
 本書で特徴的だったのは、マイノリティや移民などの人権回復・公民権運動などを重視していること。アーレント「革命について」では、独立戦争を組織・指示し革命後の政体を検討し運用したのは白人(アングロサクソン系)であったが、黒人奴隷解放や新移民の流入などにつれて、憲法が保障する人権が拡大していった。それは上から恩寵的に落ちてくるものではなく、マイノリティと先駆的なリベラル白人の運動によって獲得されていった。そのダイナミズムそのものがアメリカの自由と民主主義のシンボルであり、保障するものであった。公的自由は制限されたとしても、このようなところで政治に参加する必要性や喜びを得られるのだろう。