odd_hatchの読書ノート

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渡辺靖編「現代アメリカ」(有斐閣)-1

 現代のアメリカ(と20世紀の歴史)をさまざまな切り口で説明する。歴史、政治、思想、経済、文化など。初出が2010年。初の黒人大統領バラク・オバマが就任した翌年。久しぶりの民主党の大統領なので、論調は民主主義や共和主義が復活するかどうかという視点。それが2016年に共和党ドナルド・トランプが選挙に勝ち、リベラルは落胆したのであった。

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第1部 アメリカの政治
 第1章 「アメリカ民主主義」の原動力(宇野重規) ・・・ トクヴィルを参考に18世紀末から19世紀半ばまでのアメリカの政治体制をみる。タウンシップ(区)→カウンティ(郡)→ステート(州:共和国)→連邦政府の順に先行した自治組織のつらないがあり、市民は自力で公的な問題を解決している。優れた政治家はいないが(俗っぽく、特製集団の利害の代表)、多数の人々の活動で寡頭や専制になることを逃れられる。問題は他人に対する無関心による個人主義。孤立や孤独から多数者に同調して抵抗がなくなり、多数者の専制が生まれる。一方で自発的結社(ボランタリー・アソシエーション)ができて、孤立や孤独を防いでいる。ヨーロッパの政治潮流は、1.伝統保守、2.自由主義、3.社会主義であるが、アメリカは2の自由主義だけあって、小さな政府で共和主義の保守(コンサバ)と大きな政府のリベラルがある(米欧でリベラルの意味が異なるので注意)。エスニックは多様であるが、言語と宗教の同質性が高かった。21世紀には多文化主義やマイノリティの権利保障などで、これまでの潮流も変化している。

 第2章 アメリカ流「保守」と「リベラル」の対立軸(中山俊宏) ・・・ WW2以降の「保守」と「リベラル」の対抗。このページがわかりやすい。
アメリカのリベラル(左派)とは】保守との違いと歴史をわかりやすく解説

liberal-arts-guide.com


 第3章 「アメリカ大統領」はどれだけ強大な存在か?(待鳥聡史) ・・・ アメリ憲法は①議会の暴走をいかに防ぐか→三権分立制、②州の連邦をいかに崩さないか→連邦政府性、で解決しようとしてきた。もともと大統領に期待されたのは議会のけん制と調整。20世紀になって連邦政府では扱えない問題が多くなって大統領の役割と権限が増え、行政官僚が増えた。議会と大統領、保守とリベラルの対立は政治の不信を招き、議会と連邦政府の信頼が低くなってきた。大統領はめだつが、権限は小さく、期待するほどのことはできない。

第2部 アメリカの経済
 第4章 アメリカの経済政策と経済学(土居丈朗) ・・・ アメリカの経済政策は経済学の考え方を忠実に踏まえながら実行する傾向がある。ということで1945年ブレトンウッズ体制以降に採用された経済学の開設。ちょっと古いが、佐和隆光「経済学とは何だろうか」(岩波新書)1982年が詳しい。
 第5章 アメリカ経済をめぐる3つの疑問(小林慶一郎) ・・・ なぜ極端な格差社会なのか、なぜ(経済の)自由主義が浸透しているのか、2008年の金融危機対応。自由主義の浸透の説明はアーレント「革命について」を使用。

第3部 アメリカの社会・文化
 第6章 「多様性の中の統一」は可能か?(渡辺靖) ・・・ 非白人(黒人、移民、先住民等)の歴史。統合のシンボルは、独立の精神、憲法、国旗、国歌など。人種のるつぼ、サラダボールの比喩は現実に適合しない。対外的にはアメリカ例外主義。
 第7章 「日系アメリカ人」の歴史(東栄一郎) ・・・ 19世紀半ばからの歴史。20世紀初頭のアジア人排斥、WW2の強制収容、1960年代のアジア系アメリカ人運動、80年代の強制収容補償(リドルス)運動とジャンパンバッシング。強制収容体験者は伝統の継承に不熱心だったので、以降の世代が文化継承に苦労。創造されたエスニック文化。日系が多様化し、日本のと関係は微妙。
<参考エントリー> 日系アメリカ人がみた1990年代のアメリカ。強制収容補償(リドルス)運動の影響が読み取れる。
デイル・フルタニ「ミステリー・クラブ事件簿」(集英社文庫)

 

 「日系アメリカ人」と日本の関係は、「在日コリアン」と韓国・朝鮮の関係としてとらえて比較するべき。

 

2020/10/13 渡辺靖編「現代アメリカ」(有斐閣)-2 2010年