odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

加茂利男/大西仁/石田徹/伊藤恭彦「現代政治学 新版」(有斐閣アルマ)-1

 初版が1998年で、新版が2003年。改定が繰り返され、最新版は2012年の第4版。章立てはほぼ同じ(一部差し換え)だが、事例が変わったと思う。できるだけ新しい版で読むことを推奨。

 

はじめに―政治学との「出会い」
序 章 政治学アイデンティティー ・・・ 政治学は、他学問との境界がはっきりしない体系のない学問(職業資格もなし)。でも、1.意思決定と行動の仕組みを明らかにする(政治の現実問題にコミットできる)、2.他の学問成果を生かせる、3.正義や共通善などの政治哲学が重要。

第1章 政治の世界 ・・・ 複数の利害関係者が互いのリソースを使って利益を図り不利益を避ける「ゲーム」は政治といえる。このとき法律や制度やルールのしばりがある。平等な結果にならないときはある。関係者が増えると社会関係をつなぐ権力があり、そのリーダーシップで結果が変わる。こういう政治の場所として国家(state)があり、市民(ctizen)は権利と義務をもって参加する。かつては国家間の政治でむき出しの暴力が使われたが、20世紀後半からは少なくなり国際政治というより世界政治になった(という認識は1998年ころのもので、21世紀にはふたたび国家や権力集団の武力行使が増えてきた)。

第2章 政治体制と変動 ・・・ 体制が維持できる条件は、正統性原理+構成員の同意+物理的強制力+制度+非公式的制度など。重要なのは正統性原理で、これが失われると政治変動が起きる(アーレント「革命について」参照)。体制を区別するのは、イデオロギー自由主義、民主主義、全体主義など。前2者の違いは画像を参照。現代自由主義(リベラリズム)では「国家権力による自由の諸条件の保障」を求め、福祉国家の前提になる。民主主義は直接と間接の二種類。もう一つの分類は議院内閣制(立法と行政の連携と緊張)と大統領制(権力分立を重視)。さらに政治文化で同質的と断片的で分ける場合も。これは一つの民族が大多数であるか、多民族があるかによる。

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 非自由民主主義体制は、全体主義ないし権威主義としてとらえることがある。このような政治体制は20世紀に様々な国で民主化された。国内の政治エリートが主導する改革、反対勢力が政府を崩壊させる転覆、政府と反対勢力が共同する転換にわけられる(東欧革命ではこの3パターンが同時進行。ソ連ハンガリールーマニアポーランドチェコが代表。それらの国家が21世紀には極右政権の監視国家に移行するという皮肉)。民主化の後は確立できるかが問題。また国際政治、国家間の政治でも体制があるとする見方がある。グローバル化で国家の壁がたやすく超えられることから、グローバルガバナンスが重要になってきた。

第3章 政治・経済・福祉 ・・・ 1945年のWW2以降、自由主義経済社会ではケインズ主義的福祉国家政策がとられた(福祉国家ナチスの戦争国家、社会主義国家に対抗するスローガン)。高度経済成長が前提であったが、低成長になると財政が悪化し、批判を浴びるようになる。主な論点は、1.低成長で財政悪化、2.少子高齢化で負担増、3.経済成長と環境破壊自然枯渇のジレンマ、4.発展途上国からの突き上げ、5.グローバリゼーション(企業が国家の枠を超えて、労使関係や国家の介入が困難)、6.サービスが画一的硬直的。

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第4章 政治制度と政治過程 ・・・ かつては立法・行政・司法の政府機能を見ていればよかったが、20世紀以降は政治に参加するアクターが増えたので、それらの動態を見ることも必要。なので、選挙、政党、利益集団、メディアなどの機能と動態まで分析しよう。市民運動も組織ベースの古いものから個人参加でイシューごとに集散する新しいものまで幅広くなってきた(というのは2003年の様子。

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それ以降のは、
笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-1 2016年
笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-2
2019/04/9 木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-1 2017年
木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-2
等で補完。

第5章 公共政策と行政 ・・・ 政治とは「社会の中で対立する利害や価値の対立と紛争を権力的に調停し解決する人間の営み」。政策とは「個人ないし集団が特定の価値を獲得・維持し、増大させるために意図する行動の案・方針・計画」。福祉国家になることで政府が肥大。行政の執行主体であるのが官僚。試験で選ばれ、専門訓練を受け、規則で秩序付けられた明確な権限をもち、文書主義で継続的業務を、ヒエラルキー的組織で行う。

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(まとめを書いてがっかりしてしまうのは2010年代の官僚は、政治家と独立して職務を全うするのではなく、官邸が人事権を握った結果、政府におもねる集団に化し、改ざん・隠蔽、サボタージュを繰り返すようになってしまったこと。それでいてごく少数の官僚は政治家に主導してこれらの行為を行う。また官僚によるヘイトスピーチが頻発。地方では公務員が削減されてサービスが低下。災害他の緊急時に全く機能しない。どうしようもないほどの堕落が起きている。)

 

 

2020/10/30 加茂利男/大西仁/石田徹/伊藤恭彦「現代政治学 新版」(有斐閣アルマ)-2 2003年