2025/09/05 弓削達「地中海世界 ギリシア・ローマの歴史 」(講談社学術文庫)-1 ギリシャの民主制は奴隷制と外国人排斥と植民地収奪で衰退する。 1973年の続き
後半はローマ編。あいにく俺はローマ帝国にあまり関心を持たない。なので、このエントリーは簡単に。

すでに同じ著者のローマに関する本は3つ読んでいたので、時代史は以下のエントリーを参考に。
2015/01/15 弓削達「世界の歴史05 ローマ帝国とキリスト教」(河出文庫)
2024/06/13 弓削達「ローマはなぜ滅んだか」(講談社現代新書) 1989年
2022/04/07 弓削達「ローマ 世界の都市の物語」(文春文庫) 1999年
本書(もとは講談社現代新書で1973年初出)と前後する時期に書かれているもの。なので、先に読んだ本の感想で、本書でメモしたことはすでにまとめていた。ローマ編はあまり注意深く読まなかったので、著者の主張は上のエントリーを参照すればよい。
いくつかをメモ。
・ギリシャの民主制は帝国と帝国の間にあり、適当な距離で離れていて侵略が難しく、比較的少人数で言葉を共通する人たちの共同体があるから成立したのだ、と考えた。
2016/03/28 村田数之亮/衣笠茂「世界の歴史04 ギリシャ」(河出文庫)
・これは今でも変わらない。ギリシャのポリス民主制は奴隷制と植民地収奪を前提にしていて、市民権(ほぼ参政権と同じ)をアテネ人が独占するようにした。その民主制でも少数が権力を独占し、市民の義務を放棄するようになって、数世代でダメになった。(前エントリー参照)
・一方、ローマもポリス民主制を取っていたが、占領地や併合地では地元住民に市民権を与え自治を認めていた(まあ、ローマから派遣された官僚の監視はあっただろうが)。それが長期的にポリス民主制を継続できた理由だと著者はいう。紀元前2世紀や1世紀には対外戦争も多かったが、卓越した軍人を輩出し、支配領域を拡大していった。
・紀元が変わるころに地中海世界全体に領土・属州を広げ、内乱や反乱を鎮めて帝国になる(シーザーの改革、ブルータスの裏切り、アントニウスの反乱のあと)。こうなるとポリス民主制では帝国を統治できない。皇帝と官僚の権力が強くなり、民会の権限は制限され、政治参加の自由が失われる。あとはお定まりの内紛、裏切り、反乱、跡目争いなどなど。帝国、専制、貴族制などのダメなところが全部出てくる。著者は帝国を支える共同体が衰退・解体することが帝国衰退の大きな理由とみている。支配層の格差の拡大、人口の移動、経済中心地の移動などが共同体を衰退させていった。(解説にあるように、にもかかわらずなぜローマ帝国は長続きしたか、の設問は重要そう。東西どちらのローマ帝国でも。)
〈参考エントリー〉
2022/04/06 井上浩一「生き残った帝国ビザンチン」(講談社現代新書) 1990年
2022/04/05 中谷功治「ビザンツ帝国」(中公新書) 2020年
江村洋「ハプスブルク家」(講談社現代新書
・ローマ帝国の宗教は供犠行為がもっとも神聖で重大。そこに参加することが異教徒にも求められた。参加していれば、異教徒は迫害・弾圧はされない(当時ローマにはユダヤ教徒も多数いた)。しかしキリスト教徒だけはローマの宗教の供犠行為に参加しない。頑強に拒んだ。だから迫害・弾圧された。
(戦中派の著者が一行記したように、供犠行為への参加強要は日本の国家神道に似ている。国家神道も国家主催の宗教行為に参加することを強制した。それを拒むと徹底的に弾圧した。)
・なぜローマは滅んだのか。「ローマはなぜ滅んだか」講談社現代新書を読もう。経済的な理由、社会体制の変化、人びとの移動などから答えを出すことも可能。でも著者が言うように奴隷制と民族差別を放置したことがもっとも重大な理由と俺も思う。
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