odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

マルグリッド・デュラス

マルグリッド・デュラス「愛人」(河出書房新社) 家族を憎んだ娘は他人の愛人になって感情を殺し肉体を嫌悪する。

70歳を過ぎた作家が自分の少女時代を回想する。最初は、自分の手元に残されている写真をみながら、家族のこと、生まれ故郷のことを思い出す。もともとは生誕70歳を記念する写真集をだすとかで、キャンプションを付けているうちに、エクリチュールが拡大して…

マルグリッド・デュラス「破壊しに、と彼女は言う」(河出文庫) 文章の抽象化をつきつめると、なにかまっしろなほとんど「虚」にいってしまう。

「狂人たちが集うホテルの1室を舞台に4人の登場人物が繰り広げる言葉の極限状況。やがて明らかにされる放浪の民の悲劇、18歳の少女の内に秘められた凶暴な野性の目覚め…。「『破壊しに』には10通りの読みかたがある」とデュラス自身が語るように、本書は小説…

マルグリッド・デュラス「モデラート・カンタービレ」(河出文庫) 情痴殺人事件から十日間、二人の男女が夕暮れに15分ほどバーでかみ合わない会話をするだけ。人は感性的に狂う。

1992年7月の日曜日に古本屋で買って、途中中華料理屋によって夕飯を食いながら読んで、その夜のうちに読み終えたのだった。本の内容は忘れていたが、このときの雰囲気というか場末の料理屋の印象が妙に残っている。まあ、内容とは全然関係ないことだけど。 …

マルグリッド・デュラス「静かな生活」(講談社文庫) 期待と倦怠と無関心の入り混じったどうしようもない人間たちの小説。

フランスの田舎で農業を営む一家。叔父やいとこなど複数の親族が住んでいる。主人公フランシーヌ(ほとんどそう呼ばれることはない)は、ティエーヌと婚約している。ティエーヌは弟ニコラとは仲がよくない。そのうち、ニコラは馬にけられるという事故を起こ…