2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧
対象にしているのは、7-8世紀。天皇家を頂点におく制度はできていて、大和朝廷の権力は東国(今の関東)から朝鮮半島にまで及び、仏教や鉄製農具はすでに伝わっていたがアーリーアダプターだけのもので、地方に行けば数世紀前とほぼ同じ。奈良盆地とその周辺…
高校の日本史で最初のつまづきになるのは、奈良時代(本書の記述は704-771年)。法律や官位が煩雑になり、徴税や戸籍の仕組みが細かくなり、人名がたくさんでてくる。およそ1200-1300年前のこととなると、現在に引き付けて考えることもできず、それを数か月…
770-967年までの200年を扱う。ここも高校の日本史の躓きの時期であって、延々と宮中のできごとが語られる。時間は過ぎているのに、事態はほとんど変化がない。そのうえ、宮中の政治は事なかれの棚あげで、出る杭は打ち、スキャンダルはフレームアップし、談…
前回読んだのを読み直し。 いわゆる平安時代は800年ごろから1200年ごろまでの400年間続く。さらに3つの期(前期・中期・後期)にわけるようだ。この本で扱っている966-1068年はほぼ中期にあたり、平安文化の最盛期とみていいのではないかしら。すなわち8世…
王朝貴族はとてつもないエリート。当時の列島の人口は1000~1500万人と推定されているが、そのうち公卿は20人、天皇に拝謁できる殿上人は20~100人くらい。この位を得られるのは特定の氏だけで、その他の貴族は数百のポストを獲得するために、右往左往するこ…
平家の滅亡は、「平家物語」「源平盛衰記」などの文学によってよく知られている。それらから派生したさまざまなエンターテインメントによって主要な人物は明確なキャラがつくられ、日本人のある種の典型とされている。しかし史料を検討すると、文学は後から…
平安末期が乱世になるのは、「方丈記」などで知っていたが、その理由がわかった。 「平安初期(西暦820年)の嵯峨天皇の頃に最高気温(25.9℃)を記録しました。一番寒かったのは、平清盛の生きた平安後期(11~12世紀,約24.0℃)で、聖徳太子の活躍した飛鳥…
2023/06/20 五味文彦「大系日本の歴史5 鎌倉と京」(小学館ライブラリー)-1 気候変動による寒冷化によって平安末期は乱世になった 1988年の続き 鎌倉幕府が政権を担当するようになる13世紀には温暖になったのだろう。生産が上がって治安は穏やかになる。そ…
1333-1409年までの14世紀を扱う。ああ、もっと面白く記述できるのに、単調な仕上がりになってしまった。その理由はこの時代の描くのに京都中心にしたこと。そのために、後醍醐天皇と尊氏との正統争いに矮小化されてしまった。これらの関係者がいなくなったあ…
先に杉山博「日本の歴史11 戦国大名」(中公文庫)を読んだ。そのために前掲書のエントリーで疑問にしたことの説明がこちらにあった。読む順番をコントロールできないので(入手順に読むから)、そういうこともある。本来なら第9巻の「南北朝の動乱」を読ん…
前巻である杉山博「日本の歴史11 戦国大名」(中公文庫)の続き。文庫版は1974年だが、単行本では1960年代初頭の初出。 1550-1600年までの天下統一運動のまとめ。主要登場人物は織田信長に豊臣秀吉、そして徳川家康。この国の人がとても好きな時代と人々。自…
前巻「日本の歴史12 天下一統」に続いて、1600-50年ころを記述。前半の主人公は徳川家康。後半になると、特長的な個人は登場しない。強烈な個性を持つ人物の栄枯盛衰が、組織や制度の変革にとって変えられる過程に照応する。これは中世が近代の中央集権制・…
1945年からの占領期に、占領軍は日本の近代化を阻むものとして地主と大規模土地所有制を解体することにした。そのため、小作による農民運動がさかんになった(山口武秀「常東から三里塚へ」(三一新書))。なので当時は革新政党の支持が高かった。では新し…
前の巻になる佐々木潤之介「日本の歴史15 大名と百姓」(中公文庫) は大名と農村から17世紀を見たが、ここでは都市と商人から17世紀をみる。 徳川家光が死んだ1651年から吉宗が将軍になる1716年まで。すでに国内統治体制はでき、鎖国で外国との交通も閉じた…
1200~1210年に中世ドイツ語で書かれた古典を1970年代の日本語訳で読むのは、たとえば英訳された「平家物語」を読むようなものか。日本中世の武士の作法や暮らしぶりは他の本や映画などで想像できるのであるが、中世ドイツとなるとはてさて。そこでワーグナ…
2023/06/06 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール」(郁文堂)-1 13世紀初頭に成立したドイツ騎士物語の最高峰 1210年の続き 第9章「パルチヴァールとトレフリツェント」の章で、ワーグナー版ではあいまいだったことがすっかり開明する。 …
2023/06/05 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール」(郁文堂)-2 ワーグナー版「パルジファル」と同じ話かと思ったら全然違った 1210年の続き パルチヴァールが放浪の旅を続けているとき、ガーヴァーンが魔術師クリンショルの作った魔法の…
2023/06/03 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール」(郁文堂)-3 パルチヴァールは聖杯城に入城するが、クンドリーもクンリグゾルも関係なかった 1210年の続き ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハの生涯は詳しいことはわからないらしい…
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール Parcival」(郁文堂)をようやく読んだので、勢いでワーグナーの舞台神聖祝典劇「パルジファル」の解説書を読む(おそらく原著1982年で、邦訳は1988年)。リブレットの他、成立史、上演史、批評などが…