odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ベートーヴェン

金聖響「ベートーヴェンの交響曲」(講談社現代新書) 21世紀になって刷新されたベートーヴェン像に基づく解説。指揮者も暴君や巨匠からファシリテーターやプロジェクトマネージャーに変わる。

玉木正之(1952年生)が指揮者・金聖響(1970年生)にインタビューして交響曲の魅力を語るという企画第1弾。 ベートーヴェンの交響曲はクラシック音楽のアルファであり、オメガ。なので、個々の曲ごとに傾聴することにする。以下では気になる言葉をメモした…

田村和紀夫「交響曲入門」(講談社選書メチエ) 古典派交響曲の主題は劇の主人公であり、交響曲は全体として人間を表現している。音楽の形式化とそれからの逸脱を探求する交響曲の二世紀。

クラシック音楽を聴くようになったのは20歳に近くなってからだから、聞きとおすことに困難があったのをよく覚えている。友人と酒を飲みながら、ブラームスの交響曲全4曲をいっきに聞いた。友人が「ここすごいだろ」といっても、初めて聞く音楽だったので、…

ルートヴィッヒ・ベートーヴェン「音楽ノート」(岩波文庫) 「苦悩する天才」像でまとめられているが、ユーモア好きで小言ばかりの人間臭いところも散見。

ベートーヴェンは、当時の人と同じく手紙をたくさん出していて、それだけで一冊の本になるくらいの量になる。それとは別に、手帳や楽譜などの書き込みなどがたくさん残っている。というのも、耳疾疾患のために難聴になり、晩年は筆談になった。そこに書いて…

青木やよひ「ベートーヴェン・不滅の恋人」(河出文庫) ベートーヴェンの創作意欲が高まるときは彼に恋人ができたとき、創作が減るのは金がないとき。

1826年3月26日にベートーヴェンが56歳で亡くなった時、唯一の資産といえる株券が見つからなくなっていた。部屋を探したところ秘密の引き出しから発見され、そこに日付と宛名のない手紙3通と女性の肖像画2枚もあった。手紙は熱烈な自筆の恋文(ただし、相手を…

アラン「音楽家訪問」(岩波文庫) ベートーヴェンのヴァイオリンソナタをサンプルにして調性の形而上学を語る。

パリの郊外でもあるような一軒家に住むミッシェルのところに、「わたし(アラン)」は16歳のピアニストであるクリスチーヌとともに赴く。ミッシェルはピアノの調律をすると、ヴァイオリンを手にし、クリスチーヌとベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを順…

テオドール・アドルノ「ベートーヴェン 音楽の哲学」(作品社) 「ベートーヴェンに関する哲学的仕事」のための断片集。素人にはアドルノの論を抽出・再構築するのは無理だった。

編者解説によると、アドルノには「ベートーヴェンに関する哲学的仕事」をまとめる構想があったらしい。大量のメモが書かれた。いくつかは短い文章になったものがあり、「美の理論」「楽興の時」などに収録された。それらは「哲学的仕事」を網羅するまでに至…

諸井三郎「ベートーベン」(新潮文庫) 戦前に活躍した邦人作曲家はベートーヴェンの晩年様式を「宇宙的人間の霊的感情の映像」とみる。

「ベートーヴェンは、一生を通じて貧困、失恋、耳疾、肉親の問題などさまざまな苦しみと戦いながら、音楽史上に燦然と輝く数多くの傑作を創造した。苦渋の生涯から生まれたそれらの音楽は、人々の心に生きる勇気を与える。本書は、作曲家として、また教育者…

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー「音と言葉」(新潮文庫) 「芸術」こそが世界統一(あるいは民族統一)の中心になる信念は全体主義運動に敗北する。

クラシック音楽を聴き始めたのが1979年5月。何も知らないままに聞き出し、半年後にはフルトヴェングラーの名を知っていた。その演奏を聴く機会はほとんどなかったが。そして突発的にこの文庫が発売された。さっそく読んでみたが、当時の学力では無理だった。…

フリーダ・ナイト「ベートーヴェンと変革の時代」(法政大学出版局) 20世紀半ばの実証主義研究でベートーヴェン像が変わりつつあるときの評伝。

訳者あとがきによると、たとえばロマン・ロランのような過去の一時代にあったベートーヴェンの伝記と比較すると偉大ではない、ということだ。もちろんこれがいいがかりなのは、作者はそのような偉大で巨大な天才の人物像を描こうという気持ちはさらさらないこ…

ロマン・ロラン「ベートーヴェンの生涯」(岩波文庫) 苦悩する天才、苦悩の果てに勝利を見出す人格の完成者、市民社会のモラリスト、普遍原理の探索者としてのベートーヴェン像を作った古典。

1902年に書かれたベートーヴェンの伝記、というかベートーヴェンに関するエッセイ。このとき録音機器は発明されていたものの商業化はまだまだであって、音楽はコンサートホールで聞くか、譜面を読むか、自分で演奏するか、という時代。交響曲第7番を実際の音…