odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

野口米次郎

野口米次郎「野口米次郎定本詩集 第3巻」(友文社)「印度詩集」-1 戦後忘れられた詩人の誰も読まない詩集を復刻。

個人的な思い出から。敗戦後すぐ(1947年)に出版された本は、伯父が買ったものだ。後に大学教授になった伯父は独身時代に集めた本を兄の家に大量に残していた。自分が子供のころに手元に移動したのか(処分したのか)、ほとんどの本はなくなったが、数冊が…

野口米次郎「野口米次郎定本詩集 第3巻」(友文社)「印度詩集」-2 帝国臣民は「友好国」を訪問して「大東亜共栄圏」の肯定する。

2023/02/18 野口米次郎「野口米次郎定本詩集 第3巻」(友文社)「印度詩集」-1 1947年の続き ではテキストを読んでいこう。参考にできるのは本書のみ。他の資料は一切見ないで、書かれていることだけで感想を書いていく(専門家ではないので、そこまでの手間…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 01

ベンガル美人 一度彼女を見た、しばしば彼女を見た。彼女は消えたが、わが夕の空に残した輝きの一つ星・・・その額に印さる小さき紅の符号。黄金の縁取れる水色のサリー身に纏い、椅子に横たわる彼女をわれは見た、恋を夢見る一匹の蛇。微笑む彼女を見た・・…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 02

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 01の続き アジャンダ壁画題賛 何と言う気違いじみた生の追求だ、幸福の世界を称える飾りなき歌、彼らは今日の法悦に全身を供える、自分共は人間の歴史から分離して、花や鳥の生活に帰へる。直截に、衝動的に、自由に、彼ら…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 03

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 02の続き 賢い人は語るらく 「存在」の戸は錆びたり、開け放ち、君の心に狂喜の風を吹き入れよ・・・風だ、風だ、風だ。風に時代の塵を一掃させ、風に吹き飛ばされて、人生を改まるという世界の涯へ。廃墟を見ること長きに…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 04

雨のラクノウ 秋雨が降る、歌の遺産を心の酒杯にそそぐ、妖魔は器用で愛すべし、お前は糸を紡いで、銀針金の小さな籠を編む。猿はお尻と額を赤く塗る、樹下の聖者を気取るぶら提灯、或は枝から枝へと橋をかける虹。花は恋の格子戸により添って、恥ずかしそう…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 05

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 04の続き 真夜中の散歩 甘い強い花の香気が鼻をつく。真暗でも何かしらない花が一面に咲いていることが知れる。道は広いか狭いか分らない・・・小さい柔軟でしかも粘り強い鳶のような雑草が、両側を覆っているらしい。私は…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 06 タゴール叙情詩 劇詩

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 05の続き そよ吹く四月よ漂泊ふ四月よ そよ吹く四月よ、漂泊ふ四月よ、 .お前の音楽の律動で私を揺さぶれ。甘い驚愕で私に触れ、お前の妖術で私の枝を慄かせよ。お前は路傍の眠りから私を驚かし、私は人生の夢から目覚めさ…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 07 タゴール「アマとヴァナヤカ(劇詩)」

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 06 タゴール叙情詩 劇詩の続き アマとヴァナヤカ(劇詩) 戦場の一室、アマは父ヴァナヤカに出会う。 ヴァナヤカ回教徒の夫を恐れない無恥の浮気女め。お前が呼ぶお父さんは我でない。 アマあなたは不誠実にも私の夫をお殺し…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 08 タゴール「ソマカとリトヴィク(劇詩)」

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 07 タゴール「アマとヴァナヤカ(劇詩)」の続き ソマカとリトヴィク(劇詩) ソマカ王は幽霊戦車に乗って天国へ急ぐ途中、路傍に他の幽霊団を見る。そのなかに嘗てリトヴィク王室の高僧であったリトヴィクがいる。 声王様、何…

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 09 タゴール「母の祈願(劇詩)」

野口米次郎定本詩集第3巻 印度詩集 08 タゴール「ソマカとリトヴィク(劇詩)」の続き 母の祈願(劇詩) カウラワの盲目王ドリタラシュトラと女王ガンダリの子ヅュチョダナは、従兄弟であるバンダバの諸王から領土をいかさま手段によって奪った。 ドリタラシュト…