odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ジョーク

日本古典「中世なぞなぞ集」(岩波文庫) 中世日本の知識人階級の言語遊戯集。偏見や差別がないのはこの国の小噺集ではとても珍しい。

「なぞ」とは「何ぞ」という問いかけの言葉に由来する、とのこと。本書で言えば「天狗のなみだ、何ぞ」と問いかけ、相手はその答えを考えなければならない。こういう言語遊戯の由来や起源を詮索しても詮無いことであるが、古代からすでにあるという。もとは…

浜田義一郎「にっぽん小咄大全」(ちくま文庫) 日本の小噺はシステムや共同体にこもってぬるま湯にあるものが、その外にいるものを馬鹿にし、虚仮にし、嘲笑するものばかり。日本人の愚劣さ、度し難さはこういうところに現れる。

言文一致にかんする面白い記事を読んだ。2018年8月11日朝日新聞書評欄の座談会。すなわち、福沢諭吉が英国のスピーチをみて感激。スピーチで社会をうごかすために1875年5月1日に三田演説館を作った。福沢の演説を見た講談師の松林伯圓(しょうりんはくえん)…

三浦靱郎「ユダヤ笑話集」(現代教養文庫) 差別を受けてきた人たちの秀逸なジョーク集。だがイスラエル建国以降、ユダヤジョークは死んだ。

関楠生「わんぱくジョーク」(河出文庫)やポケットジョーク「1.禁断のユーモア」(角川文庫)がネーション―ステートを持っている側の笑いであるとすると、こちらのジョーク集はネーション―ステートを持たない側の笑い(強者の笑いはアレン・スミス「いたず…

平井吉夫「スターリン・ジョーク」(河出文庫) 監視国家で作られたジョーク集の傑作。スターリン時代のソ連は21世紀の日本みたい。

俺が記憶している1980年までは、ソ連と東欧の情報はほとんど入らなかった。漏れ伝わるところからわかるのは、硬直した官僚制と不合理で商品と貨幣不足で停滞した社会主義経済体制、すさまじい監視と社会運動の弾圧くらいだった。映像で伝わるのは政治家や芸…

関楠生「わんぱくジョーク」(河出文庫) ドイツのジョークは理詰めの笑い。問いかけをした人の文脈やマナーを無視するが別のルールに則っているのが笑いを生む。

1986年に文庫化された小話集。原本は1977年に刊行されたドイツのジョーク集。タイトルには子供がついているけれど(ドイツ語版も)、他のジョークも入っている。 複数回目の読み直しなので、爆笑するまでにはいかなかった。ジョークの落しに笑うよりも、別の…

ボブ・ウォード「宇宙はジョークでいっぱい」(角川文庫) アポロ計画のストレスをジョークで発散。黒人差別と女性差別は「ジョーク」にされていた。

1980年ごろに出版されたジョーク集。この本が翻訳されたのは、NASAを見学した訳者が見つけたのがきっかけだという。NASAの宇宙計画のファン、マニアであった訳者だからこそ、このようなインサイダー向けの本をみつけたのだし、当時進行中のスペース・シャト…

坂根巌夫「遊びの博物誌 1・2」(朝日文庫) ファインアートとカウンターアートの間にある広大な領域に科学とテクノロジーのアートを見出す。

文庫は1985年に出たが、もとは1975年から翌年にかけて朝日新聞日曜版に連載されたもの。楽しんで読んでいたので、紙面を覚えています。 「遊び」というからもちろん玩具も出てくるけど、自分が楽しかったのは西洋近世と日本の江戸時代のだまし絵やトリックア…

開高健「食卓は笑う」(新潮社) 東西南北を問わず食卓の座談は必須、ジョークを披露し座を盛り上げなければならない。

戦後の海外映画を見る楽しみの一つが、レストランの食事場面。着飾った紳士淑女がワインやシャンペンのグラスを取り、銀のフォークやナイフで大きな皿にきれいに並べられた肉や魚を食べ、バターをパンにつける。こういう西洋の上流階級の食事の風景は、この…

ロバート・S・メンチン「奇妙な遺言100」(ちくま文庫) 西洋の遺産配分では故人の遺志が尊重され、日本では残された集団の意思が優先される。

古今の奇妙な遺言をあつめた。 奇想天外な例がある。50年ごとの特別な日にプディングやパンを焼いて貧しい人に配布しろとか、売れない俳優が来たら靴一足を恵む基金にしろとか、頭蓋骨を残して「ハムレット」を上演するときの小道具に使えとか。あるいは、「…

星新一「進化した猿たち 1・2・3」(ハヤカワ文庫、新潮文庫) アメリカのヒトコマ漫画収集家は分類にいそしむ。マジョリティの良識派差別意識をもっていた。

どんなにつまらぬ、くだらぬものでもたくさん集めれば意味が生まれてくる、ということをいったのは荒俣宏さんだったか。その典型がエドワード・モースのコレクションで、明治前期の日本で使われたものを片っ端からコレクションしていてそのかず数万点。当時…

アレン・スミス「いたずらの天才」(文春文庫) いたずらと犯罪との境。かつてはいたずらで済んだことが21世紀には犯罪になる場合がある。

1953年初出の「The Compleat Practical Joker」は江戸川乱歩の中編「空気男とペテン師」1959年のネタ本になった。小説に出てくるプラクティカル・ジョーク(いたずら)のいくつかは、この「いたずらの天才」に出てくる。翻訳は1963年だったようで(文庫は197…

小林信彦「日本の喜劇人」(新潮文庫) 1930-1970年代の日本の喜劇役者を言葉で記録する試み。アメリカの喜劇役者と比較するのでとても辛口。

自分の持っているCDに川上音二郎一座の録音がある。これは、パリに巡業に出た川上一座の演目を高座のあいまをみて収録したもの。録音された年はなんと1900年。なにしろ明治の終わりの日本人が喋り、歌うのが聞けるという点で貴重きわまりない(SPはミント状…

早坂隆「世界の紛争地ジョーク集」(中公新書) 社会の監視や警備が厳しいほど、ジョークや小話がさえてくるが、人間は度し難いといういやな気分を味わう

海外にでかけてパーティや居酒屋によるごとに、人々のジョークや小話、アネクドートを採集する博物学者に開高健がいた。「オーパ」や「もっと遠く」「もっと広く」の旅行で集めたジョークや小話は「食卓は笑う」(新潮社) にまとめられている。ほかのエッセ…

パイソンズ「モンティ・パイソン正伝」(白夜書房) 20代で成功したコメディアンのスノッブな回想本。

モンティ・パイソンの全番組をそれこそ暗記するくらいに繰り返し見ると、ものたりなくなって(DVD7枚で28時間分くらいか)、それ以外のスケッチもみたくなる。そうすると、4つの映画にドイツ語版、アメリカ公演、結成30周年記念番組まであつめることになり…

須田泰成「モンティ・パイソン大全」(洋泉社) スケッチのセリフを丸暗記するマニアのための番組情報百科。

1975年あたりから親の目を盗んで、深夜にテレビを見ていた。それは「11PM」とか「独占!男の時間」とか、つまりはヌードを見るためだった。裸が出ていない時にはチャンネルを回して(リモコンのないころ)、裏番組を探す。そのときに「モンティ・パイソン…

ポケットジョーク「1.禁断のユーモア」(角川文庫)

落語に興味を覚えることはなかったが、この種の小話は大好きだ。たぶん、短時間で一気にオチをつけるそのスピード感と知的インスピレーションに惹かれるからだろう。長時間のコメディよりも連続するコントのほうが好きなのだ。長尺のコメディ映画はあんまり…

いかりや長介「だめだこりゃ」(新潮文庫)

餓鬼のころに「八時だよ!全員集合」を欠かさず見ていたのだよなあ。最近のバラエティ番組でドリフターズのメンバーが結成当時から上記の番組制作の裏話を話すようになったなあ。wikipedhiaの「ドリフターズ」とメンバーのページは充実していて、読むだけでも…