odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ロシア革命

エイゼンシュタイン「映画の弁証法」(角川文庫) 20世紀前半のもっとも偉大な映画監督の一人で、モンタージュ理論の確立者。スターリニズム下の論文や講演を収録。

20世紀前半のもっとも偉大な映画監督の一人で、モンタージュ理論の確立者。彼の映画理論に関する論文や講演などを収録したもの。1953年初版で、自分の持っているのは1989年の第9刷。これも入手しにくくなっていて、たとえばWikipediaのエイゼンシュタインの…

レフ・トロツキー「裏切られた革命」(岩波文庫)-2 トロツキーは自由選挙、複数政党制、経済民主主義を提案する。すべては1917-23年の「革命」時代を取り戻すために。

2014/12/03 レフ・トロツキー「裏切られた革命」(岩波文庫)-1に続けて後半。 7 家庭、青年、文化 ・・・ プロレタリア革命はあらゆる差別(性、職業、民族その他)から解放するはずであった。なるほど蜂起の一瞬には解放のきざしはあったであろう。しかし…

レフ・トロツキー「裏切られた革命」(岩波文庫)-1 1928年国外追放1932年市民権剥奪となったトロツキーが1936年に書いたスターリン時代のソ連批判。

レーニン死後、スターリンとの権力闘争に敗れ、1928年国外追放1932年市民権剥奪となったトロツキーが1936年に書いたスターリン時代のソ連批判。亡命後はイタリアとドイツと日本のファシズムの勃興があり、著者はそれらの帝国主義・排外主義・全体主義などを…

エドワード・H・カー「ロシア革命の考察」(みすず書房) 主張はあいまいだが、計画経済はレッセ・フェールの自由市場経済の不備を克服する優れた仕組みといっているよう。

1950-60年代の講演や書評を並べたもの。大著の「ソヴェト・ロシア史」が進行中で、雑誌に国際関係の論文を多数発表している時期。おりしもソ連は世界第2位のGNPであり、冷戦のさなかで、第三世界に多額の援助を多数行っているものの、国内情勢はほとんど外に…

エドワード・H・カー「ロシア革命」(岩波現代選書) 1917年の帝政崩壊から1929年のスターリン体制確立まで。ソ連があった時代の古い研究書。

「革命」がいつ始まり、いつ終わったかの合意をとることは難しい。この小さな本では、1917年の帝政崩壊から1929年のスターリン体制確立までを扱っている。ほかの人であれば1905年の血の日曜日を開始とするだろうし(トロツキー「裏切られた革命」などがそう…

ジョン・リード「世界をゆるがした十日間 下」(岩波文庫) 10月革命時のボリシェヴィキの暴力はのちの共産党政権の問題を予感させる。

2014/11/27 ジョン・リード「世界をゆるがした十日間 上」(岩波文庫) の続き。 ロシア革命といっても10月革命の「十日間」ですべてが決したわけではない。その前後にも、さまざまな重要な出来事があり、人々が右往左往しながら物事を決めていった。その期間…

ジョン・リード「世界をゆるがした十日間 上」(岩波文庫) 1917年10月のペトログラードにいたアメリカ人ジャーナリストの記録。一次資料が豊富に掲載。

ジョン・リードは1887年生まれのアメリカ人。1917年の2月革命の報を聞き、ロシアに向けて8月に出発。彼はアメリカの社会党員でジャーナリストの実績を持っていたので、ボリシェヴィキに受け入れられる。ここでは、10月革命の現場であるペトログラードにいて…

レーニン「国家と革命」(国民文庫) 抑圧体制を打倒するには、「武装した労働者」が蜂起し、国家の搾取構造に寄生する搾取者を一掃しなければならない、のだそう。

19世紀後半、工業化によって資本主義がヨーロッパを覆う。機械の導入は生産性を向上し、賃金を上げるはずであったが、資本家や経営者は労働者の要求を拒んだ。労働環境は劣悪で病気にかかりやすく、事故が多発する危険な場所である。そのうえ政府は住宅問題…

松田道雄「世界の歴史22 ロシアの革命」(河出文庫) ロシア帝室の政治・経済政策にほとんど触れないロシアの革命家と党派の歴史。

もとは1974年初出で、1990年に文庫化された。著者は小児科医で、育児の本で有名。彼の原作をもとに商業映画もつくられたくらい。一方、ロシア革命の研究家でもあるらしく、いくつか著作があるようだ。このあとがきによると、書き手がほかにいなくてお鉢が回…

ムスチスラフ・ロストロポーヴィチ「ロシア・音楽・自由」(みすず書房) 全体主義の不正と監視に怒る自由主義者がソ連の市民権を剥奪されアメリカに亡命するまで。

ロストロポーヴィチとヴィシネフスカヤの夫妻のインタビュー。はっきりかいていないが、1978-81年にかけて行われた複数のインタビュ―のまとめと思う。1983年初出で、翻訳は1987年。これらの年は重要なので、あとで振り返る。 ロストロポーヴィチは1927年アゼ…

フレシチョフ「スターリン批判」(講談社学術文庫) 収容所群島の問題を「個人崇拝」に矮小化して共産党を延命させた1956年の歴史的演説。

1953年スターリン死去(謀殺といううわさもある。真偽は不明)。そのあと、党幹部には反スターリンの気運が起こるが、しかし主力ではない。一方、収容所の囚人たちが帰還するようになり、無実で獄中にとらわれたり銃殺・餓死した人がいたことが知られるよう…

マルクス・エンゲルス・レーニン研究所「スターリン小伝」(国民文庫) 官製の伝記(1951年初出)がいかに無味乾燥なもので、いかにうそをついているかがわかる格好の本。

1951年にソ連で書かれた伝記を1953年に邦訳・刊行し、1965年に再刊したもの。伝記は大祖国戦争終結(1945年)までで、当然のことながらその死については書かれていない。スターリン批判が1956年にあったにもかかわらず、この国では1965年に再版が出ていること…

レフ・トロツキー「レーニン」(中公文庫) 「革命時のレーニンとの私的つながりを、自分自身の重要性を誇張し、他の参加者を第二の地位に落とすような筆致」by E・H・カー

「若きトロツキーが自分の目に映じたレーニンを生き生きと描く。ロシア革命の内側を、臨場感あふれる筆致で伝えている。レーニンに対する熱い共感とともに、トロツキーとの感性の違いが浮かび上がってくるのも興味深い。」 2001年に中公文庫で再刊されたもの…

レフ・トロツキー「永続革命論」(光文社文庫) ターリンとの政争に敗れ、本人不在で行われた裁判への反駁。自分はレーニンに忠実だったという弁明。

「自らが発見した理論と法則によって権力を握り、指導者としてロシア革命を勝利に導いたのち、その理論と法則ゆえに最大級の異端として、もろとも歴史から葬り去られたトロツキーの革命理論が現代に甦る。付録として本邦初訳の「レーニンとの意見の相違」ほ…

クリストファー・ヒル「レーニンとロシア革命」(岩波新書) スターリン存命で鉄のカーテン前の1947年の啓蒙書。戦争同士国だったのでソ連に好意的。

原著は1947年にイギリスで刊行されたもの。歴史の出来事をある特定の個人に焦点を当てて記述しようというコンセプトのもので、これ以外にはナポレオンとフランス革命などというのも岩波新書に翻訳されていた。まだ高等教育を受ける人が少なく、一方大学進学…

レーニン「帝国主義」(国民文庫) 1917年初出の資本主義のグローバリゼーション批判。

1917年初出の資本主義のグローバリゼーション批判の書物だった。この時期レーニンはまだスイスかパリにいてロシアの暴動ないし革命を傍観している状況だった。なので、このような文章を書くことができた。 いくつかの批判は21世紀初頭であっても通じている。…

レーニン「共産主義における左翼小児病」(国民文庫) 闘うべきときに戦わない「日和見」と、闘う必要のないときに戦う「跳ね上がり」の左翼小児病。党と指導者の権威を高めるための「理論」。

左翼小児病というのは、闘うべきときに戦わない「日和見」と、闘う必要のないときに戦う「跳ね上がり」のふたつ。では、どのようなときに戦い、あるいは戦いを回避するかは、共産主義理論を正確に理解し、実践経験を積んだ者の指導による必要がある(具体例…

荒畑寒村「ロシア革命運動の曙」(岩波新書) 19世紀ロシア革命運動の様子。著者はナロードニキに同情的で、ボルシェヴィキには批判的。

松田道雄「世界の歴史22 ロシアの革命」(河出文庫)、クリストファー・ヒル「レーニンとロシア革命」(岩波新書)、エドワード・H・カー「ロシア革命」(岩波現代選書)、レフ・トロツキー「ロシア革命史」(岩波文庫)あたりが自分の読んだロシア革命の本…