odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

日本史

與那覇潤「中国化する日本」(文芸春秋社)-1

最初に近世にはいったのはヨーロッパではなくて(まずそこで驚きになる)、イスラムであるが続いて宋時代の中国が近世を迎えた。ここで「な、なんだって」と絶叫したくなるが、それにとどまらない。いち早く近世にはいった中国は「中国化」していき、近隣地…

與那覇潤「中国化する日本」(文芸春秋社)-2

2021/04/13 與那覇潤「中国化する日本」(文芸春秋社)-1 2010年の続き 「江戸時代化」という概念でみえてくるのはたくさんあるので、概要を紹介。基本的には「中国化」の真逆なありかた。したがって、1.権威と権力の分離: 天皇の権威と権力保有者が別。…

北島正元「日本の歴史18 幕藩制の苦悶」(中公文庫)-1

1780年から1840年ころまで。時代小説、時代劇などはだいたいこの時代を扱う。これらのフィクションを通じて日本のいにしえのイメージが形成されている。町民の仲睦まじい清貧な暮らしに、庶民思いの大名や老中、利権をむさぼる悪代官に悪商人というもの。そ…

北島正元「日本の歴史18 幕藩制の苦悶」(中公文庫)-2

2021/04/06 小西四郎「日本の歴史19 開国と攘夷」(中公文庫) の続き この時代に起きた政治的な事件として、蛮社の獄1839年と大塩平八郎の乱1837年が有名。いずれも現政府によって徹底的に弾圧され、首謀者は自死を選ばされる。このような大衆嫌悪・民衆嫌…

井上清「日本の歴史20 明治維新」(中公文庫)-1

本書では、大政奉還から西南の役までの10年間を扱う。通常、映画やドラマで「明治維新」を扱うときは大政奉還までで、「封建制力による人民の圧政を主に西国の士族が打倒(ここで「革命」は使わない)した」で終わりにする。しかし、歴史はとどまらないので…

井上清「日本の歴史20 明治維新」(中公文庫)-2

2021/04/05 井上清「日本の歴史20 明治維新」(中公文庫)-1 の続き 明治のゼロ年代で注目しなけらばならないのは、征韓論。明治政府は開国を実行したが、それは幕府時代からの諸外国の圧力、影響にあったため。英仏は日本を領土化しようとはしなかったが(俺…

笠原英彦「明治天皇」(中公新書)

飛鳥井雅道「明治大帝」(ちくま学芸文庫)を読んだのが20年近く前。明治天皇の事績を忘れてしまったので、今度は別書を読む。 明治天皇は1852年生まれ1912年没。享年60歳。外国との接触を極度に恐れる孝明天皇の子として生まれる。1840-42…

色川大吉「日本の歴史21 近代国家の出発」(中公文庫)-1

徳川幕府をクーデターで打倒した下級武士連中。「明治維新」と御大層な名代をあげたが、さっそく二派に分裂して、永久革命志向の西郷派を弾圧、殲滅する。それと同時に、「維新」の元勲として大政治家であった大久保、桂が死去して、リーダーを失ったのであ…

色川大吉「日本の歴史21 近代国家の出発」(中公文庫)-2

2021/03/30 色川大吉「日本の歴史21 近代国家の出発」(中公文庫)-1 の続き この時代に西洋諸国が日本に介入することが少なかったのは、ヨーロッパでの帝国主義競争が激しくなったため。英ロ、普仏の間に戦争があり、植民地での紛争も頻繁に起きていた。そ…

井上幸治「秩父事件」(中公新書)

日本史を勉強していて困惑するのは、市民蜂起がほとんど現れないこと。なるほど日露戦争の停戦協定後の暴動や米騒動、1970年の国際反戦デーなどが散見されるが、これらは一時的な騒乱で組織もリーダーもない。警察や軍隊が出動するとすぐに収まった。そうす…

隅谷三喜男「日本の歴史22 大日本帝国の試練」(中公文庫)-1

大日本帝国憲法発布(1889年)から明治天皇の死(1912年)まで。だいたい司馬遼太郎「坂の上の雲」と一致する時代を描いているが、司馬の小説は記述漏れが多く、小説の通りに近代国家が強化されたとみてはならない。多くの保守論陣はこの時代を懐かしむので…

隅谷三喜男「日本の歴史22 大日本帝国の試練」(中公文庫)-2

2021/03/25 隅谷三喜男「日本の歴史22 大日本帝国の試練」(中公文庫)-1 の続き 明治維新のあと、絶対君主国家を作りたいと思う士族グループ(藩閥)は、工業化を目指すが、そのための資金がない。そこで国民の大多数である農民から税金を取り上げて、工業…

今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1

1913年から1925年にかけて。大正時代を扱う。タイトルは「大正デモクラシー」であるが、そこにフォーカスしてこの時代を見るのは危険。21世紀の10年代の言葉でいえば、日本が「ネトウヨ化」していく過程となる。すなわち、政・官・財がそろってネトウヨ化し…

今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-2

2021/03/16 今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1 の続き 大正時代には、軍や官僚が植民地や軍隊駐屯地でさまざまな策謀をめぐらした。その名をみると、東京軍事裁判で起訴された軍人や政治家(吉田茂もいた)の名前が頻出する。彼らは…

吉村昭「関東大震災」(文春文庫)

関東大震災の被害は、小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま学芸文庫)で。odd-hatch.hatenablog.jp と言いながら、テキストでないと伝わらない情報もある。本書の指摘を抜き書きで。 ・震災による家屋の倒壊や火災(出火の原因は薬品由来という。学校、…

小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま学芸文庫)

初出2003年は関東大震災から80年目(阪神大震災から8年目)。その節目の年に編集された。震災記念館(だったか?)の設立準備中に、震災直後に撮影されたネガフィルムと焼き付けが大量に見つかった。それまでは引用で見ていた写真のオリジナルが発見されたの…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1

1926年から1936年までの昭和ゼロ年代。大正デモクラシーは「内には民本主義、外には帝国主義」であったが、この10年間で内はファシズムになった。 驚くべきことは、ファシズム体制が完成するまでに、象徴的な事件もカリスマ的な人物もでてこないこと。メルク…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 の続き 20世紀前半の国内政治がわかりにくいのは、元老だの元老院だのがあり、選挙で選出されていないものが政治的な決定を下すことができ、首相にいたっては天皇の裁可がないと組閣がで…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-3

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 2021/03/01 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2 の続き 経済で重要なのは、関東大震災の復興事業と金解禁、世界不況。前二つは、別に読んだ本のエントリーに詳述した…

林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-1

226事件終了後から敗戦まで。1936年から1945年までの10年間。 東アジアに日本主導のブロック経済圏をつくり、先進国の仲間入りをすること。これくらいが日本の国家目標であって、ブロック経済圏構想はおもに陸軍によって実施運営されることになった。軍事に…

林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-2

2021/02/22 林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-1 の続き 治安維持法、国家総動員法によって日本を運営する<システム>@カレル・ヴァン・ウォルフレンの外にいる人たちは、政治決定に参加することができなくなった。選挙があっても、政党が解党し…

蝋山政道「日本の歴史26 よみがえる日本」(中公文庫)

1945年の敗戦から1967年(おそらく執筆時)までの約20年間。現在進行中のできごと、存命中の人々を記述するので、これまでの歴史研究者ではなく政治学者が執筆する。戦前の昭和3年に東大法学部の教授になり、川合栄次郎といっしょに昭和14年辞任。その後、翼…

海野福寿「韓国併合」(岩波新書)

教科書では「日韓併合」と称される事象をここでは「韓国併合」とする。以下の事態進行中では「韓国併合」が普通の表記であったから。同時に、日韓が対等であると思わせるような表現にしたくないという意思も込められる。実際、下記のような歴史的事実をみる…

高崎宗司「植民地朝鮮の日本人」(岩波新書)

1876年の日朝修好条規締結から1948年の引き上げ完了までの、在朝日本人の軌跡をまとめる。統計資料や政治文書も使用するが、生身の人間のふるまいを描くために、多くの人の回想録を使用する。できごとや政策を知るには物足りなき術だが、日本人がどのように…

吉見義明「従軍慰安婦」(岩波新書)

1945-70年にかけてのこの国の文学や映画には従軍慰安婦が登場することがあった。野間宏「真空地帯」、大岡昇平「俘虜記」、野村芳太郎「拝啓天皇陛下様」、岡本喜八「独立愚連隊、西へ」「肉弾」「血と砂」などが思いつく。慰安婦の実態を知らないでいたので…

小林英夫「日本軍政下のアジア」(岩波新書)

1931-1945年の「アジア太平洋戦争」のおもに非戦闘地や期間における軍政の被害状況をまとめる。戦闘期における日本軍の残虐行為はよく知られているが、非戦闘期になると情報が少ない。軍人、民間人が現地人を暴力的差別的に扱ったというのが断片的に書かれる…

文京洙「韓国現代史」(岩波新書)

この本は高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書)の続きとして読む。 朝鮮戦争の結果、朝鮮半島は南北に分断され、それぞれが別の統治形態を持つことになった。この本ではおもに大韓民国の歴史の変遷をみる(北の朝鮮についていえば、1950年代に金日成が反…

田中宏「在日外国人(新版)」(岩波新書)

この国の戦後史を読むときに、ほぼ無視されるのが、オールドカマーと呼ばれる旧植民地出身者およびその係累に起きたこと、そしてニューカマーと呼ばれる戦後の在留外国人のこと。とりわけ前者には差別が日常であり、法も彼らを保護せず、なにしろ政府そのも…

高木健一「今なぜ戦後補償か」(講談社現代新書)

20世紀の15年戦争は、周辺諸国および交戦国に多大な被害を及ぼしたわけだが、この国にいると1952年のサンフランシスコ条約で全部清算されたと考える。しかし、1990年以降に韓国、中国、台湾の戦争被害者が日本や現地の日本法人を相手に補償を請求する裁判が…

赤塚行雄「戦後欲望史 7・80年代」(講談社文庫)

初出の1985年は80年代が進行中。なので、分析も手探り状態。 表紙は左から三島由紀夫、山口百恵、大橋巨泉、田中角栄。背景の写真はたぶん1974年の三菱重工ビル爆破事件。それと現役総理大臣の逮捕の報道。 さて、70-80年代のキーワードを次のようにまとめる…