日本史
自分が知っている日本の19世紀の歴史は1960年代の研究で止まっているので、比較的最近の研究をまとめたものを読む(初出は2006年)。これまでは「日本の歴史」として記述してきたが、当時の世界情勢(ウィーン体制、ルイ・ボナパルト即位、阿片戦争、クリミ…
2023/02/07 井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)-1 2006年の続き 本書で気の付いたのは、江戸時代と明治時代の境界をひかないこと。大政奉還、江戸開城、天皇入城のようなあるできごとで区別されたとしない。次第に江戸幕府の権威が落ち、明治政府の命令に従…
初読は高校3年の春。大学受験が終わり、結果発表を待っている間だった。この本を読んだ理由は単純で、受験勉強中に司馬遼太郎「竜馬がゆく」を読んでいたから(中学1年以来2回目)。龍馬の生涯を別人による記述で確かめたかったのだ。司馬の小説は1964-67年…
「武士」とはどういう存在だったかは自明のように思えるが、そのような階級が無くなって150年もたつと、時代劇・小説や歌舞伎に描かれた武士が実在していたかのようにおもう。これが極右やネトウヨになると、日本人の精神を代表する存在に化けてしまう(江戸…
2023/02/02 高橋昌明「武士の日本史」(岩波新書)-1 2018年の続き 前2章で歴史的変遷をみてきたが、こんどは武芸や戦闘行為をあきらかにする。自民党、極右、神道系宗教、ネトウヨなどがいう「武士」「武士道」は胡散くさいものだという印象があったが、そ…
井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)で1840-70年ころまでの日本をみてきた。このときに攘夷運動に基づく帝国主義国家が成立した、というのが自分の見立て。その後、この国はほぼ10年おきに対外戦争を繰り返した。兵員と軍事費の増加は国の経済を成長するおお…
2023/01/27 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-1 2009年の続き 日本の「国防」思想は、恐らく孝明天皇の攘夷と焦土を辞さない戦争の意志から始まる。外国からの危機が迫っているという恐怖がもとにあるのだ。なので、政策は彼ら…
2023/01/27 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-1 2009年2023/01/26 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-2 2009年の続き 20世紀前半の朝鮮と満蒙をめぐる国際関係が奇々怪々なのは、同盟と敵の関係が…
昭和の歴史を振り返る1980年代の企画。第1巻は昭和の前の1918-1925年。今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-2 「改造」の時代 ・・・ WW1の終了後。西洋の貿易が止まったので、…
2023/01/23 金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-1 1988年の続き 大きなトピックは関東大震災。日本の流れをかえた。 関東大震災と天譴(てんけん)論 ・・・ 1922年9月1日の関東大震災と朝鮮人虐殺はリンク先を参照。社会主義者のリンチ虐…
1927年から1931年にかけての時代。テーマは大不況・軍縮・金解禁。不況に対して国債発行で乗り切ろうとしたが、赤字財政が増大することを恐れ公債発行を漸減しようとする。これが軍事費削減になる軍部が反発する。 昭和の開幕~はじめに~ ・・・ 大正天皇の…
2023/01/19 中村政則「昭和の恐慌 昭和の歴史2」(小学館文庫)-1 1988年の続き 1920年からの日本の不況をいかにして克服するか。他国の不況対策と比較すると日本の対策の特長はどういうものか。その問いに答えるために、金解禁とアメリカのニューディール…
著者は陸軍士官学校第60期生。最後の士官候補生で敗戦時の肩書もそうだった。なので、知り合いのなかには8/14のクーデターに参加したものがいる。そのような経歴があるためか、本書の記述は軍隊の中から昭和史を見たものになっている。軍事史研究としては重…
1931年の柳条湖事件から1936年の226事件までの5年間を扱う。1920年代の不況が慢性化し、さまざまな政策が打ち出されるが、はかばかしくない。後付けでいえば、多額の軍事費と植民地経営が負担になっていた。しかし軍を縮小する政府の運動は、軍ととりわけ国…
2023/01/13 江口圭一「十五年戦争の開幕 昭和の歴史4」(小学館文庫)-1 1988年の続き 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-3を意識して読む。軍は政治的に先走っていく。戦略的な動きをするが、軍の思惑とは別に世界の列強は日…
2022/12/23 藤原彰「日中全面戦争 昭和の歴史5」(小学館文庫)-1 1988年の続き 1939年になると、次の首相を決めるシステムが働かなくなる。昭和天皇は元老や宮内庁などが根回しして決めたことを後追いすればよかったが、この時期になると自分で判断すること…
本書では昭和(1927年)になってから以降の政党の動きを見る。それ以前の政治状況は以下のエントリーを参考に。金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-1金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-2 政党はそれまでなかったわけで…
2022/12/20 粟屋憲太郎「昭和の政党 昭和の歴史6」(小学館文庫)-1 1988年の続き 1920年代後半の経済トピックは金解禁。本書では記述は少ない。そこは経済史の本で補完しておきたい。2015/03/23 中村隆英「昭和恐慌と経済政策」(講談社学術文庫)2015/03/2…
この時代(1941~1945年)はおもに戦史を読んでいて、陸海軍の各地の戦闘はそれなりに知っていた(日本の側から戦史分析をすると見方が偏る/見えないものがあるので、相手国からの戦史も参照するべき。マッカーサーのみならず毛沢東や朱徳の立場から見ること…
日本海軍の特攻兵のなかに、1944年10月から翌年3月までに9回以上出撃して生還した下士官がいた。生還したのは、体当たりのかわりに爆弾を投下(固定された爆弾を取り外せるように修理)したり、天候不充分で敵艦を見つけられなかったり、整備不良で帰投した…
今まで日本軍、とくに15年戦争時代の日本軍、には紋切り型の説明がなされてきた。曰く精神主義、曰く非合理、曰く戦略・戦術なしなど。20世紀の軍批判はその線にそって行われてきたが、それは正しいのか、という問い。21世紀には、日本軍が残した資料をつか…
2022/12/12 一ノ瀬俊也「日本軍と日本兵」(講談社現代新書)-1 2014年の続き 太平洋戦線での日本軍は、奇襲と集団突撃か陣地とたこつぼによる防御かの同じ戦法を繰り返した。米軍との戦いで創意したのではなく、中国戦線での成功体験を繰り返していたとみた…
8月15日正午はとても暑く、校庭や工場などに集まってラジオから流れる「玉音放送」を聞き、その後嗚咽する者がいたりしたが、多くのものは虚脱した(ちかくに朝鮮人部落があるものはそこから流れる祭りの音に驚いたりもする)。以来、8月15日は慰霊の日とし…
最初に近世にはいったのはヨーロッパではなくて(まずそこで驚きになる)、イスラムであるが続いて宋時代の中国が近世を迎えた。ここで「な、なんだって」と絶叫したくなるが、それにとどまらない。いち早く近世にはいった中国は「中国化」していき、近隣地…
2021/04/13 與那覇潤「中国化する日本」(文芸春秋社)-1 2010年の続き 「江戸時代化」という概念でみえてくるのはたくさんあるので、概要を紹介。基本的には「中国化」の真逆なありかた。したがって、1.権威と権力の分離: 天皇の権威と権力保有者が別。…
1780年から1840年ころまで。時代小説、時代劇などはだいたいこの時代を扱う。これらのフィクションを通じて日本のいにしえのイメージが形成されている。町民の仲睦まじい清貧な暮らしに、庶民思いの大名や老中、利権をむさぼる悪代官に悪商人というもの。そ…
2021/04/06 小西四郎「日本の歴史19 開国と攘夷」(中公文庫) の続き この時代に起きた政治的な事件として、蛮社の獄1839年と大塩平八郎の乱1837年が有名。いずれも現政府によって徹底的に弾圧され、首謀者は自死を選ばされる。このような大衆嫌悪・民衆嫌…
本書では、大政奉還から西南の役までの10年間を扱う。通常、映画やドラマで「明治維新」を扱うときは大政奉還までで、「封建制力による人民の圧政を主に西国の士族が打倒(ここで「革命」は使わない)した」で終わりにする。しかし、歴史はとどまらないので…
2021/04/05 井上清「日本の歴史20 明治維新」(中公文庫)-1 の続き 明治のゼロ年代で注目しなけらばならないのは、征韓論。明治政府は開国を実行したが、それは幕府時代からの諸外国の圧力、影響にあったため。英仏は日本を領土化しようとはしなかったが(俺…
飛鳥井雅道「明治大帝」(ちくま学芸文庫)を読んだのが20年近く前。明治天皇の事績を忘れてしまったので、今度は別書を読む。 明治天皇は1852年生まれ1912年没。享年60歳。外国との接触を極度に恐れる孝明天皇の子として生まれる。1840-42…