odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

日本史

趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波新書)-1 朝鮮に視点を定め、日本が「異人」であるかのように朝鮮と日本の近代史を見直す。

これまで全く無知だったので、朝鮮の近代史と日本の植民地政策を勉強するために、以下を読んできた。2017/05/25 海野福寿「韓国併合」(岩波新書) 1995年2017/05/24 高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書) 2002年 また同じ時代の日本の近代史はさまざま…

趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波新書)-2 日本史を外国の目から見るとき、列島の住民の「常識」(例えば司馬遼太郎「坂の上の雲」)が覆される。

2024/05/14 趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波新書)-1 朝鮮に視点を定め、日本が「異人」であるかのように朝鮮と日本の近代史を見直す。 2012年の続き 日本史を外国の目から見るとき、列島の住民の「常識」が覆される。ことにこの時代の朝鮮半島のできごとを…

杉原達「中国人強制連行」(岩波新書) 大日本帝国は占領地の中国人を拉致して日本その他で危険な労働を強制し多数を殺した。

1946年に外務省が調査したら、約4万人の中国人が戦争末期の1944~45年に強制連行された。連行先では強制労働が行われ、24時間の監視、生存ラインぎりぎりの食糧、悪質な労働環境と住環境、医療なし、監視員他による暴行や拷問の頻発などにより、多数の中国…

安田浩一「「右翼」の戦後史」(講談社現代新書) 右翼の歴史は保守政党による支援の歴史。大日本帝国憲法・軍人勅諭・教育勅語が右翼の聖典。

ヘイト団体や差別団体の活動を監視していると、どうしても右翼団体が視野に入ってくる。ときに差別団体(在特会とか日本第一党とか)よりも悪質なヘイトスピーチを,ヘイトスピーチ解消法施行後にも行っている。なぜ右翼は外国人排斥を主張するのか、なぜ右翼…

渡辺延志「関東大震災「虐殺否定」の真相 ハーバード大学教授の論拠を検証する」(ちくま新書) ラムザイヤー論文を検証。執筆者も、当時の政府も軍も警察もフェイクニュースを流していた。

2019年にハーバード大学のラムザイヤー教授(専門は法学らしい)が関東大震災の朝鮮人虐殺を否定する論文を発表した。第1章に論文のサマリーが載っているが、内容は日本のネトウヨがいっている否定論と同じだ。関東大震災の朝鮮人虐殺のことを「朝鮮人…

斎藤洋一/大石慎三郎「身分差別社会の真実」(講談社現代新書) 江戸時代の身分制は、士農工商ではなく、公家・武士-平民(農工商が含まれる)-被差別者(えた・ひにん)の三層構造。

歴史学者・大石慎三郎監修による「新書・江戸時代」の一冊。江戸時代の身分制は時代劇などで牧歌的に描かれているが、そうではない。たとえば「士農工商」が江戸時代の身分制の序列とされているが、この言葉ができたのは明治時代で、昭和の義務教育で定着し…

原田伴彦「被差別部落の歴史」(朝日選書) 移民・外国人がほとんど存在しない江戸時代に作られた差別。明治以降、より悪質な差別が制度化された。

1975年に出版された被差別部落の歴史を概説したもの。以下の本を補完することを目的として読む。組坂繁之/高山文彦「対論 部落問題」(平凡社新書)角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫) 1999年 これまで歴史学があまり取り上げてこなかったし、文書…

組坂繁之/高山文彦「対論 部落問題」(平凡社新書) 明治維新後の水平社運動や敗戦後の部落解放運動は行政を変える運動。

部落差別はまず角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫)を取り掛かりにした。つぎに、本書で歴史を学ぶ。組坂繁之は部落解放同盟の重鎮、高山文彦は作家で水平社運動を担った松本治一郎の評伝「水平記」を書いた。高山が質問し組坂が答える形で対論とな…

竹内洋「教養主義の没落」(中公新書)-1 戦前日本の教養主義:デカンショは外国への憧れで、反学歴社会運動だった

「最近の大学生は本を読まない」「大学生の学力が落ちている」「大学がレジャーランド化している」という言説はよく聞こえてくる。それは、過去の大学生は本をたくさん読んで、勉強をしていて、遊ぶ者は少数だったということを前提にしている。この前提は正…

竹内洋「教養主義の没落」(中公新書)-2 戦後日本の教養主義:教養主義が終りサブカルが始まる

2023/08/07 竹内洋「教養主義の没落」(中公新書)-1 戦前日本の教養主義:デカンショは外国への憧れで、反学歴社会運動だった 2003年の続き 本書の記述にそって、ある教養主義者を仮構してみよう。 彼は1900年から1910年の間に、田舎の中産階層に生まれた。…

網野善彦「日本社会の歴史 上」(岩波新書) 教科書に出てくる時代区分や政権の名称を使わず、社会システムの変遷として日本の歴史を見る。列島に住む人たちの生活や暮らしは重層的で多様。

「日本」概念ができて共有されるようになったのは7世紀以降。それ以前は、「日本」「日本人」はいない。アジアとの関係、人間社会にフォーカスする。 第1章 原始の列島と人類社会 ・・・ 日本列島も氷期・間氷期で姿を変える。およそ8000年前に現在とほぼ同…

網野善彦「日本社会の歴史 中」(岩波新書) 中世の日本。西の大和朝廷は中国化・グローバル化を目指し、東の武士政権は江戸時代化・鎖国化を目指す。

2023/07/07 網野善彦「日本社会の歴史 上」(岩波新書) 教科書に出てくる時代区分や政権の名称を使わず、社会システムの変遷として日本の歴史を見る。列島に住む人たちの生活や暮らしは重層的で多様。 1997年の続き 中巻では10世紀から14世紀前半までを扱う…

網野善彦「日本社会の歴史 下」(岩波新書) 貨幣経済は米本位制の封建社会を窮迫させる。諸藩の改革は重商主義やグローバル化だったが、明治政府のネトウヨ政権はそれをつぶす

2023/07/06 網野善彦「日本社会の歴史 中」(岩波新書) 中世の日本。西の大和朝廷は中国化・グローバル化を目指し、東の武士政権は江戸時代化・鎖国化を目指す。 1997年の続き 日本は「一つの国家、一民族」というのは幻想であり、誤りであって、複数の王権…

井上光貞「日本の歴史01 神話から歴史へ」(中公文庫) 列島は人が住むようになってからずっとグローバルだった

さて日本の歴史を勉強しよう。テキストに選んだのは、中央公論社の「日本の歴史」シリーズ。1960年代に当時の碩学や若手を動員して作られた。歴史学は戦前に政府や国家などの介入を受けて、学問として展開できなかった。その壁が取り払われて、資料や事物に…

直木孝次郎「日本の歴史02 古代国家の成立」(中公文庫) 記紀や魏志倭人伝だけでは古代の様子はわからない

対象にしているのは、7-8世紀。天皇家を頂点におく制度はできていて、大和朝廷の権力は東国(今の関東)から朝鮮半島にまで及び、仏教や鉄製農具はすでに伝わっていたがアーリーアダプターだけのもので、地方に行けば数世紀前とほぼ同じ。奈良盆地とその周辺…

青木和夫「日本の歴史03 奈良の都」(中公文庫) 列島が進んで中国化しようとした時代

高校の日本史で最初のつまづきになるのは、奈良時代(本書の記述は704-771年)。法律や官位が煩雑になり、徴税や戸籍の仕組みが細かくなり、人名がたくさんでてくる。およそ1200-1300年前のこととなると、現在に引き付けて考えることもできず、それを数か月…

北山茂夫「日本の歴史04 平安京」(中公文庫) 律令制という中国化が完成したらすぐにほころびだした

770-967年までの200年を扱う。ここも高校の日本史の躓きの時期であって、延々と宮中のできごとが語られる。時間は過ぎているのに、事態はほとんど変化がない。そのうえ、宮中の政治は事なかれの棚あげで、出る杭は打ち、スキャンダルはフレームアップし、談…

土田直鎮「日本の歴史05 王朝の貴族」( 中公文庫)-2  とてつもないエリートの王朝貴族は(儀式と会議と宴会で)つらいよ。漢文和歌は必須で、日記は一族の重要な資産。

前回読んだのを読み直し。 いわゆる平安時代は800年ごろから1200年ごろまでの400年間続く。さらに3つの期(前期・中期・後期)にわけるようだ。この本で扱っている966-1068年はほぼ中期にあたり、平安文化の最盛期とみていいのではないかしら。すなわち8世…

山口博「王朝貴族物語」(講談社現代新書) 王朝貴族社会を昭和のサラリーマン小説風に記述。昭和一桁の書き手は性差別に無自覚。

王朝貴族はとてつもないエリート。当時の列島の人口は1000~1500万人と推定されているが、そのうち公卿は20人、天皇に拝謁できる殿上人は20~100人くらい。この位を得られるのは特定の氏だけで、その他の貴族は数百のポストを獲得するために、右往左往するこ…

高橋昌明「平家の群像」(岩波新書) 日本最初の武家政権は中国の文化や技術の導入に積極的な平家。鎌倉幕府は中国化を否定し中央集権化を進める。

平家の滅亡は、「平家物語」「源平盛衰記」などの文学によってよく知られている。それらから派生したさまざまなエンターテインメントによって主要な人物は明確なキャラがつくられ、日本人のある種の典型とされている。しかし史料を検討すると、文学は後から…

五味文彦「大系日本の歴史5 鎌倉と京」(小学館ライブラリー)-1 気候変動による寒冷化によって平安末期は乱世になった

平安末期が乱世になるのは、「方丈記」などで知っていたが、その理由がわかった。 「平安初期(西暦820年)の嵯峨天皇の頃に最高気温(25.9℃)を記録しました。一番寒かったのは、平清盛の生きた平安後期(11~12世紀,約24.0℃)で、聖徳太子の活躍した飛鳥…

五味文彦「大系日本の歴史5 鎌倉と京」(小学館ライブラリー)-2 13世紀の温暖な気候が政治を安定させ、経済発展と海外貿易増大を生んだ

2023/06/20 五味文彦「大系日本の歴史5 鎌倉と京」(小学館ライブラリー)-1 気候変動による寒冷化によって平安末期は乱世になった 1988年の続き 鎌倉幕府が政権を担当するようになる13世紀には温暖になったのだろう。生産が上がって治安は穏やかになる。そ…

佐藤進一「日本の歴史09 南北朝の動乱」(中公文庫) 天皇奪権運動の下では社会変革が起きていたのに、本書はそれを書かない

1333-1409年までの14世紀を扱う。ああ、もっと面白く記述できるのに、単調な仕上がりになってしまった。その理由はこの時代の描くのに京都中心にしたこと。そのために、後醍醐天皇と尊氏との正統争いに矮小化されてしまった。これらの関係者がいなくなったあ…

永原慶二「日本の歴史10 下剋上の時代」(中公文庫) 英雄、人気者がいない15-16世紀は大変動の時代

先に杉山博「日本の歴史11 戦国大名」(中公文庫)を読んだ。そのために前掲書のエントリーで疑問にしたことの説明がこちらにあった。読む順番をコントロールできないので(入手順に読むから)、そういうこともある。本来なら第9巻の「南北朝の動乱」を読ん…

林屋辰三郎「日本の歴史12 天下一統」(中公文庫) 侍は土地から切り離され独立自営ができなくなる

前巻である杉山博「日本の歴史11 戦国大名」(中公文庫)の続き。文庫版は1974年だが、単行本では1960年代初頭の初出。 1550-1600年までの天下統一運動のまとめ。主要登場人物は織田信長に豊臣秀吉、そして徳川家康。この国の人がとても好きな時代と人々。自…

辻達也「日本の歴史13 江戸開府」(中公文庫) 侍は仕業から棒給取に変わる

前巻「日本の歴史12 天下一統」に続いて、1600-50年ころを記述。前半の主人公は徳川家康。後半になると、特長的な個人は登場しない。強烈な個性を持つ人物の栄枯盛衰が、組織や制度の変革にとって変えられる過程に照応する。これは中世が近代の中央集権制・…

佐々木潤之介「日本の歴史15 大名と百姓」(中公文庫) 米本位制と保護経済は資本主義も産業革命も起こさない

1945年からの占領期に、占領軍は日本の近代化を阻むものとして地主と大規模土地所有制を解体することにした。そのため、小作による農民運動がさかんになった(山口武秀「常東から三里塚へ」(三一新書))。なので当時は革新政党の支持が高かった。では新し…

児玉幸多「日本の歴史16 元禄時代」(中公文庫) 貨幣経済が盛んになってインフレが起こり米本位制の武士は窮迫する

前の巻になる佐々木潤之介「日本の歴史15 大名と百姓」(中公文庫) は大名と農村から17世紀を見たが、ここでは都市と商人から17世紀をみる。 徳川家光が死んだ1651年から吉宗が将軍になる1716年まで。すでに国内統治体制はでき、鎖国で外国との交通も閉じた…

井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)-1 維新を世界史の一部分としてとらえ、近代化・発展史としてみない最新研究

自分が知っている日本の19世紀の歴史は1960年代の研究で止まっているので、比較的最近の研究をまとめたものを読む(初出は2006年)。これまでは「日本の歴史」として記述してきたが、当時の世界情勢(ウィーン体制、ルイ・ボナパルト即位、阿片戦争、クリミ…

井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)-2 江戸時代と明治時代の境界をひかない。明治政府の命令に従うものが増え、国家機能ができたら、列強が明治政府を承認するようになった。

2023/02/07 井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)-1 2006年の続き 本書で気の付いたのは、江戸時代と明治時代の境界をひかないこと。大政奉還、江戸開城、天皇入城のようなあるできごとで区別されたとしない。次第に江戸幕府の権威が落ち、明治政府の命令に従…