odd_hatchの読書ノート

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イギリス幻想文学

ホーレス・ウォルポール「オトラントの城」(国書刊行会)-2

10年ぶりの再読。1765年の作品で、会話と地を区別する「」(”)がないから、だれがどこでなにをしているかを把握するのが大変になる。そこで前回読んだ時のメモが本に挟んであったので重宝した。 2012/01/12 ホーレス・ウォルポール「オトラントの城」(国書…

メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」(新潮文庫)

このホラーの古典がつくられた事情は有名なので省略。なんにせよ、この傑作が若干19歳の女性によって1816年に作られたとは信じがたい気がする。書こうと言い出した男連中は途中で筆を投げたのに、誘われた女性一人が完成したというのは痛快なできごと。 家に…

ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」(旺文社文庫)

最初に読んだのは小学館のカラー版名作全集「少年少女 世界の文学」イギリス編で。スティーブンソン「宝島」と「ベオウルフ」も載っていた。たぶん小学1年の5歳の時(早生まれなので)。子供のころから理屈っぽいのが好きで、論理や合理がしっかりしている…

ルイス・キャロル「鏡の国のアリス」(旺文社文庫)

「不思議の国のアリス(1865年)」から6年たって、「鏡の国のアリス(1871年)」が書かれた。アリスは7歳半(作中で自身がいっている)になった。前作で子猫だったダイナが子持ちになっているから3年くらいたっているのかしら(というのは訳者山形浩生氏の…

ルイス・キャロル「愛ちゃんの夢物語」(青空文庫)

著者名はよく知っているのに、不思議なタイトルになっているのは、1910年に丸山英觀が翻訳した版だから。この国の「不思議の国のアリス」の初訳ではないが、とても古いもの。当然、21世紀に本を入手できるわけもなく、青空文庫に復刊されたもので読んだ。 ww…

ロバート・スティーブンソン「宝島」(新潮文庫)

最初に読んだのは小学館のカラー版名作全集「少年少女 世界の文学」イギリス編で。キャロル「不思議の国のアリス」と「ベオウルフ」も載っていた。 病気がちの父が経営している「ベンボ―提督亭」にフリント船長と名乗る船乗りがやってきた。そのときから15歳…

ロバート・スティーブンソン「ジキル博士とハイド氏」(新潮文庫)

尾之上浩司編「ホラー・ガイドブック」(角川文庫)は、19世紀の怪奇小説で「フランケンシュタイン」「ジキル博士とハイド氏」「吸血鬼ドラキュラ」をあげている。その選択はまことにその通りで(ポオとホフマンとディケンズに挨拶くらいはしてほしいけど)…

アントニー・ホープ「ゼンダ城の虜」(創元推理文庫)

ルリタリア王国はドイツとチェコの間に位置する(表紙の地図を参照)。若き国王ルドルフ5世が戴冠することになり、ローマ法王が首都を訪れていた(ヨーロッパの王権は神権に承認されないといけないのだ)。しかし、異母兄弟のストレルサウ大公は王位簒奪を…

H・G・ウェルズ「タイム・マシン」(角川文庫)

ウェルズの中編と短編。どれもSFのサブジャンルの始祖であって、SFでやれることの多くはウェルズがやってしまったという感じがする。そのうえ、人類や地球の未来に対する無力感となにもすることがないという諦めが漂う。読後、余韻は深いが、気分はすっきり…

H・G・ウェルズ「タイム・マシン」(旺文社文庫)

旺文社文庫版。角川文庫の収録作品と一部重複。すでになくなってしまった旺文社文庫は訳者などによる解説が充実していた。当時の若手の文学研究者に多くのページを渡して、長い解説を書かせていたとみえる。そこには研究者らしい文献調査や社会学的な知識が…

H・G・ウェルズ「透明人間」(青空文庫)

今回読んだのは海野十三訳の青空文庫版。たぶん戦前訳だと思う(海野は敗戦後断筆)。ジュブナイル向けらしいので、どの程度原作に忠実なのかは不明。戦前訳では都合にあわせてストーリーを変えたりするのはよくあることなので。 イギリスの田舎にあるアイピ…

ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-1

吸血鬼小説の古典にして代表作。もっとも古い吸血鬼小説ではないが、本書に書かれたアイコンやシンボルが吸血鬼のイメージを決定づけた。1897年初出なので、ホームズと同時期(なのでのちのパロディやパスティーシュでときどき共演する)。 映画が出来たら、…

ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-2

2020/04/13 ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-1 1897年 セワード医師はメモを書く代わりに蝋管蓄音機に吹き込み、ミナは速記術で記録をとってタイプライターで打ち直す。いずれも19世紀末の発明品。記録をとることはとても重要でその…

ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-3

2020/04/13 ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-1 1897年2020/04/10 ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)-2 1897年 教授一行といい加減にかいていたが、改めてメンバーを紹介すると、ヴァン・ヘルシング教授、ジョ…

デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-1

イギリスの小説はリアリズムの伝統がある(例えばほとんどの探偵小説)が、一方で幻想を志向し、この世ならぬものへのヴィジョンを物語る系譜もある。このファンタジーの系譜は英国文学史にはあまり重要に扱われないが、少数の愛好家により広められ、この国…

デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-2

2020/04/07 デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-1 1920年 タイドミン ・・・ マスカルは夫の死に動じないオウシアックスに呆れて別れるつもりであったが、旅をつづけることにする。オウシアックス「私たちはクリスタルマン…

デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-3

2020/04/07 デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-1 1920年2020/04/06 デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-2 1920年 リーホールフィー ・・・ 植物動物(両方の性質をもつ生物)に乗って、…

デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-4

2020/04/07 デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-1 1920年2020/04/06 デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリオSF文庫)-2 1920年2020/04/03 デイヴィッド・リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」(サンリ…

デイヴィッド・リンゼイ「憑かれた女」(サンリオSF文庫)

サセックスの森林に囲まれたランヒル・コート館。そこにはウルフの塔の伝説があり、中世には最上階がトロール(ヨーロッパの伝承などに登場する妖精)の手で運び去られたという伝説がある。失われた部屋の階下は「イースト・ルーム」と呼ばれている。この館…

E・R・エディスン「ウロボロス」(創元推理文庫)-1

レミンガムはある夜、雨燕の誘いで、水星に行く。この世界の異人であるレミンガムは身体をなくした霊となって、英雄同士の一大抗争をことごとく見届け、重厚絢爛たる文体で地上の人々に伝えた(という設定は物語の冒頭ですぐに忘れられる)。 水星はイギリス…

E・R・エディスン「ウロボロス」(創元推理文庫)-2

2020/03/30 E・R・エディスン「ウロボロス」(創元推理文庫)-1 1922年 ジャス王は半年ほどかけて、艦隊を整備した。完成ののち、1800人の兵士を伴い、スピットファイア卿、ダーハ卿とインプランド(小鬼国)に出版する。途中暴風雨に遭遇。ジャス王の乗った…

E・R・エディスン「ウロボロス」(創元推理文庫)-3

2020/03/30 E・R・エディスン「ウロボロス」(創元推理文庫)-1 1922年2020/03/27 E・R・エディスン「ウロボロス」(創元推理文庫)-2 1922年 ジャス王とゴライス12世は、「二人の間に平和を保つには地上の世界が小さすぎる」のであって、戦さはいずれかを殲…

ラフカディオ・ハーン「怪談・奇談」(講談社学術文庫)-1

ラフカディオ・ハーンは1890年に来日。英語教師をしながら、日本文化を紹介する著作を多数執筆。その中には、日本の民話や怪談などを採集し、英語に書き換えたものがある。本書は、その一部を翻訳したもの。 ★印をつけたのは、1965年公開の小林正樹監督の映…

ラフカディオ・ハーン「怪談・奇談」(講談社学術文庫)-2

2019/09/16 ラフカディオ・ハーン「怪談・奇談」(講談社学術文庫)-1 1900年の続き。 引き続き小説。本書にはハーンの話のもとになった原典も収録されている。解説によるとハーンは日本語を読めなかったので、節子夫人や友人などの語りを聞いて、それを英語…

H・G・ウェルズ「宇宙戦争」(ハヤカワ文庫)

19世紀末の火星大接近のあった夜、火星の表面で爆発が観測された。それから数日後、ロンドン南西部の郊外に円筒形のロケットが着弾した。その中からおぞましい三脚台に円盤のついたような歩行機械が現れ、高熱ビームと毒ガスで人類を襲撃する。どうやら、寒…

ライダー・ハガード「ソロモン王の洞窟」(創元推理文庫)

映画「リーグ・オブ・レジェンド」はさほど面白いストーリーではなかったが、登場人物が19世紀の大衆小説のヒーロー、ヒロインたちというのが気に入った。コミックの原作があるそうだが、原作者だけでなく映画の製作者、関係者もみな「わかっている」。ジキ…

オラフ・ステープルドン「オッドジョン」(ハヤカワ文庫)

「歩くことも這うこともできない発育不全の赤ん坊が、実は五歳だった。彼の名はオッド・ジョン・・・だが、その子供は高等幾何学を解し、一般相対性理論を論じる恐るべき神童であり、テレパシー、催眠術などのさまざまな超能力を持つミュータントだったのだ…

H・G・ウェルズ「モロー博士の島」(創元推理文庫)

持っている本には、1995年ころ公開の映画「DNA」のカバーがついていた。1950年代の古い映画の存在は知っていたのだが (間違っていた、映画化されたのは *映画『獣人島』(1933年/アール・C・ケントン監督) *映画『ドクター・モローの島』(1977…

ホーレス・ウォルポール「オトラントの城」(国書刊行会)

1764年にイギリスの貴族ホーレス・ウォルポールが書いたロマンス。後に隆盛となるゴシック・ロマンスの祖形。 16世紀イタリアの古城、オトラントが舞台。オトラント公マンフレッドは息子コンラッド(15歳)と美少女イザベラとの婚礼を用意していた。宴が開…