2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧
夜霧のロンドンを、喉を切られた黒人運転手の死体がハンドルを握る自動車が滑る! 十七世紀イギリスの首切役人〈ジャック・ケッチ〉と幻の町〈ルイネーション街〉が現代のロンドンによみがえった。魔術と怪談と残虐恐怖を、ガラス絵のような色彩で描いたカー…
35年前の中学生時代に読んだときは、途中はとても面白かったのに、解決が判然としなくて後味が悪かった。再読したら、そのとおりの読み方でOKというのがわかった。1970年代だと探偵小説風味のユーモア小説というジャンルがなくて、あったとしてもカーは「本…
ブレンダは愕然とした。雨上がりのテニスコートには被害者と発見者である自分自身の足跡しか残ってはいなかったのだ。犯人にされることを恐れた彼女は、友人と共にこの事実を隠し通して切り抜けようとするのだが……。主人公達と犯人と警察の三つ巴の混乱の中…
刑事たちが見張るクラブの中で、新婚初夜の公爵が無惨な首なし死体となって発見された。しかも、現場からは犯人の姿が忽然と消えていた! 夜歩く人狼がパリの街中に出現したかの如きこの怪事件に挑戦するは、パリ警視庁を一手に握る名探偵アンリ・バンコラン…
くだらないことを備忘のために。カーのミステリでは、タイトルに数字の付いたものがある。どれくらい並べられるかな。 1・・・「一角獣の怪」(一角獣が「ユニコーン」なので) 2・・・「死が二人をわかつまで」(短編に「二つの死」というのがあるらしい…
その部屋で眠れば必ず毒死するという、血を吸う後家ギロチンの間で、またもや新しい犠牲者が出た。フランス革命当時の首斬人一家の財宝をねらうくわだてに、ヘンリ・メリヴェル卿独特の推理が縦横にはたらく。カーター・ディクスンの本領が十二分に発揮され…
白い幽霊のような霧が、リンカンズ・イン・フィールズの辺りに立ち込めていた。十一月も下旬の午後四時半、空も町も、もう暗かった。 四階にあるプランティス弁護士事務所はひどく暗くてがらんとしていた。奥の事務所だけに明りがついていて、副所長のヒュー…
このミステリは、中学生か高校生のときに図書館で借りて読んだ。なんだかよくわからなかった。よくわからなさは、クリスティ「復讐の女神」、P・D・ジェイムズ「女には向かない職業 」でもおなじだった。まあ、ミステリを読み始めたばかりの少年には、そんな…
幽霊のでるという屋敷が競売にだされた。資産家クラークはさっそく購入し、友人知人7名を招待して幽霊パーティー(交霊会みたいなことか)を開くことにする。5月の休日に屋敷に集ったところ、資産家が銃で撃たれ死亡した。そこには、彼の妻しかいない。彼女…
1945年戦後の短編を集めたもの。「パリから来た紳士」は本格的な歴史ミステリの「ニューゲイトの花嫁」と同じ年。このあたりから歴史上の人物を主人公にするという趣向が出てきたのかしら。シオドー・マシスン「名探偵群像」は初出が不明(初訳は1961年)。…
1940年刊行のたぶんカーの第一短編集。探偵役はフェル博士でもメリヴェル卿でもなく、マーチ大佐。カーにしろクイーンにしろデビューからしばらくは長編を書いて、短編を書くようになったのは1930年代の後ろのほう。出版業界になにかあったのかしら。新透明…
奥付の発行年は1976年になっていて、なるほどそういう年齢と時代に読んだのだと、感慨深い。それから数十年。内容を思い出すことはなかったのだが、読み返すと、細部はそれぞれ記憶の底にあって、確かに読んだという記憶が残っていた。あのときは2週間くらい…
英文学教授ルースベンは呆然と立ち尽くした。女が胸に短剣を突き立てて死んでいたのだ。彼がこの女ローズを訪れたのには理由があった。彼女との仲が原因で妻に逃げられたルースベンに、ローズの家に行くようにという謎の電話があったのだ。他殺の疑いが濃か…
お忍びで海外休暇中のH・Mがタンジールに到着すると、のぼりやら歓声やらで派手な出向かいを受ける。そのまま現地の警察に行くと、神出鬼没の怪盗を捕まえてくれとの要請。ブリティッシュ・ビューティのおきゃんぴー(死語!)な娘が私設秘書になってくれ…
パンチとジュディ (ハヤカワ・ミステリ文庫 クラシック・セレクション)作者:カーター・ディクスン早川書房Amazon2005/01/02記 イギリスとドイツの仲が険悪になってきた1930年代後半。元ドイツスパイが情報を売り込みたいとH・Mに近づいてきた。その情報に…
猫が鼠をなぶるように、冷酷に人を裁くことで知られた高等法院の判事の別荘で判事の娘の婚約者が殺された。現場にいたのは判事ただ一人。法の鬼ともいうべき判事自身にふりかかった殺人容疑。判事は黒なのか白なのか? そこへ登場したのが犯罪捜査の天才とい…
蝋人形館の殺人 (ハヤカワ・ミステリ 166)作者:J.ディクスン カー早川書房Amazon 元大臣の娘オデット・デュシェーヌが死体となってセーヌ河に浮かんでいるのが発見されます。致命傷は刺傷で他殺と考えられました。オデットが死ぬ直前に蝋人形が展示されてい…
収録されているのは 阿刀田高「天国に一番近いプール」 折原一「不透明な密室」◆ 栗本薫「袋小路の死神」◆ 黒崎緑「洋書騒動」 清水義範「モルグ街の殺人」◆ 法月綸太郎「緑の扉は危険」◆ 羽場博行「虚像の殺意」 連城三城彦「ある東京の扉」 ちょっと古い本…
60−70年代に小学館の出していた「小学○年生」という雑誌では高学年向けになると、ミステリーの問題集を付録にすることがあった。たとえば断片的な目撃証言から容疑者を特定せよというものであったり、理髪店の鏡に映った時計からアリバイをくずせというもの…
福永武彦の「深夜の散歩」だったか「加田伶太郎全集」の序文だったかで盲目探偵の話があったので、マックス・カラドスを知ってはいたのだが、実作を読む機会はなかった。それ以来だから実に25年ぶりの邂逅ということになる。 1 ディオニュシオスの銀貨 (T…
横溝正史「面影双紙」1933 ・・・ 大阪弁と標準語のちゃんぽんで語られた商家の奇談。商い一筋の夫と若い妻。妻は歌舞伎役者と不倫していて、それが発覚したとき夫は失踪する。語りのあとのあざやかな落しで、恐怖が倍増。久生十蘭「海豹島」1939 ・・・ オ…
最初にタイトル、次は作者、あとに探偵の名前、最後は発表年。 1 スタッドリー荘園の恐怖 (L・T・ミード)(ハリファックス博士)1893 ・・・ ハリファックス博士の元に若い夫人が訪れる。毎晩幽霊をみて神経衰弱気味の夫を助けてくれというのだ。博士が…
ベイリー「黄色いなめくじ」1935 ・・・ 小学生低学年の男の子が幼児の妹といっしょに沼に入って死のうとする(日本人だと心中だが、欧米だと心中という概念がないので、殺人と自殺とみなされる)。この子供たちに興味を持ったフォーチュン探偵は、二人の幼…
ヘミングウェイ「殺人者」1927 ・・・ 放浪者ニック・アダムスの冒険(作者は彼を主人公にした短編を複数書いている)。都会の安い飯屋で働いている。二人の不思議な男がくる。彼は大男のスウェーデン人を探している。ニックたちは監禁されそうになるが男たち…
アントニー・ウイン「キプロスの蜂」The Cyprian Bees 1925年 ・・・ 車中で女性が頓死した。猛毒のハチに刺されたあとが見つかる。ヘンリー博士が謎を追う。小説の作法はすぐれていない。最初に「アナフィラキー」が概説されて、そこから逸脱する解釈にはな…
ルブラン「赤い絹の肩かけ」1907 ・・・ おかしな挙動を示す二人つれ。尾行したガニマール警部はリュパンに不思議な事件の解決を持ちかけられる。果たして、彼のいうとおりに犯人を上げることができたが、決定的な証拠がない。そこで、ガニマール警部はリュ…
「短編は推理小説の粋である。その中から珠玉の傑作を年代順に集成したアンソロジー。1には、巻頭に編者江戸川乱歩の「序」を配し、まず1860年のコリンズ「人を呪わば」に始まり、チエホフ「安全マッチ」、モリスン「レントン館盗難事件」、グリーン「医師と…
絶賛、絶版中なのか。所有しているのは初版でしおりひも付き(一時期の創元推理文庫は、初版のみしおり紐を付けていた)。収録作は以下のとおり。 1 この世の外から (クレイトン・ロースン) 2 スドゥーの邸で (ラドヤード・キプリング) ・・「ジャング…
収録作品を備忘のために記しておく。◆は印象深かったもの。どちらかというとパロディ風のほうを好んだらしい。 ある密室(ジョン・ディクスン・カー) クリスマスと人形(エラリイ・クイーン) 世に不可能事なし(クレイトン・ロースン) うぶな心が張り裂け…
「思考機械」という詩的なことば(シュールリアリズムかダダの詩人が使いそうじゃないか!)に引かれて、「ブラウン神父」譚のような人工的な短編であるだろうと10代のときに考えていた。そのために、ずっと手を付けていなかった。最近100円で入手。 驚い…