odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

小田実「ベ平連」(三一新書) 1969年秋に出版されたべ平連の途中経過報告。

これは1969年秋に出版されたべ平連の途中経過報告。冒頭は、吉川勇一、小田実、鶴見良行の論文。次は、事務局のひとたちの座談会。後半は各地のべ平連の活動報告。最後の報告を書いているのは、高校生だったり、主婦だったり、学生だったりさまざま(なぜか…

小中陽太郎「私の中のベトナム戦争」(サンケイ新聞社) 「中の人」による「ベトナムに平和を!市民連合」通称べ平連の活動の記録。

「ベトナムに平和を!市民連合」通称べ平連の活動の記録。1970年当時にはずいぶん資料があったと思うが、1980年代初頭においてはこれと三一新書「べ平連」くらい。 ちなみに、自分のもっている一冊の見返しには、ある政治家にあてた著者献辞が書いてある。そ…

小田実「「政治」の原理、「運動」の論理」(講談社文庫) 1967~70年の文章を収録。「『物』の思想、『人間』の思想」の理論を現場で試すフィールドワーク、ルポルタージュ。

ここには1967-70年の文章を収録。政治、運動、文学の3つの章に分かれていて、「『物』の思想、『人間』の思想」の理論を現場で試すフィールドワーク、ルポルタージュの趣き。こちらでは文章に余裕が出てきて、具体に即して書いているので読みやすい。 I 政治…

小田実「世直しの倫理と論理 上」(岩波新書)

1972年初出。すでにべ平連の運動が数年間継続。その間に、定例デモ、雑誌の刊行、さまざまな集会、雑誌新聞への反戦広告、アメリカ脱走兵支援などいろいろやってきた。病気で入院したので、そのときにまとめたのがこの本。 運動すること、社会の不正をただす…

小田実「世直しの倫理と論理 下」(岩波新書)

つづいて下巻へ。 「しくみ」のなかの人間・人間のなかの「しくみ」 ・・・ 「しくみ」を無数のひとりの人々がつくると、しくみはそれ自体が個々の人間の意図とは別の動きをするようになる。人間を取り込むことと締め出すこと、そして「しくみ」の論理と倫理…

小田実「状況から」(岩波書店) 1973年に雑誌「世界」に連載された論文集。状況とは「現場」に足を運んで、そこにいる人/住む人と話をし、行動を共にすることで認識するもの。

1973年に雑誌「世界」に連載された論文集(この人の書いた文章は、つねに講談とか漫談のような軽い口調がでているので、堅苦しい印象をもつ「論文」と呼ぶのはふさわしくない。それに論文というほどがっちりとした構成があるわけでもないし)。同時期に大江…

小田実「地図をつくる旅」(文春文庫) 観光名所に行かない旅で世界地図を自分の認識に応じて書き換えよう

月刊「文芸春秋」に1973-75年にかけて連載された。元になる旅は1960年代後半なのだろう。 自分の記憶を加えて書くとすれば、昭和40年代とくくれるこの時代(1965-1974年)は、「外国」がとても狭かった。大きな理由は渡航制限がしばらく続いたことと、固定相…

小田実「民の論理、軍の論理」(岩波新書) 民の論理は、その土地に生きるちょぼちょぼの人の暮らしから生まれる論理。軍の論理は、組織や集団のルールや利益を優先する論理。

民の論理は、その土地に生きるちょぼちょぼの人の暮らしから生まれる論理。まあ、協力とか贈与とかで補い合いながら個人を優先しようとする。軍の論理は、組織や集団のルールや利益を優先する論理。個人の権利や利害と衝突したら、組織や集団を優先する。と…

小田実「世界が語りかける」(集英社文庫) 1977~79年にかけての世界各地の旅。ちょぼちょぼの人々と会い、世界とのかかわりや歴史の見方と深まりを変える。

1979年初出。収録のうち「90日間世界を翔ぶ」は週刊プレイボーイに連載されたのではないかなあ、確かな記憶ではないのでまともに受け取られると困るけど。 さて主題は例によって、世界各地の旅だ。1977-79年にかけて、いろいろ経巡った。通り一編の、あるい…

小田実「旅は道連れ、世は情け」(角川書店) 小田実の父は戦前リベラル。作者の自分史も語られる。

1976から1978年にかけて「野生時代」に連載されたエッセイをまとめたもの。 作者はひとところに落ち着くことができなくて、ちょっと家にいついたら旅に出たくてうずうすする。旅が大好き。旅といってもパック旅行やツアーではない。自分の場所を持ち歩いてい…

小田実「天下大乱を行く」(集英社文庫) 1978年アラブ世界のレポート。市民は民主主義や市民的自由を求めたが、新たな独裁者が生まれ、軍事危機をあおり、抑圧を起こした。

もとは週刊プレイボーイの1979年7月から9月にかけて連載されたレポート。その直前にアラブ世界を旅していて、その時の記録と人々との会話がのっている。 背景にあるのは、第4次中東戦争の和平とイランの革命と「石油ショック」。このレポートの旅を見ながら…

五十嵐一「音楽の風土」(中公新書) 1979年のイラン革命に遭遇したイスラム学者がイランやイスラムを紹介。イスラムからヨーロッパを見ると、かつてはまことに武骨で粗野な人たちであった

著者はイスラム学と比較思想専攻(奥付の著者紹介から)。1970年代後半にイランに留学。その最中に1979年のイラン革命に遭遇した。同時期に小田実もイランほかを訪れている(小田実「天下大乱を行く」(集英社文庫))が、彼の見聞とは相当に違う。テヘラン…

小田実「歴史の転換のなかで」(岩波新書) ベトナム戦争と文化大革命が終了した1980年に社会の変革と未来を構想する。

1980年初出。1970年代の大きな運動であったベトナム戦争と文化大革命が終了し、社会主義国家のいがみ合いや強権がみられるようになった。アラブ諸国ではアメリカやソ連の支配から離れ、自力更生の国家や集団をつくる試みが始まっていた。国内では、「ヨーロ…

小田実「小田実の受験教育」(講談社文庫) 代ゼミの英語講師でもあった著者による受験の主張。人々の機会を平等にする受験はあってもいいが、目的にしてはならない。

もとは1965年の発表。文庫版には1983年の英語教師(?)との対談が追加されている。対象とする時代は古い。そのうえ、自分はすでに受験は遠い過去のできごとで、受験を控える子供をもっているわけではないので、著者の想定するターゲットにはあたらない読者…

小田実「「問題」としての人生」(講談社現代新書) オーウェルのような「1984年」にならなかった日本で、他人の問題のために切実なくらしとたたかいをしている人を参考にどう生きるかを考える。

オーウェルの予言した陰鬱な1984年に出版された本。あいにく、その年のこの国は陰鬱どころか、好景気で消費は盛況、対外的な問題はなさそう。ソ連とポーランドは大変そうだなあ、韓国は内情はよくわからないが安定しているみたい。気になるのはレーガンの経…

小田実「われ=われの哲学」(岩波新書) 「繁栄を謳歌」するバブル時代に、緊張感と切迫感があり、名無し同士が助け合う現場を探す。

1986年初出。1960年代初めからさまざまな市民運動に取り組んできた著者の考えをまとめたもの。とはいえ、網羅するには枚数が少なく、岩波新書のほかの本も読んでおいた上で、この本に取り組むのがよい。21世紀にほとんどの著書は入手困難か高額になってしま…