ここでは第29話から第35話までを読む。 綺堂によると、江戸時代の人びとは妖怪や怪物の存在を信じていた。落雷が起こると雷獣が堕ちて暴れ、置いてけ堀では妖怪が人を呼び寄せ、タヌキは人を化かすのである。たいていの人は事件と妖怪が結びつくとそこで探求…
2026/02/06 岡本綺堂「半七捕物帳 29~35」(青空文庫) 怪談と探偵小説の親和性について の続き 謎解きよりも江戸人の日常を描くことが主眼なのがわかる。ホームズをもくろんでるらしいとみたが、綺堂が注目するのは意外な犯人やトリックではなく、ロンドン…
2026/02/05 岡本綺堂「半七捕物帳 36~42」(青空文庫) 明治政府は武家政権を総否定した。江戸の風物・習俗は忘れられたが、数奇人は記録に残す。 の続き 筒井康隆「富豪刑事」では、その警察署は理想的な民主警察なので、取り調べで自白強要や誘導はしない…
2026/02/04 岡本綺堂「半七捕物帳 43~49」(青空文庫) 半七は威嚇や暴力で自白強要を迫る特高や憲兵みたいな治安維持担当者。 の続き 青空文庫なので初出情報はない。でも、「かむろ蛇」は1935年の発表。とても息の長い連載です。 半七は芝居好き。隠居し…
2026/02/03 岡本綺堂「半七捕物帳 51~56」(青空文庫) 新劇が出て古い芝居の人気がなくなった時期に、綺堂が古い芝居の形式で小説を書く。の続き 捕物帳と探偵小説の大きな違い。ここでいう捕物帳は半七捕物帳に限る。探偵小説では、探偵は事件の犯人を捕…
2026/02/02 岡本綺堂「半七捕物帳 57~63」(青空文庫) 半七は犯人を捕まえるが、事件のトリックと動機は捜査しない。目付の半七の権限や役目ではないから。捕物帳は警察小説の一種。 の続き 江戸時代、列島の人口は三千万人くらい。江戸の人口は百万人。東…
ほぼ毎日の高速音読で、ダンテ「神曲」を読んでいる(2025年5~7月で読了)。青空文庫にある山川丙三郎の文語訳。これは俺のごときが感想を書いても仕方ないのでスルー。現代語に編集したのを読んだことがあるので、それを代用する。2022/07/28 ダンテ/野上…
ルネサンスを古典学術・芸術の復興としてみると、教科書では14世紀イタリアのできごとに注目してしまう。それは19世紀ヨーロッパの歴史家が言い出したことがいまだに継承している証。しかし、ルネサンスを文明移転としてみよう。すると、ヨーロッパとオリエ…
12世紀ルネサンスのあとの15世紀ルネサンス。中心はイタリア。通常は人文学や美術の成果をみたり、中世都市とは異なる商業都市に注目する。でも著者はこの時期のイタリア思想、なかでも神秘思想に傾倒する。 神秘主義や異端思想に傾倒する人は「木を見て森を…
占星術が生まれたのはバビロニアの時代で、紀元前2000年にはもうあったとされる。それから近世まで占星術は合理的で論理的な学問であり、未来予測に有効であるとされてきた。しかし、近代になってからは、占星術は疑似科学とみなされる。いつごろそう考えら…
著者の考えでは、人が天を見るようになったのは食糧調達に余裕ができてから。次第に天のできごとが社会と人の運命を支配していると考えるようになり、未来予測のために天を観察し続けた。観察記録が整備され、暦が作られ、未来予測の占星術になる。大形の人…
ニコラウス・コペルニクスの「天球回転論」と彼の弟子が書いた解説が新訳で出ていたので読む。訳者による解説によると、コペルニクスは「地球が動いている」ことを観察データと理論から確信していた。ルターの宗教改革とカソリックの対抗が起きていたので、…
コペルニクスの「天球回転論」を読んだので、現代から見たコペルニクスを知るために本書を購入。後で知ったが、著者はコペルニクス「天球回転論」(講談社学術文庫)の訳者(別書で全訳もしている)だった。 科学書の古典を読むときの注意点は、現在の視点(…
覗き眼鏡(望遠鏡)が発明された。新し物好きのガリレイはさっそく入手し、さらに改良を加えた。たぶん覗き眼鏡は地上の対象を観察するためで、軍用になったのだろうと妄想するが、ガリレイはなんと夜空に向けた。月と天の川と木星を観察し、無数のスケッチ…
ガリレオは高校物理の早い時期に彼の仕事を知ることになるが、それよりも晩年になってローマ教会の宗教裁判にかけられ、きつい審理を経て有罪判決を受けた後に、「それでも地球は動いている」とつぶやいたことで知られている。教会のドグマの押し付けに対し…
今度は山形浩生訳で読んだ。英訳からの重訳。ネットで公開されている。リンク先。俺はこのテキストをword文書にコピペしてKINDLEスクライブで拡大して読んだ。 www.genpaku.org フランス語原文からの翻訳ではないが、文芸作品のような微妙なニュアンスを読み…
2026/01/16 ルネ・デカルト「方法序説」(山形浩生訳)-2 デカルトくんが隣で話しかけているような翻訳がよい。自分で考える、自分を判断基準にするというのは当時の危険思想。 1637年の続き 前半は21世紀に読むと「あたりまえ」しか書かれていないように思…
デカルトの「省察」で、16~17世紀の西洋の知識体系がいかに危機にあったか、その危機を克服するためにどんな努力をしたかがわかる。15世紀のイタリアルネサンスでギリシャ古典の翻訳が進み、それを取り入れて西洋の知はとても強固なものになった。でも次の…
2026/01/14 ルネ・デカルト「省察 (懐疑主義の系譜)」(KINDLE版)-1 ヨーロッパ諸学の危機と方法的懐疑。デカルトは「存在の大いなる連鎖」を検討する。 1641年の続き デカルトが、人間の認識は疑わしいと思って、あらゆる知識を疑ってかかった。そんな意…
2026/01/14 ルネ・デカルト「省察 (懐疑主義の系譜)」(KINDLE版)-1 ヨーロッパ諸学の危機と方法的懐疑。デカルトは「存在の大いなる連鎖」を検討する。 1641年2026/01/13 ルネ・デカルト「省察 (懐疑主義の系譜)」(KINDLE版)-2 神は完全なのに、宇宙…
本書を単体で読んでも何を言っているのかよくわからないと思う。「方法序説」「省察」を読んでから本書を読もう。そうすると、デカルトの自然学の功績はまず数学で結実したのがよくわかる。幸い俺はこの順に読んだし、かつ放送大学で「数学の歴史」と「初歩…
デカルトの「方法序説」と「省察」を自分勝手に読んだので、まっとうな解釈の解説書を読むことにする。(個人的な述懐。40年前に野田又男「デカルト」岩波新書を読んだ。通勤に使った京王線で、満員の車内でつり革と新書を持ち、揺れながら読んだのだった。…
すでに手元にないので、30年以上前に読んだときの記憶で書く。今でこそモーツァルトとフリーメーソンの関りはCDの解説にもあるくらいに人口に膾炙している。本書はその嚆矢になった初期の研究(原本の初出は1950年代だったはず)。主にはオペラを対象にして…
高校生の時に読んだ。懐かしい。松浪先生は70歳の前後で脳卒中にかかり、以後老眼と合わせて本を読めなくなった。そのことの苦渋が晩年の「哲学以前の哲学」1988に書いてある。文字が大きい孫の絵本しか読めないという述懐に戦慄したものだ。今は電子書籍で…
ナチやロマン主義のことを勉強するにつれ、この本は再読しないといけないという思いになった。前回のまとめ上山安敏「世紀末ドイツの若者」(講談社学術文庫)でエッセンスは掬えたと思うが、もう少し丁寧に読んでみようと思う。 まず全体状況から。英仏の世…
2026/01/05 上山安敏「世紀末ドイツの若者」(講談社学術文庫)-2 19世紀末のドイツの青年は愛国主義の新しい青年運動を開始する。 1994年の続き 19世紀末ドイツの青年運動は前の世代の青年を批判するものでもあった。では前の世代はどのような青年期を過ご…
再読した。前回の感想。 odd-hatch.hatenablog.jp もともとのタイトルを直訳すると「形式変遷史として見たる音楽史」(訳者河上徹太郎による)。文中では「人間感受性の変遷の歴史」と説明する。これを「西洋音楽史」としてしまうと、ドイツ音楽が西洋音楽の…
2025/12/25 パウル・ベッカー「西洋音楽史」(河出文庫)-2 西洋美学を「存在の大いなる連鎖」の派生概念としてみて、音楽史を再構築してみる。 1924年の続き ベッカーの方法は、音楽史の記述をドイツ美学の歴史にのっとり、「存在の大いなる連鎖」で説明す…
生物学を勉強すると、進化論を誤解したものいいが気になる。パターンをまとめると、「進化(進歩)せよ」、「生存闘争と適者生存」、「ダーウィンかく語りき」。いずれもダーウィンや生物学の主張とは異なる。でも人口に膾炙している(安倍晋三政権下の自民…
2025/12/23 千葉聡「ダーウィンの呪い」(講談社現代新書)-1 ダーウィンが「種の起源」を出版する以前から西洋人は種の変化、人間の進歩を信じていた。 2023年の続き 後半は優性思想について。ダーウィンの「種の起源」がでてから、人間の能力強化と道徳性…