odd_hatchの読書ノート

エントリーは2800を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2022/10/06

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-1

井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)で1840-70年ころまでの日本をみてきた。このときに攘夷運動に基づく帝国主義国家が成立した、というのが自分の見立て。その後、この国はほぼ10年おきに対外戦争を繰り返した。兵員と軍事費の増加は国の経済を成長するおお…

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-2

2023/01/27 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-1 2009年の続き 日本の「国防」思想は、恐らく孝明天皇の攘夷と焦土を辞さない戦争の意志から始まる。外国からの危機が迫っているという恐怖がもとにあるのだ。なので、政策は彼ら…

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-3

2023/01/27 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-1 2009年2023/01/26 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-2 2009年の続き 20世紀前半の朝鮮と満蒙をめぐる国際関係が奇々怪々なのは、同盟と敵の関係が…

金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-1

昭和の歴史を振り返る1980年代の企画。第1巻は昭和の前の1918-1925年。今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-2 「改造」の時代 ・・・ WW1の終了後。西洋の貿易が止まったので、…

金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-2

2023/01/23 金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-1 1988年の続き 大きなトピックは関東大震災。日本の流れをかえた。 関東大震災と天譴(てんけん)論 ・・・ 1922年9月1日の関東大震災と朝鮮人虐殺はリンク先を参照。社会主義者のリンチ虐…

中村政則「昭和の恐慌 昭和の歴史2」(小学館文庫)-1

1927年から1931年にかけての時代。テーマは大不況・軍縮・金解禁。不況に対して国債発行で乗り切ろうとしたが、赤字財政が増大することを恐れ公債発行を漸減しようとする。これが軍事費削減になる軍部が反発する。 昭和の開幕~はじめに~ ・・・ 大正天皇の…

中村政則「昭和の恐慌 昭和の歴史2」(小学館文庫)-2

2023/01/19 中村政則「昭和の恐慌 昭和の歴史2」(小学館文庫)-1 1988年の続き 1920年からの日本の不況をいかにして克服するか。他国の不況対策と比較すると日本の対策の特長はどういうものか。その問いに答えるために、金解禁とアメリカのニューディール…

大江志乃夫「天皇の軍隊 昭和の歴史3」(小学館文庫)

著者は陸軍士官学校第60期生。最後の士官候補生で敗戦時の肩書もそうだった。なので、知り合いのなかには8/14のクーデターに参加したものがいる。そのような経歴があるためか、本書の記述は軍隊の中から昭和史を見たものになっている。軍事史研究としては重…

江口圭一「十五年戦争の開幕 昭和の歴史4」(小学館文庫)-1

1931年の柳条湖事件から1936年の226事件までの5年間を扱う。1920年代の不況が慢性化し、さまざまな政策が打ち出されるが、はかばかしくない。後付けでいえば、多額の軍事費と植民地経営が負担になっていた。しかし軍を縮小する政府の運動は、軍ととりわけ国…

江口圭一「十五年戦争の開幕 昭和の歴史4」(小学館文庫)-2

2023/01/13 江口圭一「十五年戦争の開幕 昭和の歴史4」(小学館文庫)-1 1988年の続き 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-3を意識して読む。軍は政治的に先走っていく。戦略的な動きをするが、軍の思惑とは別に世界の列強は日…

莫言「赤い高粱」(岩波現代文庫)-1

中国との15年戦争はおもに日本人側の記録を読むことになるのであるが、そうすると被害者がどのような人であり、どのような生活を送り、どのような生涯であったのかがすっぽりと抜けてしまう。兵士や記者、あるいは一旗揚げようといった者たちは中国の生活…

莫言「赤い高粱」(岩波現代文庫)-2

2023/01/10 莫言「赤い高粱」(岩波現代文庫)-1 1987年の続き 第2部 高粱の酒 1939年8月10日の鬼子待ち伏せは凄惨な結果になる。祖父と父だけが生き残り、ほかのパルチザンは全員が死亡した。呆然とする祖父を励まし、村に帰る。 途中で思い出すのは、祖母…

藤原彰「日中全面戦争 昭和の歴史5」(小学館文庫)-1

一九三七年(昭和一二)から一九四一年(昭和一六)までの歴史。この巻では、「太平洋戦争」の戦闘指揮官と東京裁判のA級戦犯が登場して「大活躍」する。彼らの名前を憶えておいて読むとよい。 日中戦争の歴史的意味 ・・・ 1931年から1945年まで続いた戦争…

藤原彰「日中全面戦争 昭和の歴史5」(小学館文庫)-2

2022/12/23 藤原彰「日中全面戦争 昭和の歴史5」(小学館文庫)-1 1988年の続き 1939年になると、次の首相を決めるシステムが働かなくなる。昭和天皇は元老や宮内庁などが根回しして決めたことを後追いすればよかったが、この時期になると自分で判断すること…

粟屋憲太郎「昭和の政党 昭和の歴史6」(小学館文庫)-1

本書では昭和(1927年)になってから以降の政党の動きを見る。それ以前の政治状況は以下のエントリーを参考に。金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-1金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-2 政党はそれまでなかったわけで…

粟屋憲太郎「昭和の政党 昭和の歴史6」(小学館文庫)-2

2022/12/20 粟屋憲太郎「昭和の政党 昭和の歴史6」(小学館文庫)-1 1988年の続き 1920年代後半の経済トピックは金解禁。本書では記述は少ない。そこは経済史の本で補完しておきたい。2015/03/23 中村隆英「昭和恐慌と経済政策」(講談社学術文庫)2015/03/2…

木坂順一郎「太平洋戦争 昭和の歴史7」(小学館文庫)

この時代(1941~1945年)はおもに戦史を読んでいて、陸海軍の各地の戦闘はそれなりに知っていた(日本の側から戦史分析をすると見方が偏る/見えないものがあるので、相手国からの戦史も参照するべき。マッカーサーのみならず毛沢東や朱徳の立場から見ること…

森村誠一「ミッドウェイ」(講談社文庫)

1976年のジャック・スマイト監督の映画「ミッドウェイ」は、海戦・空戦のシーンになる後半になると、ドラマがなくなる。どうにかして戦争や戦闘の全体を伝えたいという意欲があるものの、カメラの眼は目前のシーンに注目してしまう。なにしろ、戦闘の帰趨を…

鴻上尚志「不死身の特攻兵」(講談社現代新書)

日本海軍の特攻兵のなかに、1944年10月から翌年3月までに9回以上出撃して生還した下士官がいた。生還したのは、体当たりのかわりに爆弾を投下(固定された爆弾を取り外せるように修理)したり、天候不充分で敵艦を見つけられなかったり、整備不良で帰投した…

一ノ瀬俊也「日本軍と日本兵」(講談社現代新書)-1

今まで日本軍、とくに15年戦争時代の日本軍、には紋切り型の説明がなされてきた。曰く精神主義、曰く非合理、曰く戦略・戦術なしなど。20世紀の軍批判はその線にそって行われてきたが、それは正しいのか、という問い。21世紀には、日本軍が残した資料をつか…

一ノ瀬俊也「日本軍と日本兵」(講談社現代新書)-2

2022/12/12 一ノ瀬俊也「日本軍と日本兵」(講談社現代新書)-1 2014年の続き 太平洋戦線での日本軍は、奇襲と集団突撃か陣地とたこつぼによる防御かの同じ戦法を繰り返した。米軍との戦いで創意したのではなく、中国戦線での成功体験を繰り返していたとみた…

佐藤卓己「八月十五日の神話」(ちくま新書)

8月15日正午はとても暑く、校庭や工場などに集まってラジオから流れる「玉音放送」を聞き、その後嗚咽する者がいたりしたが、多くのものは虚脱した(ちかくに朝鮮人部落があるものはそこから流れる祭りの音に驚いたりもする)。以来、8月15日は慰霊の日とし…

神田文人「占領と民主主義 昭和の歴史8」(小学館文庫)-1

1945年から52年まで。日本が他国に占領され、主権が制限されていた時代。これまでに読んだ参考書は下記など。2015/04/10 竹前栄治「占領戦後史」(岩波現代文庫)2021/01/29 雨宮昭一「占領と改革」(岩波新書) 2008年 末尾の一文で著者は占領期を「いまわ…

神田文人「占領と民主主義 昭和の歴史8」(小学館文庫)-2

2022/12/06 神田文人「占領と民主主義 昭和の歴史8」(小学館文庫)-1 1988年の続き 民主主義といっても国によって形態はさまざま。日本を占領して統治する組織であるGHQはアメリカが創っていたので、その指令はアメリカの民主主義の影響を受けている。彼ら…

芝垣和夫「講和から高度成長へ 昭和の歴史9」(小学館文庫)-1

1952年から1960年。1982-83年にこの本を書いたというから、著者らにとっては昨日のできごとで、自分の体験が濃厚に記憶されている時期だ。歴史家はいかにして冷静さと公平さをたもつことができるか。 サンフランシスコ体制の発足 ・・・ 1952年4月講和発効。…

芝垣和夫「講和から高度成長へ 昭和の歴史9」(小学館文庫)-2

2022/12/02 芝垣和夫「講和から高度成長へ 昭和の歴史9」(小学館文庫)-1 1988年の続き 以後は社会世相。生まれる前の時代だが、文学やノンフィクションでこの時代をいろいろ調べて知っているので、感想は簡単に。 高度成長のスタート ・・・ 数年おきに好…

宮本憲一「経済大国 昭和の歴史10」(小学館文庫)-1

1961年から1976年ころまで(文庫は1989年だが、単行本は1982年)。著者も読者も経験した時代のことなので、著者は歴史学者ではなく、社会学者となった。多くの住民運動の調査の携わり、政府や官庁の資料には現れない情報が加わっている。一方、これまでのよ…

宮本憲一「経済大国 昭和の歴史10」(小学館文庫)-2

2022/11/29 宮本憲一「経済大国 昭和の歴史10」(小学館文庫)-1 1989年の続き 通常1970年以降はなにもない時代とされるのだが、それは時代を象徴する事件がなかったせい(というか類似の事件が多すぎた)。実際はこの時代から人間の孤立化アトム化が進行し…

江戸川乱歩「探偵作家としてのエドガー・ポオ」(1949)(エドガー・A・ポー「ポー全集 4」(創元推理文庫)から全文採録)

探偵作家としてのエドガー・ポオ 江戸川乱歩 1 推理三味(ざんまい) 探偵小説史は一八四一年から始まると云われているとおり、ポオの処女探偵小説『モルグ街』は、その年の四月フィラデルフィアの〈グレアム雑誌〉に発表されたのだが、彼はそれ以来一八四…

江戸川乱歩「カー問答」(1950)(ミステリマガジンNo255,1977年7月号から全文採録)

略歴 「あなたはカーがひどくお好きなようだから、いろいろお訊ねして見たいと思いますが、先ず彼の略歴から一つ」 「そうだね、僕も詳しいことは知らないが、ここにあるヘイクラフトの『娯楽としての殺人』(探偵小説史)と、やはりヘイクラフトの執筆してい…