odd_hatchの読書ノート

エントリーは2200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。

アガサ・クリスティ「無実はさいなむ」(ハヤカワ文庫)

田舎の資産家アージル家では2年前に殺人事件が起きていた。慈善事業家で莫大な資産をもつレイチェル夫人が息子と言い争いをした直後に殺されたのだった。言い争いをした息子が犯人ということになり、事件は解決し、息子は獄中で病死した。あるとき、アージル…

アガサ・クリスティ「カリブ海の秘密」(ハヤカワ文庫)

リューマチの痛みがあるマープルに甥のレイモンドがカリブ海の島で過ごす休暇をプレゼントした。あいにく、カリブ海の気候はあまりマープルにはふさわしくない。それにイギリス人夫婦の経営するゴールデン・バーム・ホテルの宿泊人も退屈だった(経営者のせ…

アガサ・クリスティ「バートラムホテルにて」(ハヤカワ文庫)

初出の1965年といえば、ル・コルビュジェ風のモダニズム建築が最盛期。新築のビルは箱の組み合わせで装飾がない。機能的であることを徹底して、建築作業を合理化することが新しい人間と資本主義に合うという考えになるのか。そういう建物はこの国でも同じ時…

アガサ・クリスティ「第三の女」(ハヤカワ文庫)

ポワロを訪れたのは、心ここにあらずというようなぼんやりした若い娘。「あたしは殺人をしたのかもしれない」といって、何も相談せずに出て行ってしまった。この娘を、ポワロの友人のアリアドニ・オリヴァが知っていた。なのでポワロは気になり、娘の両親や…

アガサ・クリスティ「親指のうずき」(ハヤカワ文庫)

なるほど、クリスティがハードボイルドを書くとこうなるんだ、という感想。本書初出の1968年から12年もたつと、離婚し独立して拳銃をしのばせて街をうろつく女性私立探偵がでてくるものだが、この時代ではまだ独力で暴力に対抗するまでには至らない。それで…

アガサ・クリスティ「復讐の女神」(ハヤカワ文庫)

80歳になったミス・マープル(著者クリスティも同じ年齢)は、リューマチで手がこわばり、きびきびと動くことはかなわない。なにより友人や知り合いはことごとく世を去り、おしゃべりを楽しむ相手はいない。セント・メアリー・ミードで村人を観察する喜びは…

アガサ・クリスティ「象は忘れない」(ハヤカワ文庫)

探偵作家のアリアドニ・オリヴァは、奇妙な依頼を受けた。名付け親になった(その事実すら記憶はおぼろ)シリヤの結婚のことだが、彼女の両親は12年前に心中事件を起こしている。その際、父が母を撃ったのか、それとも母が父を撃ったのか明らかにしてほしい…

アガサ・クリスティ「カーテン」(ハヤカワ文庫)

「ポアロ最後の事件」。もともとは作者死後に発表するはずであったが、存命中の1975年にでた。すぐに大評判になり、この国でもハードカバーで翻訳され、ベストセラーになった。漠然とした記憶だが、新聞に大きな広告が出たと思う。 ヘイスティングスは最初に…

アガサ・クリスティ「スリーピング・マーダー」(ハヤカワ文庫)

俺くらいの年齢になると、クリスティが亡くなったときの報道を覚えているし、死の数年後にでたクリスティ読本をもっていたりする。亡くなる前年にポワロ最後の事件「カーテン」がでて、もうひとつミス・マープルものの長編が出るだろうというのも覚えている…

日本古典「中世なぞなぞ集」(岩波文庫)

「なぞ」とは「何ぞ」という問いかけの言葉に由来する、とのこと。本書で言えば「天狗のなみだ、何ぞ」と問いかけ、相手はその答えを考えなければならない。こういう言語遊戯の由来や起源を詮索しても詮無いことであるが、古代からすでにあるという。もとは…

浜田義一郎「にっぽん小咄大全」(ちくま文庫)

言文一致にかんする面白い記事を読んだ。2018年8月11日朝日新聞書評欄の座談会。すなわち、福沢諭吉が英国のスピーチをみて感激。スピーチで社会をうごかすために1875年5月1日に三田演説館を作った。福沢の演説を見た講談師の松林伯圓(しょうりんはくえん)…

三浦靱郎「ユダヤ笑話集」(現代教養文庫)

関楠生「わんぱくジョーク」(河出文庫)やポケットジョーク「1.禁断のユーモア」(角川文庫)がネーション―ステートを持っている側の笑いであるとすると、こちらのジョーク集はネーション―ステートを持たない側の笑い(強者の笑いはアレン・スミス「いたず…

平井吉夫「スターリン・ジョーク」(河出文庫)

俺が記憶している1980年までは、ソ連と東欧の情報はほとんど入らなかった。漏れ伝わるところからわかるのは、硬直した官僚制と不合理で商品と貨幣不足で停滞した社会主義経済体制、すさまじい監視と社会運動の弾圧くらいだった。映像で伝わるのは政治家や芸…

関楠生「わんぱくジョーク」(河出文庫)

1986年に文庫化された小話集。原本は1977年に刊行されたドイツのジョーク集。タイトルには子供がついているけれど(ドイツ語版も)、他のジョークも入っている。 複数回目の読み直しなので、爆笑するまでにはいかなかった。ジョークの落しに笑うよりも、別の…

ボブ・ウォード「宇宙はジョークでいっぱい」(角川文庫)

1980年ごろに出版されたジョーク集。この本が翻訳されたのは、NASAを見学した訳者が見つけたのがきっかけだという。NASAの宇宙計画のファン、マニアであった訳者だからこそ、このようなインサイダー向けの本をみつけたのだし、当時進行中のスペース・シャト…

坂根巌夫「遊びの博物誌 1・2」(朝日文庫)

文庫は1985年に出たが、もとは1975年から翌年にかけて朝日新聞日曜版に連載されたもの。楽しんで読んでいたので、紙面を覚えています。 「遊び」というからもちろん玩具も出てくるけど、自分が楽しかったのは西洋近世と日本の江戸時代のだまし絵やトリックア…

夢野久作 INDEX

2020/06/11 夢野久作「街頭から見た新東京の裏面」「東京人の堕落時代」(青空文庫) 1924年2020/06/09 夢野久作「日本探偵小説全集 4」(創元推理文庫)「瓶詰の地獄「氷の涯」「死後の恋」「爆弾太平記」 2020/06/08 夢野久作「少女地獄」(角川文庫)「…

夢野久作「街頭から見た新東京の裏面」「東京人の堕落時代」(青空文庫)

夢野久作は1923年、関東大震災の一年後に地方新聞の記者として東京を訪れた。1889年生まれなので当時34歳。「勤倹尚武思想を幾分なりとも持っている明治人は、科学文明で煎じ詰められた深刻な享楽主義をとても理解し得ない」と考える夢野は、取材の末に東京…

夢野久作「日本探偵小説全集 4」(創元推理文庫)「瓶詰の地獄「氷の涯」「死後の恋」「爆弾太平記」

創元推理文庫の「日本探偵小説全集」に収録された中短編を読む。併録の「ドグラ・マグラ」は別のエントリーで。 瓶詰の地獄 1928.10 ・・・ 「神様からも人間からも救われ得ぬ」二人の若者の漂流譚。ロビンソン・クルーソーは聖書を読んで孤島を社会にしたが…

夢野久作「少女地獄」(角川文庫)「あやかしの鼓」「押絵の奇蹟」「冗談に殺す」「悪魔祈祷書」

青空文庫で夢野久作を読む。タイトルはかつて読んだ角川文庫を使った。文庫の収録作と以下のリストは一致しない。あしからず。 あやかしの鼓 1926.10 ・・・ 先祖の名人が鼓の名器を作って奉納した。その妖しい響きは受け取った夫婦に悲劇をもたらした。以来…

三大奇書 INDEX

2014/05/22 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(現代教養文庫) 黒死館殺人事件12014/05/21 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」(ハヤカワポケットミステリ) 黒死館殺人事件22014/05/20 小栗虫太郎「日本探偵小説全集 6」(創元推理文庫) 黒死館殺人事件32014/05/…

夢野久作「ドグラ・マグラ 上」(角川文庫)-1

夢野久作が完成に10年を要し、1935年に自費出版で世に問うた畢生の大作。自分は好みではないので使わないが、「三大奇書」と呼ばれ、その中でもとくに難解といわれている。読破できないとか、理解できないとか言われている。そうか?という疑問をもったうえ…

夢野久作「ドグラ・マグラ 上」(角川文庫)-2

2020/06/05 夢野久作「ドグラ・マグラ 上」(角川文庫)-1 1935年 ここからは若林教授が読ませた原稿綴り。長いぞ、奇態な文章が続くぞ。たぶん多くの読者を挫折させた難所。 このパートは夢野の多彩な文体を楽しまなければならない。すなわち、「私」の標準…

夢野久作「ドグラ・マグラ 下」(角川文庫)-1

2020/06/05 夢野久作「ドグラ・マグラ 上」(角川文庫)-1 1935年2020/06/04 夢野久作「ドグラ・マグラ 上」(角川文庫)-2 1935年 膨大な資料を読み終わると、目の前にいたのは正木教授。今は10月20日であるという。教授室から治療場を見下ろすと、そこには…

夢野久作「ドグラ・マグラ 下」(角川文庫)-2

2020/06/05 夢野久作「ドグラ・マグラ 上」(角川文庫)-1 1935年2020/06/04 夢野久作「ドグラ・マグラ 上」(角川文庫)-2 1935年2020/06/02 夢野久作「ドグラ・マグラ 下」(角川文庫)-1 1935年 というわけで、「ドグラ・マグラ」全巻が幕を閉じる。最後…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1

ダーウィン「種の起源」1858年を読むのは35年ぶり、二回目。前回は長い長い記述にへこたれて、文字を目でトレースしただけだった。ダーウィンの考えはほとんど読み取れなかった。でも、進化論や科学史に興味があったので、そのあと今日までに、多数の進化論…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 リンネ、キュヴィエ、ビュフォン、ラマルクらの18世紀の博物学者やナチュラリストと、彼らより50年後のダーウィンの違いは、生物の知識が圧倒的に増大、地質学その他の他…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 下」(光文社古典新訳文庫)-1

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年 上巻はダーウィンの考えの理論編。下巻(と上巻の一部)は自然淘汰説に対する難題への…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 下 」(光文社古典新訳文庫)-2

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年2020/05/26 チャールズ・ダーウィン「種の起源 下」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 …

エルヴィン・シュレーディンガー「生命とは何か」(岩波文庫)

エルヴィン・シュレーディンガーの生涯と業績はリンク先を参照。20世紀前半の物理学者で、量子力学成立の立役者。 ja.wikipedia.org もとは1944年の講演。この国では1951年に岩波新書ででて、2008年に岩波文庫に入った。すなわち、岩波新書では最新の科学啓…