家族や友人のような二人称で呼び合う相手との付き合いはとても息苦しく重重しいのに、三人称で呼びその一瞬だけで関係が失われるような大衆・民衆にはラスコーリニコフはとても親切になる。 6.ラズミーヒンとゾヒーモフを追い出したあと、ラスコーリニコフ…
2025/01/21 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 上」(岩波文庫)第2部6.7 マルメラードフは死に、ラスコーリニコフを生きていけると確信する 1866年の続き 第2部が終わったところで、ラスコーリニコフが抱えている外側からみた問題を列挙すると1.金貸…
2025/01/20 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 中」(岩波文庫)第3部1.2.3 母と妹はラスコーリニコフの秘密に肉薄し、思いがけない気丈さを示す 1866年の続き 「地下室」で考えていたとき、ラスコーリニコフの思考はそれなりに一貫性と整合性をもってい…
2025/01/17 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 中」(岩波文庫)第3部4.5 ポルフィーリィ、ラスコーリニコフに心理的な罠を仕掛ける 1866年の続き 5(続き).ポルフィーリィは大きく広げた議論を突然地上に降ろす。 ポルフィーリィ「自分を『真の大天才…
2025/01/16 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 中」(岩波文庫)第3部5(続き).6 スヴィドリガイロフの闖入 1866年の続き 第3部までの前半では、ラスコーリニコフは自問自答している。「あれ」「醜悪な計画」を実行するまではどう実行するかばかりを考…
2025/01/14 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 中」(岩波文庫)第4部1.2.3 ドゥーニャがルージンの求婚を拒絶する 1866年の続き ソーニャとの会話。「罪と罰」全体の白眉。 4.午後11時。ラスコーリニコフはソーニャの部屋に行く。ソーニャの部屋は「…
2025/01/13 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 中」(岩波文庫)第4部4 ソーニャはラスコーリニコフに神を問う 1866年の続き ソーニャとの対話で深刻な打撃を受けたラスコーリニコフは、今度は警察の追及を全力でかわさなければならない。 5.翌朝11時…
2025/01/10 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 中」(岩波文庫)第4部5.6 ポルフィーリィ、ラスコーリニコフを追い詰める 1866年の続き 第5部はマルメラードフの葬儀。解説などによると、ドストエフスキーは「罪と罰」の構想は別に、貧しい人々の悲惨を…
2025/01/09 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)第5部1.2.3 ラスコーリニコフはルージンの策略を見破ってソーニャを救う 1866年の続き ソーニャとの二回目の対話。「罪と罰」全体の白眉。いっしょうけんめい読もう。ラスコーリニコフに対…
2025/01/07 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)第5部4 ソーニャはラスコーリニコフにどうすればいいかを伝える 1866年のつづき 物語も終盤にはいる。すでにキャラクターの性格付けは終わっているので、くだくだしい説明はいらなくなり、…
「罪と罰」解説 『罪と罰』(Фёдор Миха́йлович Достое́вский)は『カラマアゾフの兄弟』と並んで、ドストエフスキーの最も代表的な作品として許されているのみならず、その名が古くより人口に膳炎し、広く全世界の読書人の間に普及している意味では、遥かに…
2025/01/06 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)第5部5 辱められ「虐げられた人々」であるカチェリーナが乗りつぶされる 1866年の続き マルメラードフ一家の貧しい人々の話に決着がつき、ラスコーリニコフにはスヴィドリガイロフとポルフ…
2024/12/27 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)第6部1.2 ポルフィーリィ、ラスコーリニコフに謎をかける 1866年に続く ポルフィーリィが思いがけず退場してしまったので、ここからはスヴィドリガイロフとの思想闘争になる。曖昧にしかわ…
2024/12/26 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)第6部3.4 スヴィドリガイロフ、好色で淫蕩な半生を語る 1866年の続き この二つの章はスヴィドリガイロフの物語。受け身だったドゥーニャの思いがけない自己主張がみられる。 5.ふたりは安…
2024/12/24 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)第6部5.6 スヴィドリガイロフ、ドゥーニャに拒絶される 1866年の続き 「家族の縁を切ってきた」しラズミーヒンにもお別れを言ったし、ルージンは故郷にかえってしまい、家長が死んだマルメ…
2024/12/23 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)第6部7.8 ラスコーリニコフは十字架の道を歩む 1866年の続き 第1部から第6部までは13日間の物語(訳者による)。エピローグはその一年半後からはじまる。 1.ラスコーリニコフは裁判で正…
2024/12/20 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)エピローグ 旋毛虫の夢と新しい人間の誕生 1866年の続き 訳者(江川卓)の解説冒頭が松本健一「ドストエフスキーと日本人(朝日選書、レグルス文庫)」のわかりやすい要約になっているので…
2024/12/19 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)感想1 ラスコーリニコフの犯罪はヘイトクライム 1866年の続き かつての読書では、ラスコーリニコフの「罪と罰」とはなにか、「踏み越え」とは何かといっしょけんめいかんがえたものだが、…
2024/12/17 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 下」(岩波文庫)感想2 ラスコーリニコフは家族と定職と金を捨てて「新しい人間」になりたかった 1866年の続き ではどうするか。ここからエピソード以降のラスコーリニコフを空想する。 ラスコーリニコフは…
北村透谷(1868-1894)の「罪と罰」評が青空文庫にあるので、読んでみた。 透谷が読んだのは1892年にでた内田不知庵(魯庵)訳の第1巻。透谷の文章を見ると、第1部までの翻訳。松本健一「ドストエフスキーと日本人」によると、1893年に第2巻がでて中絶。大正…
米川正夫は20世紀初頭にでたロシア文学翻訳者。最初にロシア文学を翻訳したのは二葉亭四迷らだったが、米川はその次の世代。大正時代にでた最初のドストエフスキー全集の翻訳で活動を開始。戦後には個人訳全集を河出書房から出した。「罪と罰」の新潮文庫は1…
ドストエフスキー「罪と罰」で改心のことを考えていて、そういえば改心がテーマの小説に「クリスマスキャロル」があったと思いだし、青空文庫で森田草平による戦前訳を入手した。 だめだ、読めない。ひどい内容だ。スクルージに代表されるユダヤ人が、有形無…
松本健一「ドストエフスキーと日本人」(朝日新聞社)は1990年ころで記述を終えているが、21世紀の章を書けば、本書は必ず登場する。キャラにラスコーリニコフのことを度胸がなかったといわせているくらいだから。他にも「罪と罰」とリンクしている、シンク…
同時期に書かれた「罪と罰」のラスコーリニコフは金には淡白で手元に金を残さなかった。こちらは彼を逆に金にうるさく、汚い人々たちばかり。収入がなく借金をもつことは罰なのか。賭博に興じることは悪なのか。なぜ金は問題になるのか。 再読。前回の感想に…
前作「罪と罰」では、神を超える人間になろうとするラスコーリニコフを描いた。神を超えるために、ラスコーリニコフは女好き、神がかり、金儲け(修道僧ラキーチンがカラマーゾフ家を評したことば)の欲望を自らに禁止した。でもラスコーリニコフの試みは失…
2024/12/05 フョードル・ドストエフスキー「白痴 上」(新潮文庫)第1編1-5 女好き・神がかり・金儲けの欲望を持たない天使人間が汽車にのってペテルブルクにやってくる。 1868年の続き 男が結婚するためには持参金を用意しなければならない。なので好色と…
2024/12/03 フョードル・ドストエフスキー「白痴 上」(新潮文庫)第1編6-11 天使人間、ナスターシャを中心にする三角関係に巻き込まれる。 1868年の続き 第1部の終わりは怒涛の展開。ナスターシャの部屋に人が集まっていて、そこに客が来るごとに事件を持…
2024/12/02 フョードル・ドストエフスキー「白痴 上」(新潮文庫)第1編12-16 ナスターシャの部屋。集まった人々が事件を持ち込み、この世を浄化する炎が舞い上がる。 1868年の続き ムイシュキンはぺテルブルクの街を歩き回る。ラスコーリニコフも歩き回っ…
2024/11/29 フョードル・ドストエフスキー「白痴 上」(新潮文庫)第2編1-5 ロゴージンの前から許嫁の消え、ロゴージンはムイシュキンを襲う。 1868年の続き 新潮文庫の木村浩訳は人名を原文通りにしているようだ。そのために、同一人物がさまざまな名で呼…
2024/11/28 フョードル・ドストエフスキー「白痴 上」(新潮文庫)第2編6-12 金儲けの欲望にまみれた地上の人間は金に執着しない天使人間の前で醜態をさらす。 1868年の続き 現代は英語の「idiot」に相当する言葉。これを「白痴」と強い言葉にしたのはムイ…