odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

矢野久美子「ハンナ・アーレント」(中公新書)

「革命について」(ちくま学芸文庫)に震撼させられたので、ハンナ・アーレントの評伝を読む。振り返ると、自分がもっとも哲学に関心を持っていたのは1980年代だったが、当時アーレントの話題はほとんどなかった。「イェルサレムのアイヒマン」に出てく…

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-1

ハンナ・アーレントの解説本を読む。1998年に出たのを2014年に文庫化。アーレントの本は分厚く、晦渋な文体なので読むのに苦労する(その甲斐はある)。専門家が読んでまとめたものを利用させていただきます。 プロローグ ・・・ 生涯は矢野久美子「ハンナ・…

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-2

2021/12/03 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-1 2014年 第2章は20世紀。国民国家の理念である民族自決権を実施すると、ネーションのほうが国家よりも強くなる。それ以降の分析は以下のサマリーを参照。俺にとって重要なのは、100年以上前の分析…

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-3

2021/12/03 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-1 2014年2021/12/02 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-2 2014年 アーレントはナチスを逃れてアメリカに移住する。永住権を得て、アメリカの大学で教鞭をとるなど、後半生の仕事はアメ…

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-4

2021/12/03 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-1 2014年2021/12/02 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-2 2014年2021/11/30 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-3 2014年 第4章は「人間の条件」を読む。これまでに登場し…

牧野雅彦「精読アレント「全体主義の起源」」(講談社選書メチエ)-1

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)による「全体主義の起源」の要約がとても知的興奮をもたらしたので、別の人による解説書を読む。 序 章 アレントと『全体主義の起源』 ・・・ アレントのいう「全体主義」はファシズムと共産主義を包括する概念…

牧野雅彦「精読アレント「全体主義の起源」」(講談社選書メチエ)-2

2021/11/26 牧野雅彦「精読アレント「全体主義の起源」」(講談社選書メチエ)-1 2015年の続き ここからは20世紀にはいってからの記述。 第三章 帝国主義と国民国家体制の崩壊――『全体主義の起源』第二部「帝国主義」(承前) ・・・ 帝国主義を海洋型(イギ…

牧野雅彦「精読アレント「全体主義の起源」」(講談社選書メチエ)-3

2021/11/26 牧野雅彦「精読アレント「全体主義の起源」」(講談社選書メチエ)-1 2015年2021/11/25 牧野雅彦「精読アレント「全体主義の起源」」(講談社選書メチエ)-2 2015年 WW2の終結によって、巨大な全体主義は潰えた(ということにしておく)。では全…

塩川伸明「民族とネイション」(岩波新書)-1

ヘイトスピーチや民族差別、人種差別の勉強をしていると、民族とナショナリズムがとても重要であると気付く。近代史を読む際に、民族とナショナリズムの視点をもつことで、意味や見え方ががらっと変わる。ファシズムやボリシェヴィズムの全体主義を考えると…

塩川伸明「民族とネイション」(岩波新書)-2

2021/11/19 塩川伸明「民族とネイション」(岩波新書)-1 2008年の続き 以後は20世紀後半。政治的軍事的な世界制覇をもくろむ全体主義はついえて、民族自決と自立が輝かしい理念になる。大帝国が崩れた後、植民地が独立する。その際に、帝国主義の宗主国が作…

ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第1章革命の意味

個別にフランス革命やロシア革命、その他の革命(日本の明治維新を加える)に関する本を読んできた野で、近代の革命の統一イメージを得るためにハンナ・アーレントの本を読む。革命はどうしてもマルクス主義からの記述で読むことになるが、それとはことなる…

ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第2章社会問題

2021/11/16 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第1章革命の意味 1963年 第二章 社会問題1.フランス革命は貧困(からの解放)を政治的目的にした。それは民衆・大衆からの要望・つきあげ。指導者たちの「人間的な自由」の達成は政治目…

ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第3章幸福の追求、第4章創設(1)自由の構成

2021/11/16 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第1章革命の意味 1963年2021/11/15 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第2章社会問題 1963年 第三章 幸福の追求 ここでは公的自由について論じられる。自由にはいくつ…

ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第4章創設(1)自由の構成(続き)、第5章創設(2)時代の新秩序

2021/11/16 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第1章革命の意味 1963年2021/11/15 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第2章社会問題 1963年2021/11/12 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第3章…

ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第6章革命的伝統とその失われた宝-1

2021/11/16 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第1章革命の意味 1963年2021/11/15 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第2章社会問題 1963年2021/11/12 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第3章…

ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第6章革命的伝統とその失われた宝-2

2021/11/16 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第1章革命の意味 1963年2021/11/15 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第2章社会問題 1963年2021/11/12 ハンナ・アーレント「革命について」(ちくま学芸文庫)-第3章…

マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-1

2005年に出した小論集。これだけ密度が高い内容では、サマリーを作るのも素人には難しい。幸いサンデルの薫陶を得た研究者が啓蒙書をだしているので、参考にするとよい。2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年2019/07/18 小林正…

マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-2

2021/11/05 マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-1 2005年 第2部は法律・政治における具体的な道徳を議論する。注目するのは、市場の道徳的な限界。市場が市民生活にかかわると市民道徳が堕落し、公共部門の品位を落とし、非市場の生活領域(…

マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-3

2021/11/05 マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-1 2005年2021/11/04 マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-2 2005年 リベラリズムのさまざまなタイプについてと、リベラリズムとその批判の対決について。 第3部 リベラリズム、…

杉本良男「ガンディー」(平凡社新書)

マハトマ・ガーンディー「真の独立への道」(岩波文庫)1909年を読んだが、ガンディ(表記は揺らぎがあるが、ここでは本書の表記を採用)の考えはよくわからなかった。そこで、2018年にでた評伝を読む。 重視するのは、ガンディの思想のオリジナルを探すので…

米本昌平「バイオポリティクス」(中公新書)-1

1990年代に完了したヒトゲノム解析、ES細胞などによって、人体の交配や臓器提供などが実現できる見通しができた。しかしこれは人間の人体観・死生観に大きな影響を及ぼす。一方で、企業は商用化に向けて研究を加速し、南北や国内の経済格差はマイノリティや…

米本昌平「バイオポリティクス」(中公新書)-2

2021/10/29 米本昌平「バイオポリティクス」(中公新書)-1 2006年の続き 後半はより政治に近い問題になる。人体のパーツが商品化されて(輸血や角膜移植などで古くから使われていた)、グローバルな経済圏を作っていることと経済格差を原因とする人体棄損が…

内田亮子「生命をつなぐ進化のふしぎ」(ちくま新書)

生物人類学、進化生物学、行動進化学など1990年以降に生まれた科学の新分野の紹介。かつてはおおざっぱに動物行動学とでもされていた研究を細分化すると同時に、「動物行動学」が内包していた差別や蔑視などをのぞこうとする(どこかで読んだが、「動物行動…

坂巻哲也「隣のボノボ」(京都大学学術出版会)

以前ピグミーチンパンジーと呼ばれていた類人猿は今ボノボと呼ばれる。体格はチンパンジーに似ているが、詳細にみると違いがあるし、行動がとても異なる。この類人猿がほとんど知られていないのは、生息域はコンゴ(旧ザイール)の一部に限られ、秘境にある…

アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」(新潮文庫)

カリブ海の島にある漁村。WW2のころは活気があったが、大資本の沿岸漁業がでるようになって、小舟による漁はさびれるばかり。若者は島を出ていき、中年以上の漁師しか残っていない。そこにいる老人は84日の不漁に出会っていた。あまりの運のなさに、手伝いの…

ロバート・マキャモン「ナイトボート」(角川文庫)

マキャモンの出版第3作長編(書かれたのは2番目)。 カリブ海のコキーナ島。戦時中は造船と修理で儲かったものだが、今(1970年代後半)は仕事がない。観光客も来ない。心に傷を負ったアメリカ人がつぶれそうなホテルを居抜きで買って経営しているが、心は晴…

ウィリアム・アイリッシュ「夜は千の目を持つ」(創元推理文庫)

大富豪で資産家に最近雇われたメイドがおかしなことを口にした。「主人が飛行機に乗るのをやめるように」。実際に予約していた飛行機が墜落した(当時はさまざまな技術不足などで、墜落事故が頻発していた)。しかし、搭乗直前にとどいた電報で思いとどまっ…

パーシヴァル・ワイルド「探偵術教えます」(ちくま文庫)

ワイルドが1940年代に書いた連作短編集。「エラリー・クイーン」の片割れダネイの寄与もあったという(エラリー・クイーン「クイーン談話室」(国書刊行会) で言及されていたと解説にあったが、全然記憶にないや)。単行本になったのは1947年。 田舎町のお…

パーシヴァル・ワイルド「検死審問ふたたび」(創元推理文庫)

おお、面白かった。さて、感想を書こうかとおもって、前作のエントリーをみてみたら、すでに言いたいことが書いてある。これは困った。パーシヴァル・ワイルド「検死審問」(創元推理文庫) コネティカットの田舎町トーントンのさらに町はずれにある古い家を…

パトリック・クェンティン「女郎蜘蛛」(創元推理文庫)

ニューヨークの演劇プロデューサーはあるパーティで作家志望の若い娘に引かれる。数回断られた後、デートに成功すると、彼女の境遇が惨めだったので、妻が旅行で不在になる間自宅を仕事場に使うように進めた。仕事は順調に進んでいるようだった。妻の帰国を…