odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

與那覇潤「中国化する日本」(文芸春秋社)-1

最初に近世にはいったのはヨーロッパではなくて(まずそこで驚きになる)、イスラムであるが続いて宋時代の中国が近世を迎えた。ここで「な、なんだって」と絶叫したくなるが、それにとどまらない。いち早く近世にはいった中国は「中国化」していき、近隣地…

與那覇潤「中国化する日本」(文芸春秋社)-2

2021/04/13 與那覇潤「中国化する日本」(文芸春秋社)-1 2010年の続き 「江戸時代化」という概念でみえてくるのはたくさんあるので、概要を紹介。基本的には「中国化」の真逆なありかた。したがって、1.権威と権力の分離: 天皇の権威と権力保有者が別。…

北島正元「日本の歴史18 幕藩制の苦悶」(中公文庫)-1

1780年から1840年ころまで。時代小説、時代劇などはだいたいこの時代を扱う。これらのフィクションを通じて日本のいにしえのイメージが形成されている。町民の仲睦まじい清貧な暮らしに、庶民思いの大名や老中、利権をむさぼる悪代官に悪商人というもの。そ…

北島正元「日本の歴史18 幕藩制の苦悶」(中公文庫)-2

2021/04/06 小西四郎「日本の歴史19 開国と攘夷」(中公文庫) の続き この時代に起きた政治的な事件として、蛮社の獄1839年と大塩平八郎の乱1837年が有名。いずれも現政府によって徹底的に弾圧され、首謀者は自死を選ばされる。このような大衆嫌悪・民衆嫌…

小西四郎「日本の歴史19 開国と攘夷」(中公文庫)

ご他聞にもれず俺もまた司馬遼太郎「竜馬が行く」で明治維新にかぶれたのであって、17-18歳の時に明治維新に関連する小説・新書を数十冊読んでいたのである。奇妙なことに、他の作家や歴史家の本を読むほどに、明治維新は「竜馬が行く」とは別の様相を示して…

井上清「日本の歴史20 明治維新」(中公文庫)-1

本書では、大政奉還から西南の役までの10年間を扱う。通常、映画やドラマで「明治維新」を扱うときは大政奉還までで、「封建制力による人民の圧政を主に西国の士族が打倒(ここで「革命」は使わない)した」で終わりにする。しかし、歴史はとどまらないので…

井上清「日本の歴史20 明治維新」(中公文庫)-2

2021/04/05 井上清「日本の歴史20 明治維新」(中公文庫)-1 の続き 明治のゼロ年代で注目しなけらばならないのは、征韓論。明治政府は開国を実行したが、それは幕府時代からの諸外国の圧力、影響にあったため。英仏は日本を領土化しようとはしなかったが(俺…

笠原英彦「明治天皇」(中公新書)

飛鳥井雅道「明治大帝」(ちくま学芸文庫)を読んだのが20年近く前。明治天皇の事績を忘れてしまったので、今度は別書を読む。 明治天皇は1852年生まれ1912年没。享年60歳。外国との接触を極度に恐れる孝明天皇の子として生まれる。1840-42…

色川大吉「日本の歴史21 近代国家の出発」(中公文庫)-1

徳川幕府をクーデターで打倒した下級武士連中。「明治維新」と御大層な名代をあげたが、さっそく二派に分裂して、永久革命志向の西郷派を弾圧、殲滅する。それと同時に、「維新」の元勲として大政治家であった大久保、桂が死去して、リーダーを失ったのであ…

色川大吉「日本の歴史21 近代国家の出発」(中公文庫)-2

2021/03/30 色川大吉「日本の歴史21 近代国家の出発」(中公文庫)-1 の続き この時代に西洋諸国が日本に介入することが少なかったのは、ヨーロッパでの帝国主義競争が激しくなったため。英ロ、普仏の間に戦争があり、植民地での紛争も頻繁に起きていた。そ…

井上幸治「秩父事件」(中公新書)

日本史を勉強していて困惑するのは、市民蜂起がほとんど現れないこと。なるほど日露戦争の停戦協定後の暴動や米騒動、1970年の国際反戦デーなどが散見されるが、これらは一時的な騒乱で組織もリーダーもない。警察や軍隊が出動するとすぐに収まった。そうす…

隅谷三喜男「日本の歴史22 大日本帝国の試練」(中公文庫)-1

大日本帝国憲法発布(1889年)から明治天皇の死(1912年)まで。だいたい司馬遼太郎「坂の上の雲」と一致する時代を描いているが、司馬の小説は記述漏れが多く、小説の通りに近代国家が強化されたとみてはならない。多くの保守論陣はこの時代を懐かしむので…

隅谷三喜男「日本の歴史22 大日本帝国の試練」(中公文庫)-2

2021/03/25 隅谷三喜男「日本の歴史22 大日本帝国の試練」(中公文庫)-1 の続き 明治維新のあと、絶対君主国家を作りたいと思う士族グループ(藩閥)は、工業化を目指すが、そのための資金がない。そこで国民の大多数である農民から税金を取り上げて、工業…

石川啄木「評論集」(青空文庫)

石川啄木の創作にはほとんど興味はないが、彼の評論などを読む。青空文庫に収録されているものから、それらしいのを適当に選択した。 渋民村より 1904 ・・・ 4/28、29、30、5/1の岩手日報に掲載。啄木19歳。日露戦役が開かれて緒戦の勝利(露軍の戦略的後退…

木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-1

日本人は第一次世界大戦(名称は揺れ動きあり)になじみがない。戦闘に加わらず、大戦景気で好況にあったから。「最小のコストで最大の利益を上げた」と言われるゆえん。しかし欧州各国にとっては、ナショナルアイデンティティにかかわる重要な戦争であった…

木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-2

2021/03/19 木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-1 2014年の続き 1917年は重要な転機。 ひとつはロシア革命。この年の2月革命でロマノフ朝が倒される。きっかけは都市民による食料要求デモだった。ロシアは食糧輸出国で国内の備蓄は潤沢だったが、軍隊…

今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1

1913年から1925年にかけて。大正時代を扱う。タイトルは「大正デモクラシー」であるが、そこにフォーカスしてこの時代を見るのは危険。21世紀の10年代の言葉でいえば、日本が「ネトウヨ化」していく過程となる。すなわち、政・官・財がそろってネトウヨ化し…

今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-2

2021/03/16 今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1 の続き 大正時代には、軍や官僚が植民地や軍隊駐屯地でさまざまな策謀をめぐらした。その名をみると、東京軍事裁判で起訴された軍人や政治家(吉田茂もいた)の名前が頻出する。彼らは…

吉村昭「関東大震災」(文春文庫)

関東大震災の被害は、小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま学芸文庫)で。odd-hatch.hatenablog.jp と言いながら、テキストでないと伝わらない情報もある。本書の指摘を抜き書きで。 ・震災による家屋の倒壊や火災(出火の原因は薬品由来という。学校、…

小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま学芸文庫)

初出2003年は関東大震災から80年目(阪神大震災から8年目)。その節目の年に編集された。震災記念館(だったか?)の設立準備中に、震災直後に撮影されたネガフィルムと焼き付けが大量に見つかった。それまでは引用で見ていた写真のオリジナルが発見されたの…

江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-1

松田道雄「世界の歴史22 ロシアの革命」(河出文庫)の記述がほぼロシアに限定されていたので、こちらので20世紀初頭(1914-1929年)までの状況を確認する。 重要なできごとは第一次大戦(WW1)。三国協商と三国同盟の対決とされるが、むしろ19世紀の帝国主…

江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-2

2021/03/09 江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-1 の続き 第一次大戦(WW1)はおもにヨーロッパと大西洋で戦われたので、東アジアは政治的・経済的な空白ができた。そこに入り込んだのが日本。日露戦争のあと、帝政ロシアと協力関係に…

林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-1

原著は1966年(ということは1913年生まれの林健太郎が53歳の時の著作)。1976年に講談社学術文庫に収録。もとは文芸春秋の「大世界史」第22巻。この後に1930年代を書いた本があるので、記述は1933年まで。多くの戦間期の本は1933年のナチス政権以後にフォー…

林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-2

2021/03/05 林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-1 1976年の続き WW1の総力戦は、動員された労働者、下層階級の力を大きくする。専制国家が打倒されたこともあり、貴族政は後退(貴族が資産を失ったのも大きい)。戦後はインフレと帰還兵士の失業…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1

1926年から1936年までの昭和ゼロ年代。大正デモクラシーは「内には民本主義、外には帝国主義」であったが、この10年間で内はファシズムになった。 驚くべきことは、ファシズム体制が完成するまでに、象徴的な事件もカリスマ的な人物もでてこないこと。メルク…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 の続き 20世紀前半の国内政治がわかりにくいのは、元老だの元老院だのがあり、選挙で選出されていないものが政治的な決定を下すことができ、首相にいたっては天皇の裁可がないと組閣がで…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-3

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 2021/03/01 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2 の続き 経済で重要なのは、関東大震災の復興事業と金解禁、世界不況。前二つは、別に読んだ本のエントリーに詳述した…

エーリヒ・マティアス「なぜヒトラーを阻止できなかったか」(岩波現代選書)

WW2敗戦後、まず哲学者が表題の反省をした。ヤスパースやマイネッケ(「ドイツの悲劇」中公文庫)、マックス・ピカート(「沈黙の世界」みすず書房)を読んだ記憶がある。ドイツ精神を問題にした抽象的な議論のあとに、社会学や政治学から反省の書が出た。こ…

ドロレス・イバルリ「奴らを通すな―スペイン市民戦争の背景」(同時代社)

2015年の夏、国会議事堂前の安保法制反対街宣で「ノー・パサラン」のコールが起きた。「ノー・パサラン」は「奴らを通すな!」(¡No pasarán!)という意味で、ファシズムに抗する人たちの世界共通のスローガン。20世紀の初めから多くの人が発してきたが、有名…

林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-1

226事件終了後から敗戦まで。1936年から1945年までの10年間。 東アジアに日本主導のブロック経済圏をつくり、先進国の仲間入りをすること。これくらいが日本の国家目標であって、ブロック経済圏構想はおもに陸軍によって実施運営されることになった。軍事に…