後半は近世と近代の神道。儒教や国学の影響や反発において神道の流派が生まれる。 神儒一致の神道 ・・・ 近世の神道は儒学を取り入れて体系化した。その例を山崎闇斎の垂加神道にみる。この神道では朱子学の厳しい上下関係が特長であり、下たる者の道である…
「武士」という階級は誤解されているので、以下の最新研究で補完しておこう。この特殊な職業・階級は最大時でも人口の数パーセントでしかない。大雑把に言えば、士芸を生業とするものは奈良時代からいた。平安中期の9~10世紀ころに武芸の専門家として生まれ…
2024/07/25 菅野覚明「武士道の逆襲」(講談社現代新書)-1 人を切ってトラブル処理する特殊な少数集団の武士道は日本庶民の徳目とは無関係。 2004年の続き テキストがないために、同時期の説話や物語、歴史のエピソードから中世期の武士道を抽出する。それ…
列島の国家は連続しているのではなく、古代国家の衰滅後、空白期間(だいたい14~15世紀)があり、権力は断絶している。16世紀後半に江戸幕府ができて、全土に徹底する中央集権国家ができた。朝廷の公の支配があったとされるが、この空白期間以後は精神的で…
明治維新をイギリスやフランス、アメリカなどの欧米革命と比較しない。ではなく20世紀の開発独裁体制と比較する。そうすると、明治維新は後進国が先進国にキャッチアップできたという極めてまれな「革命」といえる。開発独裁では、政変他は過激で、前政権の…
教科書ではほとんど触れられない明治政府の神仏分離と廃仏毀釈は巨大な転換であった。政権がなくなり他国との交易が始まるときに不安と弱さを払しょくする代償なのである。自分の関心では、19世紀前半の古式神道の流行からの帰結であり、のちの国家神道や国…
2024/07/18 安丸良夫「神々の明治維新」(岩波新書)-1 新政府の扇動で国学者と神道家と民衆が仏寺だけでなく民俗信仰の対象を破壊した。 1979年の続き 辻達也「江戸時代を考える」(中公新書)によると、16世紀後半から列島に住み人たちの識字率が上がり、…
19世紀の日本史を読書するとき不満になるのは、尊皇攘夷論がどこから出てくるのか説明がないことだ。本書にもない。尊皇と倒幕という革命思想は、主従関係を求める儒教や武士道からはでてこない。 俺のつたない読書から説明するとこうだ。17世紀後半に列島で…
明治30年代には日本人が英文で日本を紹介する本が続けて書かれた。新渡戸稲造「武士道」1899年、岡倉覚三「茶の本」1906年。もうひとつが本書、内村鑑三「代表的日本人」1908年。なぜかの問いは、日本文学の研究者が答えているだろうから、俺は妄想を書く…
1923年9月1日に発生した関東大震災。東京や横浜、鎌倉などの被災地には文士、芸術家が多数すみ、遠方から見舞いに来た者がいて、当時は未成年であったものがいた。彼らの文章は全集を参照しないことにはなかなかめにつかない。著者は長年、関東大震災…
江戸川乱歩には暗号小説がある。「二銭銅貨」、「算盤が恋を語る話」、「孤島の鬼」、「幽麗塔」をすぐにおもいつくが、なんといっても最高の暗号小説は「大金塊」だ。ということが、竹本健治「涙香迷宮」(講談社文庫)にかいてあったので、青空文庫に収録…
20代に羅漢中の「三国志演義」を夢中になって読みふけって、その2か月間の記憶が濃厚に残っている。羅漢中の作を読み返す前に、この国の高名な大衆小説を読もうと考えた。さいわい、有志により電子テキスト化されたものが青空文庫にあるので、この版を手…
昭和10年1935年の日本を描く。やはり中心になるのは、政治団体化した陸軍だ。すなわち、世界恐慌で深刻な不況に襲われ日本は同時期に起きた凶作のために、貧困化・窮乏化が進んだ。政党はビジネス界や産業界の思惑に振り回されて、農業対策と貧困対策はあと…
1965年に出版された本書の冒頭では、この事件に参加した兵士たちが集まって死刑になったものを供養する催しの様子が書かれる。なるほど、1936年におきた政府要人暗殺事件に関与した兵士は20歳そこそこだとすると、1965年には50代半ばを超えたくらいか。…
前回の感想は著者に文句をいっているのか、風俗小説を書いた作家に文句をいっているのかわからないものだった。気になっていたので再読した。 odd-hatch.hatenablog.jp 失望。今後読む必要なし。 日本文学の「自然主義リアリズム」の発展を説明する試み。190…
本書(2018年初出)は前著「永続敗戦論」の続きであり、補完であるらしい。「永続敗戦論」は未読だが、本書第1章から推測すると以下の通り。大日本帝国が敗戦を公布したので、アメリカは占領して戦争を起こさないように体制を変えた。そのやり方は天皇を統合…
先にアニメを見た(おもしろいともつまらないとも)ので、原作を読んだ。1993年初出。 精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢…
ミステリーの現場を拡大する試み。犯罪の動機をわからなくし、被害者の関係をあいまいにし、容疑者を増やすためには、19世紀の大家族は便利だった。しかし21世紀の核家族と個人の孤立化はそのような大集団を作ることが難しい。そこで、寄宿舎、下宿、ホテル…
2014年の作品だが、ずっと懐かしいなあ懐かしいなあと思いながら読んでいた。 実業家のテッドは空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会う。彼は酔った勢いで、妻ミランダの浮気を知ったことを話し「妻を殺したい」と言ってしまう。リリーはミランダは殺されて…
少年ヒュウは友人らといっしょに入ってはいけないところにいき、手にしてはいけない本を見つけた。そこで彼らはミューティの襲撃にあい、命からがら逃げ帰る。老いた〈中尉〉がヒュウに目をかけ、彼を〈科学者〉にする教育を施した。長じたヒュウは再び入っ…
トーヴェ・ヤンソンのムーミンシリーズを「謎とき」風に読む。テキストに書かれていることを頼りに謎や意味を見出そうとする。過去に一通り読んだので、ストーリーのサマリーは作らず、読み達者による興味深い指摘を読む。なので、以下はそれぞれのストーリ…
「ムーミンを読む」ちくま文庫で一冊ごとの分析をしたので、今度はキャラ分析を読む(出版は「ひみつ」が先)。 冒頭のムーミンシリーズのまとめが秀逸。・やさしくわかりやすく、ときとして説明的すぎる。・年齢や欲求に応じて、多重的に読み解く余地を与え…
「ふたつの顔」は多重的。この国ではムーミンはアニメ→児童文学→コミックスの順に知られているが、ヨーロッパではコミックス→アニメ→児童文学の順に知られているそう。アメリカではほとんど人気がない(なのでWWEがフィンランド遠征した時、日本出身のTAJIRI…
キリストの十二弟子の名前を諳んじることはできないが、ペテロとユダは例外的に覚えている。それはこの二人にはとても有名なエピソードがあり、信仰の核に触れるような問題を提起しているから。ことにユダは近代以降、自我の問題をみるようになってさまざま…
聖書は、岡本喜八「肉弾」のセリフのように、「適当に面白くて、適当につまらなくて、どこから読んでもよくて、いつまでたっても読み終わらない本(引用は適当)」として読める。でも、聖書にアクセスしようとすると無数の問題がある。宗教書として読め、読…
古代帝国の中では文献や資料が豊富であり、なによりヨーロッパの前身であるローマ帝国はヨーロッパ中心の世界史では重要な位置を占める。その栄枯盛衰(Rise and Fall)を見て、滅亡した理由を考える。 古代帝国は大陸にいくつもできたが、それとローマ帝国…
よくわかったのは、ヨーロッパはローマ帝国の遺風や遺産を強く意識していて、その後継者であることを誇りにしていること。たとえば皇帝はローマ帝国の制度において成り立つとされるから権威と権力をもてるのだ。しかも勝手に名乗ってはならず公的な手続きを…
普遍史(ユニバーサル・ヒストリー)は聖書の記述に基づいて書かれた世界史。普遍史がかかれるようになったのは、古代ローマ時代で異教とされていたころ。キリスト教護教のために正当性を明かすために書かれた。以後、さまざまな教父が普遍史を記述してきた…
ラマルクの「動物哲学」が電子書籍で入手できると喜んで購入したら、実は邦訳者による解説でした。もとは「岩波書店刊行 大思想文庫23」に収録とのことだが、いつの出版かKINDLEには記載がない。文庫版の「動物哲学」が出たのは1954年。ネットにでてきた「…
レオポルド・ランケは19世紀ドイツの歴史家。1795年に生まれて1886年に亡くなるという当時としては長命な人だった。この国では戦前から知られていた模様。本書の訳者の林健太郎が主要著作を翻訳している。でも、手軽に入手できたのは岩波文庫にあ…