odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

柳澤健「1964年のジャイアント馬場」(二葉文庫)-2

アメリカと日本のプロレスが比較される。大きな違いは、アメリカはレスラーと興行と宣伝は別の組織が行うが、日本では一社が全部行うところ。日本のプロレスは力道山が相撲協会のやりかたをコピーしたため(個人事業主が起業したのでしかたがない)。レスラ…

現代思想2002年2月増刊「プロレス」(青土社)-1

2002年の雑誌「現代思想」の増刊。「現代思想」で「プロレス」とは面妖な。と、首をかしげる前にその前の10年の歴史を振り返る。転換期は1980年代なかばから。 それまで新日本と全日本と国際と全日本女子だけが国内のプロレス団体であった。プロレスを語るこ…

現代思想2002年2月増刊「プロレス」(青土社)-2

2021/01/18 現代思想2002年2月増刊「プロレス」(青土社)-1 2002年の続き 抽象的な思考の論文のあとは、プロレスの現場からの発言や意見。 おおきく5つの問題領域が設定されている。便宜上ABCを俺がつける。A.プロレス空間への招待。B.プロレスの哲学的考…

現代思想2002年2月増刊「プロレス」(青土社)-3

2021/01/18 現代思想2002年2月増刊「プロレス」(青土社)-1 2002年2021/01/15 現代思想2002年2月増刊「プロレス」(青土社)-2 2002年の続き プロレスの現場を見た後に、プロレスの歴史を語る。日本のプロレスができて50年(2002年当時)。それまでは当事者…

山本周五郎「寝ぼけ署長」(新潮文庫)

発表は、各短篇にあるように戦後すぐだが、舞台は戦前。wikiによると内務省時代の官職などがでるという。 五年の在任中、署でも官舎でもぐうぐう寝てばかり。転任が決るや、別れを悲しんで留任を求める市民が押し寄せ大騒ぎ。罪を憎んで人を憎まず、“寝ぼけ…

間羊太郎「ミステリ百科事典」(現代教養文庫)

1963年から雑誌「宝石」に連載されたエッセイ。当時は江戸川乱歩が編集長だった時代(の最後)。連載途中で、出版社が変わった。文庫になったのは1981年。 内容は乱歩の類別トリック集成をもとにして、トピック別に実例を挙げていくというもの。目次を引用す…

福永武彦/中村真一郎/丸谷才一「深夜の散歩」(講談社、創元推理文庫)

いくつかの本の情報を拾ってつないでみると、戦後の探偵小説史はこうなるか。1938年ころに洋書の輸入が禁止され、1941年以降に紙の配給体制が行われて、娯楽雑誌はほぼ廃刊。探偵小説の執筆は禁止され、捕り物帳かスパイ小説くらいしか発表できない。そのと…

日影丈吉「ミステリー食事学」(現代教養文庫)

1972年から74年までミステリー・マガジンに連載したエッセイを1974年に単行本化。そのあと1981年に現代教養文庫で再刊。読んだのはこれ。あいにく現代教養文庫は廃刊になってひさしく、ほかで再刊された様子もないので、入手は難しそう。 本書のはしばしから…

小泉喜美子「殺人はお好き?」(宝島社文庫)

1962年羽田空港。 「アメリカ人私立探偵のロガートはかつての上司の依頼で来日した。上司の妻ユキコが麻薬密売に関係しているらしいというのだ。だがロガートがユキコの尾行を始めた途端、彼女は誘拐されてしまう。ロガートも襲われ、現場には新聞記者の死体…

天藤真「遠きに目ありて」(創元推理文庫)

1976年に雑誌「幻影城」に連載。翌年、単行本で出版(1981年に改訂)。探偵は信一少年。脳性マヒをもっていて、自立運動ができるのは右手の一部。たまたま知り合った現職の刑事が少年に魅了され、毎日のように通う。事件の話を聞いた少年の慧眼が事件を解決…

野阿梓「凶天使」(ハヤカワ文庫)

小説の背景にあるのは、西洋の神秘主義。なので、上帝、天使、女神、竜など霊界の存在が説明抜きで現われ、彼らは地上界と行き来できる。名前はキリスト教由来のものもあれば、イスラム由来、ゲルマンやケルトの神話由来のもいたり。無節操ともいえるが、西…

貫井徳郎「プリズム」(創元推理文庫)

小学校の若い女性教師が自宅で死体で発見される。睡眠薬を飲まされ(ホワイトデーのお返しのチョコレートに混入)、思いアンティークの時計が凶器だった。部屋の窓はガラス切りで開けられていて、複数の人物が事件の前後に侵入したらしい。とりあえずの容疑…

二階堂黎人「名探偵の肖像」(講談社文庫)

1993年発売直後に「聖アウスラ修道院の惨劇」を読んだのだが、エーコ「薔薇の名前」を表層だけなぞると、こんなにうすっぺらになるかと怒って投げ捨て、ずっと読んでいなかった。それから四半世紀をへての再会。 ルパンの慈善 ・・・ ルパン物のパスティーシ…

森谷明子「千年の黙(しじま)」(創元推理文

この国の奈良から平安の王朝を舞台にするのがサブカルで行われるようになったのは、大和和紀「あさきゆめみし」や山岸凉子「日出処の天子」の1980年代初めのころであったか。この森谷明子「千年の黙」2003年は上にあげた漫画に触発されているのではないか、…

東川篤哉「館島」(創元推理文庫)

サマリーを書くのも面倒なので、版元の紹介文を使用。 「天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在…

恩田陸「木漏れ日に泳ぐ魚」(文春文庫)

サマリーを書くのも面倒なので、出版社のものを引用。 舞台は、アパートの一室。登場人物は、一組の男女。あの男の最期の姿、子供の頃の思い出——夜を徹して語り合ううち、共有する過去の風景に違和感が混じり始める。2人の会話のみで展開する濃密な心理戦、…

柳広司「はじまりの島」(創元推理文庫)

一時期進化論の本をある程度読んだので、ダーウィンは気難しく偏屈で陰気な人物というイメージを持っている。なので、本書にでてくる20代前半のダーウィンの快活さや他者への配慮、なにより活動的な社交性には違和感があった。でも最終章で、引きこもりにな…

柳広司「吾輩はシャーロック・ホームズである」(角川文庫)

夏目漱石はロンドン留学中に「猛烈の神経衰弱」にかかり、友人・知人はとても心配していた。その時、夏目は心理療法として通俗文学を読みふけり、おりからの流行小説である「シャーローク・ホームズ」譚に入れ込んだ。日常のふるまいから言葉使いまでホーム…

柳広司「キング&クイーン」(講談社文庫)

版元の紹介文はざつなので、amazonのものを利用。 「「巨大な敵に狙われている」。元警視庁SPの冬木安奈は、チェスの世界王者アンディ・ウォーカーの護衛依頼を受けた。謎めいた任務に就いた安奈を次々と奇妙な「事故」が襲う。アンディを狙うのは一体誰なの…

有川浩「明日の子供たち」(幻冬舎文庫)

児童養護施設は児童福祉法によると、「児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童など、環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設」だとのこと(w…

黒川博行「破門」(角川文庫)

中年の建設コンサルタントがいる。新規プロジェクトの際には、土地の買収やら建築会社の人夫手配やらのもめごとがあり、それの解決には大阪という土地柄やくざの力を借りねばならない。そのためやくざと腐れ縁ができ、時々持ち込まれてくる儲け話はいつもも…

周木律「五覚堂の殺人」(講談社文庫)

「堂」シリーズの第3作という。これを最初に読んだので、背景がよくわからない。たぶん沼四郎なる建築家がたてた奇妙な建物で独立した殺人事件がおきる。事件がおきると、善知鳥神(うとうかみ)という女性が十和田只人(ただひと)というエルデシュ(ポール…

湊かなえ「ユートピア」(集英社文庫)

都会の人たちが田舎暮らしにあこがれる。その町のはずれには、芸術家が集まる一角があって、創作と販売の活動を行っていた。街の人々も緩く支援している。でも、何ごとかを起こすと波風がたつ。それも、かつて殺人事件が起こり、その犯人のひとりが逃亡して…

湊かなえ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(光文社文庫)

事件に巻き込まれたり、事件の当事者を知っている女性のナラティブ。 マイディアレスト ・・・ 妊婦殺害事件の調査聞き取りの記録。父の存在が薄く、独占欲の強い母にネグレクトされ、勘気の強い妹にバカにされている、空想癖のある女性。疎外が強まるにつれ…

村田沙耶香「コンビニ人間」(文春文庫)

感想が書きにくいなあ。悪口をいいだしたらとめどなくなりそうだけど、そうすると自分の社会や他人に対する偏見をあらわにすることになりそう。なので、ブッキッシュな話題で韜晦することにしよう。 他人と道徳や規範を共有していなくて、他者危害をしてしま…

池井戸潤「アキラとあきら」(徳間文庫)

零細工場の息子・山崎瑛と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向…

佐伯泰英「万両ノ雪 居眠り磐音(二十三)決定版」(文春文庫

新聞広告でこのシリーズの宣伝が派手に行われているのを見てきたが、興味をひかれたことはない。なぜか手元に回ってきたので、読んでみた。このシリーズの23巻ということだが、その前がどうなっているかは知らない。 「磐音不在の江戸を島抜け一味が狙う!/…

東野圭吾「虚ろな十字架」(光文社)

サマリーをしっかり書く気にならないので、wikiを参照。あいにく出版社の紹介ページに書かれたものは雑すぎて引用に堪えない。 「11年前、娘を強盗に殺害された中原道正は、当時の担当刑事だった佐山の訪問を受け、今度は離婚した元妻の小夜子までも刺殺され…

東野圭吾「人魚の眠る家」(幻冬舎文庫)

医療用機械を製造しているメーカーの社長一家。円満な夫婦に見えたが、亀裂がある。離婚しようかという話のさなか、娘4歳がプールでおぼれ脳死と判定された。脳死を認められない妻は、娘を引き取って介護をし、社長は自社の開発チームの一部を娘の機能回復を…

エルンスト・F・シューマッハー「スモール イズ  ビューティフル」(講談社学術文庫)

10年前の初読では経済学にしては分析が甘いし、哲学にしては考えが粗雑で保守的だし、どこがベストセラーになったのか不思議に思ったものだ。今回の再読では、ある程度理由が分かった。 シューマッハは1911年ドイツのボン生まれ。経済学を学び、のちにケイン…