odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

吉田秀和

吉田秀和 INDEX

2015/10/30 吉田秀和「主題と変奏」(中公文庫) 2012/05/30 吉田秀和「音楽紀行」(中公文庫) 2015/10/29 吉田秀和「二十世紀の音楽」(岩波新書) 2015/10/28 吉田秀和「LP300選」(新潮文庫) 2015/10/26 吉田秀和「今日の演奏と演奏家」(音楽之友社…

吉田秀和「モーツァルト」(講談社学術文庫) モーツァルト紹介の文章としては極めて初期のもの。多面性・多義性を浮かび上がらせるものではないので、好事家向け。

モーツァルト没後200年を控えた1970年にそれまで著者が書いてきたモーツァルト関連の文章をまとめたもの。 2章と3章に集められた文章はほかの本に収録されたことがある。気づいたものは書いておいた。ピアノソナタに関するものは「世界のピアニスト」に入…

ロベルト・シューマン「音楽と音楽家」(岩波文庫) 19世紀のドイツの音楽趣味に方向付けをした評論集。

ロベルト・シューマンは1810年生まれで、1856年に若くして亡くなった。彼の作品だと、ピアノソロの曲と歌曲が代表になるのかな。「クライスレリアーナ」とか「幻想曲」、「詩人の恋」あたり。人によっては大規模作品の「楽園とペリ」を推すこともある。自分…

吉田秀和「主題と変奏」(中公文庫) 1952年初出の最初の論文集。スタイルを確立していない時期の生硬で観念的な文章。

著者の最初の論文集。1952年に初出。中公文庫に収められたのは1977年。 ロベルト・シューマン 1950・・・ ロベルト・シューマンの特異性について。普通の書き方と異なって、たんに生涯と作品をなぞるのではなく、あわせて、ロマン派音楽についての省察、音楽…

吉田秀和「二十世紀の音楽」(岩波新書) 1957年にみた前衛音楽のレポート。社会学やテクノロジーを音楽評論に入れるようになった。

振り返ると1950年代は古典(クラシック)音楽と現代(コンテンポラリー)音楽の転換点だった。後追いでそれはわかるのであって、その渦中にある者にとっては期待するものであったり、唾棄するものであったり、実験であったり、でたらめであったりしたのだろ…

吉田秀和「LP300選」(新潮文庫) レコードを集めながら西洋音楽史を勉強しよう。

1962年初出。1980年ごろに新潮文庫に収録される際に、付録のレコードガイドを大幅に改訂した。1970年代の趣味(ピリオドアプローチがない、戦前の巨匠が存命など)がとてもよくわかるリストなので、若いクラシックオタクは参考にしてください。 名称の背景に…

吉田秀和「ソロモンの歌」(朝日文庫) 「上手に思い出す」名人が戦前に交友した文学者を回想する。

本人は「上手に思い出すのは難しい」と小林秀雄の言に賛成するのだが、どうして、こうやって作者の書いたものを読むと、「上手に思い出す」名人だなあと思う。彼が思いだすのは、戦前の知り合いとの付き合いだし、過去に聞いた音だし、かつて口ずさんだ詩な…

吉田秀和「今日の演奏と演奏家」(音楽之友社) 1970年のクラシック音楽界概観。著者の文章から観念が消え、比喩で音楽を語るようになった。

1967年から翌年にかけての1年間、著者はベルリンに在住した。この1年間に、ベルリンのコンサートに頻繁にいくわ、演奏家・批評家ほかの音楽関係者と交友するわと大活躍。この期間の経験は忘れがたい印象を残したのか、後年のエッセイでしばしば語られる。 内…

吉田秀和「ヨーロッパの響、ヨーロッパの姿」(中公文庫) 1967-68年にかけてベルリンに滞在していたときの記録。吉田が愛好する芸術を支援する階層がいなくなり、芸術も産業に代わりつつある。

1967-68年にかけてベルリンに滞在していたときの記録。現地に住み、プラハやウィーン、ザルツブルグにもいく。当時のベルリンは壁に囲まれていて、町をでるには飛行機に乗るしかない。その手続きを含めて、50代前半の著者は精力的によくうごく。それにこの時…

吉田秀和「世界の指揮者」(新潮文庫) 20世紀半ばの指揮者を概観。21世紀のおたくはここに載っていない指揮者に興味を持つ。

初出の時から繰り返し読んだので、何回目の再読なのか回数はわからない。クラシック音楽を聴き始めた時に出版されたので、そのあとの音源集めの参考にした。まあ、この本の指揮者のもの、できれば本文で取り上げられたものを購入する、ということをしていた…

吉田秀和「世界のピアニスト」(新潮文庫) 20世紀半ばでのピアニストの概観。著者が感じる美点は21世紀には欠点に見えてくる。

初出は1976年で文庫化は1983年。出たと同時に読んでずいぶん感心した。でも、そのころはピアノの音楽が好きではなかったので(わからなかったので)、勉強用にはしなかったと思う。なにしろ、ここに登場する59人のピアニストの多くはすでになくなっていたし…

吉田秀和「私の好きな曲」(新潮文庫) クラシック中級者になるためのケーススタディを集めたファンの必読書。

まず「LP300選(名曲300選)」を参考にクラシック音楽を聞き出した。5年もすると、300タイトルの多くを聴くことができた。いくつかは難攻不落のような難しさ(たとえばワーグナーの楽劇とかバッハの受難曲とか)もあったが、とりあえずクラシックの大海の概要…

吉田秀和「響きと鏡」(中公文庫) 1980年ころ「西洋に追いつき追い越せ」が達成されると、知的エリートは「日本の伝統」を再発見する。

著者の仕事のなかでは、内容の充実していることで傑出している。著者が主に対象にする西洋古典音楽について、自分もそれなりの聴取体験と勉強を重ねてきたので、必ずしも著者の意見に賛同できなくなっているのだが、このエッセイのように音楽の他のことを書…

吉田秀和「音楽の旅・絵の旅」(中公文庫) 1976年シェロー演出ブレーズ指揮の「指輪」に教養主義者が受けた衝撃。

中年を過ぎた時に敗戦になり、しばらくして渡航が制限付きでもできるようになったとき、この評論家は1954年のヨーロッパにでかけた。ニューヨークのトスカニーニとセル体験、パリのフルトヴェングラー体験などあっても、バイロイト音楽祭が中心であったのだ…

吉田秀和「音楽紀行」(中公文庫) 占領解除後に最初に海外旅行した知的エリートの西洋見聞記。どうしたら西洋に追いつけるかが課題。

1953年から54年にかけてアメリカと西ヨーロッパを見聞した記録。占領状態が終わって海外渡航が可能になったとはいえ、外貨の持ち出しに制限があったり、通貨レートが高すぎるなどして、まだまだ国を出るのが難しかった時代。海外情報を得るには、こうした選…

吉田秀和「レコードのモーツァルト」(中公文庫) 1972年から1974年にかけての演奏状況。巨匠をめでるより新人を見つけることに喜びを楽しみを持つ。

所収のエッセーが書かれたのは1972年から1974年にかけて。こうして再読すると、その時代がクラッシック音楽の演奏と需要に変化をもたらしていたことがわかる、1980年以降の古楽器ムーブメントからするとインパクトの小さいものであったかもしれないけれど。…

吉田秀和「ブラームスの音楽と生涯」(音楽之友社) 教養主義者は全集を読み、全曲を聞く。

クラシック音楽評論の第一人者で、文化勲章受章者、水戸芸術館館長の吉田秀和(よしだ・ひでかず)氏が22日午後9時、急性心不全のため神奈川県鎌倉市の自宅で死去した。 98歳。24日に密葬が執り行われた。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=2012052…