odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

歴史・地理

木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-1

日本人は第一次世界大戦(名称は揺れ動きあり)になじみがない。戦闘に加わらず、大戦景気で好況にあったから。「最小のコストで最大の利益を上げた」と言われるゆえん。しかし欧州各国にとっては、ナショナルアイデンティティにかかわる重要な戦争であった…

木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-2

2021/03/19 木村靖二「第一次世界大戦」(ちくま新書)-1 2014年の続き 1917年は重要な転機。 ひとつはロシア革命。この年の2月革命でロマノフ朝が倒される。きっかけは都市民による食料要求デモだった。ロシアは食糧輸出国で国内の備蓄は潤沢だったが、軍隊…

江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-1

松田道雄「世界の歴史22 ロシアの革命」(河出文庫)の記述がほぼロシアに限定されていたので、こちらので20世紀初頭(1914-1929年)までの状況を確認する。 重要なできごとは第一次大戦(WW1)。三国協商と三国同盟の対決とされるが、むしろ19世紀の帝国主…

江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-2

2021/03/09 江口朴郎「世界の歴史14 第一次大戦後の世界」(中公文庫)-1 の続き 第一次大戦(WW1)はおもにヨーロッパと大西洋で戦われたので、東アジアは政治的・経済的な空白ができた。そこに入り込んだのが日本。日露戦争のあと、帝政ロシアと協力関係に…

林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-1

原著は1966年(ということは1913年生まれの林健太郎が53歳の時の著作)。1976年に講談社学術文庫に収録。もとは文芸春秋の「大世界史」第22巻。この後に1930年代を書いた本があるので、記述は1933年まで。多くの戦間期の本は1933年のナチス政権以後にフォー…

林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-2

2021/03/05 林健太郎「両大戦間の世界」(講談社学術文庫)-1 1976年の続き WW1の総力戦は、動員された労働者、下層階級の力を大きくする。専制国家が打倒されたこともあり、貴族政は後退(貴族が資産を失ったのも大きい)。戦後はインフレと帰還兵士の失業…

エーリヒ・マティアス「なぜヒトラーを阻止できなかったか」(岩波現代選書)

WW2敗戦後、まず哲学者が表題の反省をした。ヤスパースやマイネッケ(「ドイツの悲劇」中公文庫)、マックス・ピカート(「沈黙の世界」みすず書房)を読んだ記憶がある。ドイツ精神を問題にした抽象的な議論のあとに、社会学や政治学から反省の書が出た。こ…

村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-1

1929年から1945年。1920年代の緊張緩和は1929年アメリカ発の成果不況によって破られる。これによると、アメリカ経済は数年前から不調になっていたが、株価だけが高騰。株価の下落によってアメリカの経済が沈滞。アメリカの企業はヨーロッパ、南アメリカ、東…

村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-2

2021/02/02 村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-1 の続き。 日本は1930年代から一種の鎖国をするようになり、権力の情報統制があったので、諸外国の実情はわからないようになっていた。敗戦とスターリンの死によって、ふたつの巨…

堀江則雄「ユーラシア胎動」(岩波新書)

ユーラシアという概念は1970年代ころかと思っていたら、1920年代ロシア知識人からでたそう。スターリン時代に弾圧されて封印されたが、1990年以降に具体的な経済圏構想として誕生した。2000年にユーラシア経済共同体がロシア、中国、中央アジア各国(旧ソ連…

河部利夫「世界の歴史18 東南アジア」(河出文庫)

東南アジアは近いのに、この国の人からは等閑視されている。観光やビジネスで行くことはあっても、文化を知るまでにはなかなかいかない。1941-45年のこの国による占領とその影響は忘れられつつある(なにしろ、日本の帝国主義的植民地化を「アジアの解放」と…

岩村忍 他「世界の歴史19 インドと中近東」(河出文庫)

トルコ、イラン、インドの中世と近代史。もうしわけないが、この場所と時代に関する興味をもっていないので、どうにもつらい読書。なにしろ、それぞれの地域には巨大帝国があったとはいえ、宮廷内の内紛とクーデター、王朝の交代ばかり。個々の皇帝の個性や…

佐藤圭四朗「世界の歴史06 古代インド」(河出文庫)

土地と歴史に勘が働かない上、現在のインドをよく知らないので、おざなりな感想になることを事前報告。 この文明の成立した一帯は海からも陸からも行くのが便利な交通の要地であった。農業生産よりも貿易の拠点として、人と物と富が集積した場所のよう。紀元…

前嶋信次「世界の歴史08 イスラム世界」(河出文庫)

2016/03/25 岸本通夫/伴康哉/富村伝「世界の歴史02 古代オリエント」(河出文庫) ここでは紀元3世紀から15世紀までのイスラム世界を描く。おおよそでいうと、ローマ帝国が弱体化し、インドのクシャーナ帝国の支配も弱まりササン朝ペルシャが成立して、オス…

ハインリヒ・シュリーマン「古代への情熱」(新潮文庫)

ハインリヒ・シュリーマンは立身出世の人。高等教育を受けることができず、丁稚奉公から事業で成功し、幼少時代からの夢を実現した。その社会的成功、学問の達成、語学の天才、克己と自己実現は子供向けの伝奇としてよく読まれた。 この「古代への情熱」は高…

田中眞「世界史夜話」(文健書房)

これはたぶん入手困難な一冊。1958年、昭和33年に出たのがその理由であるし、執筆者が高校教師で雑誌「高校時代」と「英語研究」に連載された文章をまとめたものだから。余談になるが、戦後に学研と旺文社がずっと受験雑誌を出していて、世の高校生は受験な…

桑原武夫「世界の歴史24 戦後の世界」(河出文庫)

前の巻の「第2次世界大戦」の記述は1953年の朝鮮戦争終結までを記載した(まえがきによる。自分は23巻は未読)。第2次世界大戦を1953年まで拡大する見方は刺激的で、事態をはっきりさせる区分だと思った。すなわちこの国では戦中と戦後を昭和20年1945年8月…

中山治一「世界の歴史21 帝国主義の開幕」(河出文庫)-2

2018/03/08 中山治一「世界の歴史21 帝国主義の開幕」(河出文庫)-1 安定と均衡の19世紀末。その均衡を破るのは、ふたつの周縁。ひとつはヨーロッパという地域の周縁で外部とつながっているところ。すなわちバルカン半島。強大国トルコの衰勢で、この地域の…

中山治一「世界の歴史21 帝国主義の開幕」(河出文庫)-1

岩間徹「世界の歴史16 ヨーロッパの栄光」(河出文庫)に続く「長すぎる19世紀」の後半。1870年ころから1921年のワシントン会議まで。19世紀が終わるにあたり、ロシア革命という重要なイベントがあったが、それは松田道雄「世界の歴史22 ロシアの革命」(河…

岩間徹「世界の歴史16 ヨーロッパの栄光」(河出文庫)

フランス革命で開幕した長いヨーロッパの19世紀をこの本でさらに圧縮しすると、18世紀までの絶対王政がブルジョア・市民などの新しい階層の人々によって民族主義と自由主義の国家に変化していく過程であるといえる。ナポレオンのあと王政、帝政へのバックラ…

河野健二「世界の歴史15 フランス革命」(河出文庫)-2

2018/03/02 河野健二「世界の歴史15 フランス革命」(河出文庫)-1 (以下は若書き。かっこ内が再読時の補足) まとめでパトリオティズムとナショナリズムの違いを説明している。前者は郷土や地縁などに根ざした感情に由来するもので、後者は国家(国民=ネ…

河野健二「世界の歴史15 フランス革命」(河出文庫)-1

本書のテーマはタイトル通りであって、1789年から1815年までを扱う。この前の今井宏「世界の歴史13 絶対君主の時代」(河出文庫)が1700年ころで記述を終えているので、約90年の間にヨーロッパで何が起きたかはこの叢書でははっきりしない。 わずかながら記…

今井宏「世界の歴史13 絶対君主の時代」(河出文庫)

だいたい1550年から1750年までのヨーロッパを扱う。自分はクラシックオタクなので、この時代はバロック音楽であるからとても興味があるのに、読書はぜんぜんスイングしない。政治史に集中して、王様と反逆者の名前がでてくることと、各国史になってこの時代…

今津晃「世界の歴史17 アメリカ大陸の明暗」(河出文庫)

中南米文学を読んでいながら、ラテンアメリカの歴史を知らないのに気付いて、手軽な通史を読むことにする。 アメリカの歴史は15世紀の西洋による「発見」以降として書かれないのは不幸で、不当なこと。マヤ文明やインカ帝国の長い豊かな歴史があるはずなのに…

宮島喬「ヨーロッパ市民の誕生」(岩波新書)

クシシトフ・ポミアン「ヨーロッパとは何か」(平凡社ライブラリ)の記述は1970年代で終了。本書(2004年初出)の主題は、前掲書の記述が終わった後のヨーロッパを、とくにシティズンシップからみようというもの。 シティズンシップの考えの背景にはロック「…

浅井香織「音楽の<現代>が始まったとき」(中公新書)

フランスの音楽史を作曲や作品からみると、19世紀は妙に空白なのだ。18世紀には、ジル、カンプラから始まってラモー、リュリ、クープランなどの名が綺羅星のように現れるのに、19世紀ではベルリオーズとショパンを除くといきなり、サン=サーンス、フランク、…

小宮正安「ヨハン・シュトラウス」(中公新書)

タイトルこそヨハン・シュトラウス(息子)個人であるが、主人公はハプスブルク帝国そのもの。なるほどこの帝国の栄光と没落はこのワルツ音楽の大家に具現しているわけか。 この本の記述にそうと、19世紀のハプスブルク帝国の歴史はこんな感じになる。前の世…

会田雄次「世界の歴史12 ルネサンス」(河出文庫)-2

2016/04/11 会田雄二「世界の歴史12 ルネサンス」(河出文庫)-1 の続き。 今度はルネサンスのネガティブな面。 ・アヴィニョンの捕囚のあと、法王権は再び強くなる。地方教会ができて、農民他の平信徒を教会に組織化する。目覚めてから寝るまで、生まれて…

会田雄二「世界の歴史12 ルネサンス」(河出文庫)-1

鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」(河出文庫)に続けて「世界の歴史12 ルネサンス」。ここでは1300年から1600年までのヨーロッパを扱う。われわれは世界史の教科書で「暗黒の中世」から「ヒューマニズムのルネサンス」に転換したと習った。 前掲書を…

鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」(河出文庫)-4

2016/03/29 鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」(河出文庫)-1 2016/03/30 鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」(河出文庫)-2 2016/03/31 鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」(河出文庫)-3 の続き。 キリスト教は3世紀ごろにローマ帝国の…