2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧
最近(2023年)、ドビュッシー唯一のオペラ「ペレアスとメリザンド」が大好きになってしまった。ドビュッシーの最高傑作の音楽は、毎日数回聴いても飽きない。ようやく音楽は耳になじんできたとはいえ、テキストの理解が危ういので、本書で勉強する。あと2…
この高名な小説に関する言説で奇妙なのは、語り手の「私」はなぜ「異邦人」なのか、どこに対して異邦であるのかが問われていないことだ。語り手の「私」は裁判官にも陪審員にも弁護士にも司祭にも愛されていない、共感を得られていない。その理由は、「私」…
2023/08/29 アルベール・カミュ「異邦人」(新潮文庫)-1 植民地で起きたヘイトクライム事件の概要。ムルソーにとって太陽はフランス国家の象徴。 1942年の続き このように事件の構造は、フランス人による植民地先住民へのヘイト殺人だ。そのように解釈する…
アルベール・カミュくん(1913年生まれ)が20代の後半に書いた哲学風エッセイ。同じ年齢で読んだら感動しただろうが、初老で読むとその稚気がほほえましく、性急さに落ち着けよと言いたくなり、「ぼくが、ぼくは、ぼくの、ぼくを」が頻出する語り口にそうい…
2023/08/25 アルベール・カミュ「シーシュポスの神話」(新潮文庫)-1 自意識過剰でフラフラしている青年が不満をぶちまけた哲学風な独り言 1942年の続き アルベールくんの「不条理」に関する饒舌は、人間の普遍的な性格を分析したのではなく、近代ヨーロッ…
原著は2005年で邦訳は2009年。複数のステークホルダーがいて、解決の調停や交渉が難しい時、それぞれの費用と便益を数値化して(下にあるようにデータにバイアスがあるとか、統計がとりにくいとか問題はあるが)、トレードオフを考慮することを推奨する。な…
「正しさ」を考えるやり方について。2004年刊行。 第1章 「正しさ」は必要か ・・・ 「正しい」を説明する際に、本書では、「絶対」に依拠しない、内面の問題にしない、約束事を作り上げるというやり方で考える。なお「正しさ」は具体的に語る(あるいは具…
「14歳」は教育学や発達心理学などでは重要な年齢だ。伸びるし、不安定だし。そこで大人が適切に手を差し伸べよう。かつてのような教養主義でも、父権主義でもなく、彼らを人間として対等の立場で助言やアドバイスを行おう。命令するのではなく、自分で考え…
20世紀末の倫理学が何を考えているかを網羅する講義の記録(1997年)。おもには功利主義をめぐる議論になっている。概況はまえがきに書かれているので、まずはそのまとめから。 20世紀末の社会倫理の特長は、脱宗教的な世俗性(功利主義)、市場経済(自由主…
2023/08/09 加藤尚武「現代倫理学入門」(講談社学術文庫)-1 カントの内面の格率による規範意識も、ベンサムの最大多数の最大幸福も、ミルの自由主義も、道徳や倫理の形式化にはうまくいかない。 1997年の続き 以後は功利主義の限界を明らかにすることと、…
「最近の大学生は本を読まない」「大学生の学力が落ちている」「大学がレジャーランド化している」という言説はよく聞こえてくる。それは、過去の大学生は本をたくさん読んで、勉強をしていて、遊ぶ者は少数だったということを前提にしている。この前提は正…
2023/08/07 竹内洋「教養主義の没落」(中公新書)-1 戦前日本の教養主義:デカンショは外国への憧れで、反学歴社会運動だった 2003年の続き 本書の記述にそって、ある教養主義者を仮構してみよう。 彼は1900年から1910年の間に、田舎の中産階層に生まれた。…
著者は高名な西洋中世史研究者。1980-90年代は人気があった人だったと記憶する。その人が「教養」について書くから、竹内洋「教養主義の没落」(中公新書)で触れられなかった西洋の教養の歴史がわかると思って読んだ。1996年刊行。あとがきによ…
中国では西暦584年隋の時代に科挙という官吏登用試験が始まり、1904年の清の時代まで続いた。もともとは貴族政治による世襲を壊すためで、在野の人々(ただし試験には多額の費用がかかるので、ある程度の資産を持っている家でないと受験者を支援できない…