odd_hatchの読書ノート

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共産趣味

大杉栄「自叙伝・日本脱出記」(岩波文庫)

大杉栄は1884年生まれ。軍人の家庭に生まれたが、どうも子供のころから無鉄砲でやんちゃだったようだ。長じて陸軍幼年学校に入校したが、ここで権威に従えない自分を発見し、種々の問題を起こした挙句に放校となる。幼年学校で教師や同級生などとずいぶん角…

荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1

荒畑寒村は1887年生まれ。長じて社会主義者となり、さまざまな活動にかかわる。戦後は代議士にもなった。長命であったので、日本の社会主義運動の生き字引的存在。彼が折に触れて書いた自伝を上下二巻にまとめる。 空想少年の生い立ち ・・・ 里子に出された…

荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-2

2019/10/21 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1 1975年 寒村の目で見た社会主義運動の歴史。上巻の主人公は幸徳秋水と堺利彦。若い寒村は数歳年上の菅野須賀子と出会い、同棲し結婚する。ここからは大逆事件に向けて緊迫した状況になる。ja.wikipedia.or…

荒畑寒村「寒村自伝 下」(岩波文庫)-1

2019/10/21 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1 1975年2019/10/18 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-2 1975年 下巻の前半は寒村40代。東奔西走の日々。眼はますますさえ、日本共産党、社会主義団体、コミンテルン、ソ連共産党のおかしなところにいち…

荒畑寒村「寒村自伝 下」(岩波文庫)-2

2019/10/21 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1 1975年2019/10/18 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-2 1975年2019/10/17 荒畑寒村「寒村自伝 下」(岩波文庫)-1 1975年の続き。 戦前から戦後。戦いは厳しく、同志は去り、横にいるものはぶれてばか…

道浦母都子「無援の抒情」(岩波同時代ライブラリ)

著者の大学生時代は全共闘運動と重なる。東京の大学で学生運動に参加し、デモか別の件かで逮捕された経験があり、紆余曲折があって、大学を離れた。その間、短歌を詠み、1980年にタイトルの歌集を出した。過去には学生運動の短歌を作ったものもいたが(岸上…

フリードリヒ・エンゲルス「家族・私有財産・国家の起源」(岩波文庫)

19世紀は主に科学の時代であるが、経済学とともに民族学や考古学も研究されるようになる。ギリシャ、ローマ以来のヨーロッパ以外の文化、文明、民族などを「発見」して、より古い、昔の社会や生産のシステムがわかるようになってきた。1884年初版1891年改版…

山口武秀「常東から三里塚へ」(三一新書)

1972年に出たこの本は、朝日ジャーナル編集部「三里塚」「闘う三里塚」(三一書房)とは違って、山口武秀のインタービューおよび討論があって、最後に1972年当時のまとめと展望を乗せている。 山口武秀は、常東(茨城県東部から千葉県北部にかけて)の農民運…

朝日ジャーナル編集部「闘う三里塚」(三一書房)

三里塚中央公園に行って印象深いのは、開港4年目の春の集会。そこにつくまでいろいろあったけど割愛し、さらに本集会前にさまざまなグループが集会をやっていたりとか春の雨がふってレインコートを着ていたとか、個人的なおもいでがあるけどそれも割愛して、…

朝日ジャーナル編集部「三里塚」(三一書房)

成田空港に行って印象深いのは、開港2年目に帰国する親戚の迎えにいったら、最寄の駅から空港に行くにはバスしか使えないとき、機動隊の検問が数回あったこと。最後のゲートではバスからいったんおり、高さ数mの鉄柵や鉄条網などで囲まれた建物にはいり、一…

パトリシア・スタインホフ「死へのイデオロギー」(岩波現代文庫)-2

パトリシア・スタインホフ「死へのイデオロギー」(岩波現代文庫)-1 つづけてあさま山荘事件。10日間の籠城の最終日には、クレーンでつるした巨大な鉄球が建物を壊し、終日ガス弾が撃ち込まれ、放水が続けられた。ほとんどのテレビ局が現地から長時間の生中…

パトリシア・スタインホフ「死へのイデオロギー」(岩波現代文庫)-1

著者はアメリカの社会学者。戦前日本の転向問題を研究している過程で、1960年代後半からの新左翼運動の研究を開始する。さまざまな事件の関係者とインタビューし、当時の記録を読み、批判者や支援者などと議論する。ここでは新左翼運動のもっとも陰惨な事件…

大泉康雄「「あさま山荘」篭城」(祥伝社文庫)

連合赤軍の主要な幹部で、リンチ殺人を実行・命令する一方、妻をリンチで亡くし、あさま山荘事件を実行した人がいる。著者は「彼(事件の被告:本名は明かされているが、ここでは無名にしておく)」と小学生の時からの友人で、学生時代には彼の勧誘を受けも…

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-3

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-1 笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-2 4 党派観念 第十章 観念の顛倒 ・・・ 自己観念は現実や世界認識との挫折で、党派観念に転倒する。そのきっかけはこの論ではよくわからないけど、自分の把握し…

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-2

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-1 2 共同観念 第四章 観念の矛盾 ・・・ 個は自分で観念を創出するのだが、一方で所属する共同体が共有する観念を個に押し付けてくる。共同観念は「死」とか「宗教-法-国家」とか「道徳」とか。まあ、その成立…

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-1

新左翼運動から撤退した著者がフランスにいって書き溜めた。それがこの本のもと。出版するところはなかったが、いくつかの奇縁が重なってエンターテイメント作家として小説を発表するようになり、あわせてこの本も雑誌連載ののち加筆訂正されて1984年に出版…

鈴木邦男「腹腹時計と狼」(三一新書)

1974年8月から翌年5月にかけて、企業を標的にした爆弾テロ事件が頻発した。犯行声明は「東アジア反日戦線」の名前でだされた。一連の事件の経過は 連続企業爆破事件 - Wikipedia 東アジア反日武装戦線 - Wikipedia を参照してください。 この事件が衝撃を与…

立花隆「中核vs革マル」(講談社文庫)

中核派と革マル派の内ゲバは1969年ころに始まり、頻発したのは1978年くらいまで。その間に、数十名の死者とその数倍の負傷者を出した。このゲバ(というよりテロルだな)のエスカレートが重要な社会問題になり、のちに文学者などからのテロ停止の勧告がなさ…

三田誠広「死のアポリア」(情報センター出版局)

アポリアとは「解決不能な難問」「行き詰まり」と言った意味をもつ哲学用語。でもって、「死」に関する問題を考えようという本。なるほど、若者なら出会う可能性のある問題であるだろう。 著者は1948年生まれ。大阪の有名進学校に入学。途中「登校拒否」をして…

現代史の会編「現代革命の条件」(亜紀書房)

1969年春。70年安保闘争を控えた新左翼諸派の闘争方針を収録したもの。革マル、解放、ML、共同、中核など6派が論文を寄せている。まだ内ゲバの始まる前で、革マルと中核がいっしょに収録されているのが珍しい。内容についてはというと、今から35年前の…

三島由紀夫/東大全共闘「討論 美と共同体と東大闘争」(角川文庫)-2

三島由紀夫/東大全共闘「討論 美と共同体と東大闘争」(角川文庫)-1 さてこちらでは全共闘の側。 ほかのエントリーでも説明したように、全共闘運動は政治革命、文化革命、存在革命の3つを志向する。そのような志向と国家の廃絶という一点で、三島由紀夫と全…

三島由紀夫/東大全共闘「討論 美と共同体と東大闘争」(角川文庫)-1

一時期、全共闘関係の本は目の着く限り集めてきたが、これはもっていなかった。角川文庫で出版されていたのに驚いた(2000年刊)。1980年代半ばに全共闘ブームというのがあって、そのときにこの討論会の録音がカセットで販売されたという記憶がある。相当に高…

小田実/高橋和巳他「変革の思想を問う」(筑摩書房)

3つの大学の全共闘が当時30代後半の作家と対談する。そのあと、3人で総括の対談を行う。1969年4月に行われた対談は、日大全共闘と小田実、京大全共闘と高橋和巳、東大全共闘と真継伸彦という組み合わせ。すでに東大安田講堂は「落城」。ほとんどの大学に機動…

津村喬「われらの内なる差別」(三一新書)

早稲田大学に在学中の22歳の青年が、1968-69年にかけて書いた文章を収録したもの。当時は全共闘運動が盛んであって、彼もまたその一員。当時の文章の書き手はずいぶん若かったというが、著者も同様。 その全共闘運動なのだが、学生や院生の主張が多岐にわた…

島泰三「安田講堂1968-1969」(中公新書)

東大闘争の経緯を簡単にまとめると、医学部の学生やインターンが待遇改善をもとめて(無給で長時間労働を強いられ勉強する暇がない)、1968年冬に無期限ストを行った。学生と職員がもめると、その場にいた学生に処分(退学とか停学とか謹慎とか)がでた。そ…

橋本克彦「バリケードを吹きぬけた風」(朝日新聞社)

全共闘運動は、どうにも心にいろいろなしこりがあって、実体験がないにも関わらず、うまいことまとめられないでいる。これは1968年の日大闘争の記録を1985年に出版したもの。いくつかの学部で別々の闘争があったが、ここでは芸術学部で起きたもの。ほかの学…

中島誠「全学連」(三一書房)

1968年5月の初出。 1960年の安保闘争で、学生運動が割れた。スターリン批判の影響を受けた若者たちと、共産党指導を批判するようになった若者たちがそれぞれ自前の党派を持つようになる。よくわからないのだが、全学連からわかれた共産主義者同盟(通称ブント…

高木正幸「全学連と全共闘」(講談社現代新書)

これも保坂正康「六〇年安保闘争」(講談社現代新書)とおなじく、1985年初出。保坂の本は1960年安保闘争にフォーカスしているが、この本は戦後学生運動の歴史を書いている。といいつつも、記述は左翼と新左翼の党派までを網羅。戦前に「学生運動」は少数で…

学生運動研究会「現代の学生運動」(新興出版)

21世紀のいまどき、誰がこんなものを読むのかというようなタイトル。しかも1960年代後半の全共闘をテーマにしているならまだしも(この文章を書いたのは2006年)、これは1960年安保闘争を総括したもの。書かれたときの状況とテーマは大島渚監督の「日本と夜と…

安東仁兵衛「日本共産党私記」(文春文庫)

1928年に生まれた著者が1948年に東大に入学するとともに、共産党細胞として活動を開始。その後、1961年に離党するまで反主流派であり続けた著者の立ち居地を明らかにする。年齢からすると、戦前に共産党ないし無産者活動を開始した人たち(野間宏とか埴谷雄…