odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

共産趣味

カール・マルクス「ユダヤ人問題に寄せて」(光文社古典新訳文庫)

光文社古典新訳文庫では「ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説」の二編(1843年。ほかに補論、論文など)を収録している。マルクスは1818年生まれなので、当時24-25歳。青年マルクスの初期論考のうち、ヘーゲルに言及した論文や断片を集める。とく…

カール・マルクス「ヘーゲル法哲学批判序説」(光文社古典新訳文庫)

光文社古典新訳文庫では「ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説」の二編(と補論、論文など)を収録している。このエントリーには「ヘーゲル法哲学批判序説」の感想を載せる。 2022/06/21 カール・マルクス「ユダヤ人問題に寄せて」(光文社古典新…

フリードリヒ・エンゲルス「イギリスにおける労働階級の状態」(山形浩生訳)-1

1820年生まれのエンゲルスが、25歳の1845年に出版した本。仕事の傍らイギリスの街に行き、労働者の状況を見聞きした。それにほかの人のレポートや新聞記事などを参照してまとめた。翻訳書は出ているけど、今回はネットに公開されているものを利用(山形浩生…

フリードリヒ・エンゲルス「イギリスにおける労働階級の状態」(山形浩生訳)-2

この時代の労働環境がひどい理由のひとつは、女性と子供の長時間の過重労働が蔓延していたこと。当時は女性も、子供も人権は認められていないので、身体的に劣っていようが、教育による成熟がなかろうが、過酷で退屈な単純労働を強いられた。しかも同じ時間…

カール・マルクス「経済学・哲学草稿」(光文社古典文庫)-1

マルクス26歳のときのメモ。一冊の本に仕上げる予定だったのが、途中で放棄。出版されたのは死後49年たった1932年。最後が執筆用のメモになったり、ページがまとめて紛失していたり。そのうえ26歳の若書きは後年の緻密で重厚な考えからすると、とり…

カール・マルクス「経済学・哲学草稿」(光文社古典文庫)-2

2022/06/14 カール・マルクス「経済学・哲学草稿」(光文社古典文庫)-1 1932年の続き 後半。・第3草稿「社会的存在としての人間」。難物。ここでマルクスの関心領域が3つあることがわかる。ひとつは自然(そのものではなく「自然哲学」のほうがあっている)…

カール・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス「共産党宣言」(堺利彦・幸徳秋水訳、青空文庫)

久々の読み直しは、青空文庫に入っている堺利彦・幸徳秋水訳。あいにくいつの翻訳かはわからないが、玉岡敦「『共産党宣言』邦訳史における幸徳秋水/堺利彦訳(1904,1906年)の位置」を参考にすると、1930年の翻訳だろう。 http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/…

フリードリヒ・エンゲルス「自然の弁証法 上下」(岩波文庫)

エンゲルスは「家族・私有財産・国家の起源」でさじを投げたので、もう手に取らないつもりでいたが、絶版になっている「自然の弁証法」を入手できたので読んでみた。もとはエルンスト・ヘッケルがどう扱われているかを確認するくらいの軽い気持ちだった。 読…

横手慎二「スターリン」(中公新書)

ソ連崩壊後にスターリン関連の文書が公開されたことからスターリン研究が進んだ。それに基づく手軽な評伝を読む。これまで読んできたさまざまな共産趣味の文書でおおよそのできごとは知っていたが、それらはレーニンやトロツキー、あるいは市井の共産主義者…

宇野弘蔵「資本論の経済学」(岩波新書)

「資本論」の批判的な読みをしているからといっても、宇野弘蔵の「経済原論」を読む気にはなれなかったので、講演を基にし書き直した新書を選んだ。1969年初出。ながらく品切れだったのが2009年に復刊された。いくつか発見はあったものの、内容にはいささか…

フランシス・ウィーン「今こそ『資本論』」(ポプラ新書)

1980年前後の中越戦争(とベトナム脱出のボートピープル)、ソ連のアフガニスタン侵攻のころから社会主義国への幻滅が募る。マルクス主義の人気も落ち、ソ連の危機で決定的になったのだが、定期的に「マルクスに戻ろう」というムーブメントが起こる。1980年…

佐藤優「いま生きる『資本論』」(新潮文庫)

新聞の新刊広告でよく見る名前の人。有名になった理由がよくわからないので、これまではスルー。これは読む本がみつからないなあ、と書店の棚でため息をついているときにたまたまみつけた。ちょっとまえにフランシス・ウィーン「今こそ『資本論』」(ポプラ…

鈴木直「マルクス思想の核心」(NHKブックス)

2016年。ピケティ「21世紀の資本」がよく売れたので、マルクス「資本論」の可能性を見てみよう、という志で書かれたらしい。 第1章 マルクスはいかに受容されてきたか―四つの断面 ・・・ マルクスは主著が未完であったし、運動や革命の展望を語らなかったの…

ドロレス・イバルリ「奴らを通すな―スペイン市民戦争の背景」(同時代社)

2015年の夏、国会議事堂前の安保法制反対街宣で「ノー・パサラン」のコールが起きた。「ノー・パサラン」は「奴らを通すな!」(¡No pasarán!)という意味で、ファシズムに抗する人たちの世界共通のスローガン。20世紀の初めから多くの人が発してきたが、有名…

大杉栄「自叙伝・日本脱出記」(岩波文庫)

大杉栄は1884年生まれ。軍人の家庭に生まれたが、どうも子供のころから無鉄砲でやんちゃだったようだ。長じて陸軍幼年学校に入校したが、ここで権威に従えない自分を発見し、種々の問題を起こした挙句に放校となる。幼年学校で教師や同級生などとずいぶん角…

荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1

荒畑寒村は1887年生まれ。長じて社会主義者となり、さまざまな活動にかかわる。戦後は代議士にもなった。長命であったので、日本の社会主義運動の生き字引的存在。彼が折に触れて書いた自伝を上下二巻にまとめる。 空想少年の生い立ち ・・・ 里子に出された…

荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-2

2019/10/21 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1 1975年 寒村の目で見た社会主義運動の歴史。上巻の主人公は幸徳秋水と堺利彦。若い寒村は数歳年上の菅野須賀子と出会い、同棲し結婚する。ここからは大逆事件に向けて緊迫した状況になる。ja.wikipedia.or…

荒畑寒村「寒村自伝 下」(岩波文庫)-1

2019/10/21 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1 1975年2019/10/18 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-2 1975年 下巻の前半は寒村40代。東奔西走の日々。眼はますますさえ、日本共産党、社会主義団体、コミンテルン、ソ連共産党のおかしなところにいち…

荒畑寒村「寒村自伝 下」(岩波文庫)-2

2019/10/21 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-1 1975年2019/10/18 荒畑寒村「寒村自伝 上」(岩波文庫)-2 1975年2019/10/17 荒畑寒村「寒村自伝 下」(岩波文庫)-1 1975年の続き。 戦前から戦後。戦いは厳しく、同志は去り、横にいるものはぶれてばか…

道浦母都子「無援の抒情」(岩波同時代ライブラリ)

著者の大学生時代は全共闘運動と重なる。東京の大学で学生運動に参加し、デモか別の件かで逮捕された経験があり、紆余曲折があって、大学を離れた。その間、短歌を詠み、1980年にタイトルの歌集を出した。過去には学生運動の短歌を作ったものもいたが(岸上…

フリードリヒ・エンゲルス「家族・私有財産・国家の起源」(岩波文庫)

19世紀は主に科学の時代であるが、経済学とともに民族学や考古学も研究されるようになる。ギリシャ、ローマ以来のヨーロッパ以外の文化、文明、民族などを「発見」して、より古い、昔の社会や生産のシステムがわかるようになってきた。1884年初版1891年改版…

山口武秀「常東から三里塚へ」(三一新書)

1972年に出たこの本は、朝日ジャーナル編集部「三里塚」「闘う三里塚」(三一書房)とは違って、山口武秀のインタービューおよび討論があって、最後に1972年当時のまとめと展望を乗せている。 山口武秀は、常東(茨城県東部から千葉県北部にかけて)の農民運…

朝日ジャーナル編集部「闘う三里塚」(三一書房)

三里塚中央公園に行って印象深いのは、開港4年目の春の集会。そこにつくまでいろいろあったけど割愛し、さらに本集会前にさまざまなグループが集会をやっていたりとか春の雨がふってレインコートを着ていたとか、個人的なおもいでがあるけどそれも割愛して、…

朝日ジャーナル編集部「三里塚」(三一書房)

成田空港に行って印象深いのは、開港2年目に帰国する親戚の迎えにいったら、最寄の駅から空港に行くにはバスしか使えないとき、機動隊の検問が数回あったこと。最後のゲートではバスからいったんおり、高さ数mの鉄柵や鉄条網などで囲まれた建物にはいり、一…

パトリシア・スタインホフ「死へのイデオロギー」(岩波現代文庫)-2

パトリシア・スタインホフ「死へのイデオロギー」(岩波現代文庫)-1 つづけてあさま山荘事件。10日間の籠城の最終日には、クレーンでつるした巨大な鉄球が建物を壊し、終日ガス弾が撃ち込まれ、放水が続けられた。ほとんどのテレビ局が現地から長時間の生中…

パトリシア・スタインホフ「死へのイデオロギー」(岩波現代文庫)-1

著者はアメリカの社会学者。戦前日本の転向問題を研究している過程で、1960年代後半からの新左翼運動の研究を開始する。さまざまな事件の関係者とインタビューし、当時の記録を読み、批判者や支援者などと議論する。ここでは新左翼運動のもっとも陰惨な事件…

大泉康雄「「あさま山荘」篭城」(祥伝社文庫)

連合赤軍の主要な幹部で、リンチ殺人を実行・命令する一方、妻をリンチで亡くし、あさま山荘事件を実行した人がいる。著者は「彼(事件の被告:本名は明かされているが、ここでは無名にしておく)」と小学生の時からの友人で、学生時代には彼の勧誘を受けも…

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-3

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-1 笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-2 4 党派観念 第十章 観念の顛倒 ・・・ 自己観念は現実や世界認識との挫折で、党派観念に転倒する。そのきっかけはこの論ではよくわからないけど、自分の把握し…

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-2

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-1 2 共同観念 第四章 観念の矛盾 ・・・ 個は自分で観念を創出するのだが、一方で所属する共同体が共有する観念を個に押し付けてくる。共同観念は「死」とか「宗教-法-国家」とか「道徳」とか。まあ、その成立…

笠井潔「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫)-1

新左翼運動から撤退した著者がフランスにいって書き溜めた。それがこの本のもと。出版するところはなかったが、いくつかの奇縁が重なってエンターテイメント作家として小説を発表するようになり、あわせてこの本も雑誌連載ののち加筆訂正されて1984年に出版…