odd_hatchの読書ノート

エントリーは3400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2025/9/26

宗教

聖書「創世記」(岩波文庫) あまり構えず、細部に拘泥しないでわかりやすいところから読んでみた。競合する神が多数あるので、〈主〉は妬み深く、生贄やお供えをたくさん要求する。

一日十五分の高速音読を初めて2か月。新約聖書の読みたいところを読んだので、旧約聖書に挑戦。大部すぎるので、読むのは「創世記」「出エジプト記」「ヨブ書」「ヨナ書」にとどめる。 創世記: 加藤隆「一神教の誕生」講談社現代新書によると、ユダヤ教の…

聖書「ヨブ記」(口語訳1954年版)) 不条理にあっている不幸な人に「おまえに理由がある」と詰め寄るのは最低最悪の対応法。

一日十五分の高速音読を初めて3か月。「ヨブ記」に挑戦。 ・サタンは神の子のひとり。サタンは主の前に行き話をすることができる。他人を試せとそそのかすと、主は信仰篤い人の庇護をやめ、試練を課す。俺はここに主の自身のなさをみてしまうなあ。それは信…

内村鑑三「ヨブ記講演」(青空文庫) 通常、預言者にしか現れない神が一般人で異邦人のヨブの前に現れたことが決定的な体験である。神は人を試し服従を要求する。

「ヨブ記」を読んだが釈然としないので、簡単に入手できる「ヨブ記」解説書を読む。青空文庫にあったタイトルの書。1920年に断続的に講義したのを1925年に出版した。著者が内村鑑三なので「あちゃあ、やっちまったか」と思った(下記エントリー)が、ともあ…

聖書「福音書」(岩波文庫) ローマ支配下のユダヤ人はいくつかのグループに分裂。現れたイエスは神の国運動の推進者だったり、世の光の権威者だったり。

一日十五分の高速音読を初めて1か月。4つの福音書を音読した。素人の思い付きをメモ。福音書の並びは聖書収録順ではなく、聖書学で成立順とされるものにした。 前史: ユダヤ人は前6~7世紀頃にユダヤ王国を建国したが、後に滅亡。以後、他民族に支配され…

溝田悟士「「福音書」解読」(講談社選書メチエ) マルコ伝でイエスの捕縛と復活に登場する「若者」とは誰か。そこが福音書の「謎」の鍵。

最初に自分がうかつだったと知ったのは、最初のキリスト教文書は福音書ではなく、ペトロの書簡だった。そこに書かれたキリスト教の核心は、1.イエスが私たちの罪のために死に、2.7日目に復活し、3.ケファ(「岩」の意)の前に出現して多くの人の前に…

聖書「使徒のはたらき」(岩波文庫) ユダヤ人とローマ帝国から迫害を受けて、キリスト教は民族や人種に関係ない世界宗教になっていく。

福音書のあとは「使徒行伝」とパウロ書簡と黙示録を高速音読した。 ・使徒行伝はルカ伝の続きとのこと。前半はイエスの弟子であるペテロの話。エルサレムの教会から各地に普及していくさまが描かれる。後半はローマ人でありながらキリスト教に転向したパウロ…

土岐健治「死海写本 『最古の聖書』を読む」(講談社学術文庫) クムラン文書を読んで、黙示録的終末論的エリート宗団の教義を知ろう。

先には、M・ベイジェント、R・リー『死海文書の謎』と、B・スィーリング『イエスのミステリー』という与太本を読んでいた。それはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で引用されていたからなのであるが(アニメでは通常「ぶんしょ」と読む「文書」を「もん…

山形孝夫「聖書の起源」(ちくま学芸文庫) イエスはユダヤ教の禁忌を破って医療行為をするもの、なんだそう。

もとは1976年に講談社現代新書ででた。それを2009年にちくま学芸文庫に入れなおした。(どうでもいいが、1990年までは学術書・専門書といっていい新書がでていた。21世紀の新書にはふさわしくないので、復刻されるときは学術・専門書を集める文庫に入れる。…

加藤隆「『新約聖書』の誕生」(講談社学術文庫)-1 現状追認で保守化したユダヤ教の改革者がイエス。口承で布教したのでテキストをつくらない。

福音書の成立に関する知識(共観福音書とかQ資料とか)はあった。新約聖書27篇が選ばれたのはイエスの死後300年もたってから。その間に、たくさんの文書が作られたのは知っている。邦訳にも、 聖書「新約聖書外伝」(講談社文芸文庫)がある。そういうのを読…

加藤隆「『新約聖書』の誕生」(講談社学術文庫)-2 キリスト教の拡大は無秩序をもたらしたので、テキストを作り平準化を図る。統一的理解が困難な聖書の権威をささえるのは教会の権威。

2025/06/20 加藤隆「『新約聖書』の誕生」(講談社学術文庫)-1 現状追認で保守化したユダヤ教の改革者がイエス。口承で布教したのでテキストをつくらない。 1999年の続き 最初の1世紀で重要な出来事は66~70年のユダヤ戦争。独立戦争に失敗して(あと…

加藤隆「一神教の誕生」(講談社現代新書) 社会的機能から見たユダヤ教とキリスト教の違い。キリスト教の最大の特徴は「人による人の支配」。

「一神教」とあるが、ここではユダヤ教とキリスト教について検討する。ともにルーツを同じにする宗教で同じ神を信仰すると思われている。それを検討する。やりかたはそれぞれの宗教の歴史を見て、宗教活動の構造の違いを検討すること。ともに同じようなテキ…

加藤隆「キリスト教の本質 「不在の神」はいかにして生まれたか」(NHK出版新書) 神なき領域で行われる宗教ビジネス。古代で有効だった二重構造は近代以降ではやっかいになった。

キリスト教は、神と断絶したので律法を遵守することで神につながろうとするユダヤ教の分派として誕生。イエスの運動はいろいろな要素があったが、その中から神の国に至る方法を神がいない領域で説いて信者を増やし、教会の権威と権力に服従させようという「…

稲垣良典「トマス・アクィナス『神学大全』」(講談社学術文庫) 人間の生や存在の目的は「創造主」「人間を超える何か」に向かうことという考えに同意できない俺はトマスに縁なき衆生。

トマス・アクィナス(1225-1274)の「神学大全(スンマ)」は、大部にして難解。邦訳はあっても、とてもではないが、ひとりで読みとおせることはできないので、研究者による簡便な解説書を読む。文庫で200ページに満たないのはありがたい。 とはいえ、す…

遠山美都男「天皇誕生」(中公新書)-1 日本書紀を中国の史書や考古学知識などを参照して読み直すと、古代日本の権力史がわかる。

列島の古代史は文献資料が少ないうえ、以前は考古学資料も少なかったので、いろいろなことが言われてきた。いわく騎馬民族が半島から来て覇権を握ったとか、卑弥呼のいた邪馬台国が大和朝廷であるとか、朝廷の歴史は紀元前600年ころまで遡れるとか、天皇は万…

遠山美都男「天皇誕生」(中公新書)-2 日本書紀の記述にあるふたつのまとまりは王朝が断絶して別の王朝に代わったことを示している。

2024/08/12 遠山美都男「天皇誕生」(中公新書)-1 日本書紀を中国の史書や考古学知識などを参照して読み直すと、古代日本の権力史がわかる。 2001年の続き 日本書紀の記述にはふたつのまとまりがある。神武から神功皇后までは律令制国家と天皇制がいかに形…

神野志隆光「古事記と日本書紀」(講談社現代新書) 明治政府の天皇崇拝、男性優位社会、朝鮮の属国化などの皇国イデオロギーは記紀神話にまでさかのぼる。

古事記(712年)と日本書紀(720年)はどのように読まれてきたか。これらの神話は、律令体制国家を統治する天皇の正統性を明らかにするものだ。中国の陰陽説や天下の概念を採用しながら、「日本(朝廷自身が命名)」が大国であり朝鮮を属国とする帝国的世界…

三浦佑之「古事記を読みなおす」(ちくま新書)-1 古事記と日本書紀を一緒にする「記紀神話」は誤り。「古事記」にしかない出雲神話は重要。

「記紀神話」と言われるようになって久しいが、古事記と日本書紀では記述が異なる。ヤマト朝廷の正史である日本書紀が味気ない記述に終始しているのに対し、古事記に登場する神々の方が深みがある。そこで次のような意図で、古事記を読みなおす。「記」では…

三浦佑之「古事記を読みなおす」(ちくま新書)-2 著者は政治的には読まないのだが、記述のはしばしからヤマトの政治が見えてくる。

2024/08/06 三浦佑之「古事記を読みなおす」(ちくま新書)-1 古事記と日本書紀を一緒にする「記紀神話」は誤り。「古事記」にしかない出雲神話は重要。 2010年の続き 政治的には読まないという方針をとっているようなので、支配や植民地などの権力のあり方…

千田稔「伊勢神宮 東アジアのアマテラス」(中公新書) 明治期に国家神道の中心施設にさせられた古い神社

伊勢神宮は1300年にわたり日本神道の中心点であり続けた。しかしいつどのようにしてそのような位置付けになったのかはよくわからない。神道が言葉を重視する宗教ではないので、経典・教典を作る意思がなく、記録を残そうとしなかったから。そこで著者は、ア…

荒井献「ユダとは誰か」(講談社学術文庫) イエスの愛弟子の一人であり、ローマ当局によるイエスの十字架刑に至らしめた。それ以上のことは不明。

キリストの十二弟子の名前を諳んじることはできないが、ペテロとユダは例外的に覚えている。それはこの二人にはとても有名なエピソードがあり、信仰の核に触れるような問題を提起しているから。ことにユダは近代以降、自我の問題をみるようになってさまざま…

大貫隆「聖書の読み方」(岩波新書) あまり構えず、細部に拘泥しないでわかりやすいところから読みましょう。本書は内容を概説した「入門」ではないので注意。

聖書は、岡本喜八「肉弾」のセリフのように、「適当に面白くて、適当につまらなくて、どこから読んでもよくて、いつまでたっても読み終わらない本(引用は適当)」として読める。でも、聖書にアクセスしようとすると無数の問題がある。宗教書として読め、読…

保坂俊司「国家と宗教」(光文社新書)-1 キリスト教とイスラームの場合

著者は比較宗教学者。 日本では、政教は分離されているとたいていの人が認識しているが、政教分離は普遍原理ではない。日本そのものが神権政治の国だった。その精神は日本国憲法施行以後も消えていない。他の国では政治と宗教が一体化しているところがあるし…

保坂俊司「国家と宗教」(光文社新書)-2 仏教と神道の場合

2024/04/08 保坂俊司「国家と宗教」(光文社新書)-1 キリスト教とイスラームの場合 2006年の続き 後半は通常政治的ではないとされる宗教が政治に関与しているという話。アジアの政教分離はヨーロッパとはかなり違う。 第3章 仏教と政治 ・・・ 仏教には政…

工藤庸子「宗教vs国家」(講談社現代新書) 第三共和政のフランスは公共空間から宗教を排除した

政教分離は近代の国民国家の前提になっているが、国によってありかたは異なる。たとえば、アメリカでは議員が宗教団体の集会に出ることは承認されている。イギリスでは国教会があり、聖職者には一定数の上院議員の割り当てがある。ドイツでは聖職者は国から…

内藤正典「ヨーロッパとイスラーム」(岩波新書)-1 難民受入を進めるドイツと多文化主義のオランダの場合

21世紀になってから、ヨーロッパに居住するイスラムが増えた。2004年(本書初出)現在で1500万人ともいわれる。彼らの受け入れ国社会では摩擦が起きて(彼らを規制する動きとそれに対する反発)、イスラムへのヘイトクライムが発生している。民主主義、平等…

宮田登「冠婚葬祭」(岩波新書) 祭儀を通してみる日本人の祖霊感・霊魂感

日本人の生活といっても、土地ごとの差異は大きい(それこそ近世までは蝦夷、東国、西国、九州など複数の国が列島にはあったと考えるべき)。でも、ある共通する信仰、観念があるので、日本人の特質を抽出することができるだろう。そういう目論見はいろいろ…

大江志乃夫「靖国神社」(岩波新書) 1879年に明治政府が作った招魂社が靖国神社に改名。1952年に宗教法人に格下げされ、A級戦犯合祀以降天皇は参拝しない。

日本の軍事史を専門にする研究者による啓蒙書。1983年初出。戦後、靖国神社を政治家が参拝することはあっても閣僚が参拝することはなかった。それが1975年に三木武夫が現職首相として初めて参拝した。それに対する批判が高まった時期のこと。靖国神社は右翼…

高橋哲哉「靖国問題」(ちくま新書)-1 靖国神社は日本人の生と死を吸収し尽し、生と死の意味付けをする国家的な宗教とする機能をもっている。

大江志乃夫「靖国神社」(岩波新書)1983年で靖国神社の戦前戦中の歴史を学んだので、戦後と現代の問題を本書で把握することにする。 極右や右派の宗教カルトは、古代からの神道と明治政府による国家神道をあえてごっちゃにして、靖国を正当化する。その違い…

高橋哲哉「靖国問題」(ちくま新書)-2 靖国神社はかつての日本の戦争と植民地支配がすべて正しかったという歴史観に立っている。政府も「民主主義」を口実として、歴史認識を問われる国家としての責任から逃走している。

8月15日に全国戦没者追悼式典が行われるようになった経緯は以下のエントリーを参考に。この式典の前に首相が靖国神社参拝をするようになったのは中曽根康弘から。佐藤卓己「八月十五日の神話」(ちくま新書)佐藤卓己/孫安石 「東アジアの終戦記念日―敗北と…

弓削達「ローマ 世界の都市の物語」(文春文庫) マグダラのマリアを中心にする女性イエス集団が信仰を伝導していた

著者は 弓削達「世界の歴史05 ローマ帝国とキリスト教」(河出文庫)を書いた人。このエッセイでは、ローマという都市でおきた約2000年のできごとをみる。 ちょっと話をずらせば、この国ではエッセイは身辺雑事の「心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく…