odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ギルバート・チェスタトン

ギルバート・チェスタトン「知りすぎた男」(江戸川小筐訳) 上流階級を知りすぎると、人権を無視し国家の威信を優先する。

1922年初出の本書の翻訳は南条竹則訳(創元推理文庫)と井伊順彦訳(論創海外ミステリ) の二つが出ている。今回は、マニアによる翻訳を使った。 longuemare.gozaru.jp 探偵役は「知りすぎた男」ホーン・フィッシャー。新聞記者ハロルド・マーチとちょろちょ…

INDEX ギルバート・チェスタトン関連

2013/08/19 ギルバート・チェスタトン「奇商クラブ」(創元推理文庫) 隠された新規事業を探せ。最も奇妙な謎解き探偵。 1905年 2013/08/20 ギルバート・チェスタトン「木曜の男」(創元推理文庫) 共産主義や無政府主義に嫌悪と憧憬を同時にもつアンビバレ…

チェスタトン「ブラウン神父」について(メモ) イギリスにはアッパークラスとロウアークラスが厳然として存在し、相互に交流がないが、神父は行き来できるので謎を解ける。

チェスタトンのブラウン神父譚を発表順に並べると下記のようになる。1911年 『ブラウン神父の童心』(The Innocence of Father Brown) 1914年 『ブラウン神父の知恵』(The Wisdom of Father Brown) 1926年 『ブラウン神父の不信』(The Incredulity of Fa…

ギルバート・チェスタトン「木曜の男」(創元推理文庫) 共産主義や無政府主義に嫌悪と憧憬を同時にもつアンビバレンツな感情

初出は1905年(中島河太郎の解説では1907年)。なので、少し社会背景を知っておいたほうがよい。19世紀後半からの労働運動と左翼運動は支持者を得て、運動が活発になっていた(ザングウィル「ビッグ・ボウの殺人」)。ただ、ロシア革命の前なので、運動組織…

ギルバート・チェスタトン「奇商クラブ」(創元推理文庫) 隠された新規事業を探せ。最も奇妙な謎解き探偵。

1905年初出の最初の短編集。設定がなんともユニーク。これまで(1905年当時)に存在しなかった新しい生業を紹介しましょうというもの。それは何かの事業に似ていてはならず、十分な収入を獲得できるものでなければならない。小説の中で成り立てばよいのであっ…

ギルバート・チェスタトン「ブラウン神父の童心」(創元推理文庫) 神父、上流階級を観察する

ブラウン神父ものの第1作。1911年初出。当時チェスタトンは37歳(1874年生まれ)。 青い十字架 ・・・ ブラウン神父はサファイアのついた十字架を運ぶ使命を持っている。それを大怪盗フランボウが狙っている。フランボウは190cmもある大男。小男と大男の神父…

ギルバート・チェスタトン「ブラウン神父の知恵」(創元推理文庫) 神父、ファンタジーと迷路の国に行く

ブラウン神父ものの第2短編集。1914年刊行。 グラス氏の失踪 ・・・ 子供好きな青年はときに部屋にこもりきりになる。そして誰も見たことの無いグラス氏と口論もしている。そしてこの青年が縛られ、部屋がめちゃくちゃになっている状態で発見された。犯罪学…

ギルバート・チェスタトン「ブラウン神父の不信」(創元推理文庫) 神父、アメリカに行く

ブラウン神父ものの第3作。1926年初出。前作からはすこし間が空いた。この間の大きな出来事は第一次世界大戦。これの影響はヨーロッパの啓蒙主義とか形而上学が深刻な打撃と受けたことと、アメリカが<帝国>として姿を現したこと。後者の場合、アドルノが…

ギルバート・チェスタトン「ブラウン神父の秘密」(創元推理文庫) 神父はテクノロジーを気に入らない

ブラウン神父ものの第4作。1927年初出。「不信」では一編あたりの文字数が多かったけど(創元推理文庫で40ページ)、元に戻る(30ページ)。分量のみならず、文体も変化して、ファンタジーの眼の摘んだ緻密な文章が乾いたジャーナリスティックなものになっ…

ギルバート・チェスタトン「詩人と狂人たち」(創元推理文庫)  犯罪捜査に神学と形而上学は必須?!

1929年初出の短編集を1977年に翻訳、文庫で出版。自分の持っているのは文庫版初版。カバーイラストは現在のものと異なっていて、しおりひも付き(一時期、創元推理文庫は初版のみしおりひもをつけていた)。 おかしな二人連れ ・・・ 背の高い男と小柄な男の…

ギルバート・チェスタトン「ブラウン神父の醜聞」(創元推理文庫) 神父、労働者とボルシェヴィキに会う

ブラウン神父ものの第5作。1935年初出。 ブラウン神父の醜聞 ・・・ メキシコの観光地にアメリカの有名な婦人が逗留していた。脱線すると、1930年代のメキシコはとくに共産圏の亡命者に寛大で、トロツキーやエイゼンシュタインらが亡命していた。若い夫とい…

ギルバート・チェスタトン「ポンド氏の逆説」(創元推理文庫) 英国情報部員はパラドックスで煙をまく

1936年初出。政府の役人をしているらしいポンド氏は、目立たないながらも奇妙なことを口走る癖があった。それが下記のような逆説(パラドックス)。まずポンド氏がなにか逆説をいう。それはおかしいのではないか、と指摘する歓談者にポンド氏は奇妙なことで…