アルベール・カミュ
この高名な小説に関する言説で奇妙なのは、語り手の「私」はなぜ「異邦人」なのか、どこに対して異邦であるのかが問われていないことだ。語り手の「私」は裁判官にも陪審員にも弁護士にも司祭にも愛されていない、共感を得られていない。その理由は、「私」…
2023/08/29 アルベール・カミュ「異邦人」(新潮文庫)-1 植民地で起きたヘイトクライム事件の概要。ムルソーにとって太陽はフランス国家の象徴。 1942年の続き このように事件の構造は、フランス人による植民地先住民へのヘイト殺人だ。そのように解釈する…
アルベール・カミュくん(1913年生まれ)が20代の後半に書いた哲学風エッセイ。同じ年齢で読んだら感動しただろうが、初老で読むとその稚気がほほえましく、性急さに落ち着けよと言いたくなり、「ぼくが、ぼくは、ぼくの、ぼくを」が頻出する語り口にそうい…
2023/08/25 アルベール・カミュ「シーシュポスの神話」(新潮文庫)-1 自意識過剰でフラフラしている青年が不満をぶちまけた哲学風な独り言 1942年の続き アルベールくんの「不条理」に関する饒舌は、人間の普遍的な性格を分析したのではなく、近代ヨーロッ…
2020年からのコロナ禍は、この小説を「再発見」した。ペストが流行し、都市が閉鎖され、市民が非日常を生きるという設定が、「ステイ・ホーム」や「三密(密閉・密集・密接)を避けろ」、「消毒とマスク着用」などを推奨され、外に出ることが憚られる状況と…
2023/03/08 アルベール・カミュ「ペスト」(新潮文庫)-1 1947年の続き 感染症が起きたとき、どのような対策をとるかは政治の仕事になる。なので、統計や対策、声明は市が出すものになる。医師や技術者、科学者は政治のサポートにまわる。2020年のグローバル…