odd_hatchの読書ノート

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サンリオSF文庫

フィリップ・K・ディック「ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック I」(サンリオSF文庫)

ジョン・ブラナー編「 The Best of Philip K. Dick (1977)」 の邦訳。二分冊の第一巻。一時期「パーキー・パットの日々 /ディック傑作集 (1)」のタイトルでハヤカワ文庫にでていた(一部新訳)。ハヤカワ文庫はPKDの短編集を再編集して6分冊にし、巻ごとの…

フィリップ・K・ディック「ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック II」(サンリオSF文庫)

ジョン・ブラナー編「 The Best of Philip K. Dick (1977)」 の邦訳。二分冊の第二巻。一時期「時間飛行士へのささやかな贈物 /ディック傑作集 (2)」のタイトルでハヤカワ文庫にでていた(一部新訳)。ハヤカワ文庫はPKDの短編集を再編集して6分冊にし、巻…

フィリップ・K・ディック「ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック III」(サンリオSF文庫)

マーク・ハースト編、『 The Golden Man (1980) 』 の邦訳。二分冊の第一巻。 「はじめに」 Foreword /マーク・ハースト 「まえがき」 Introduction ・・・ 記載からすると「暗闇のスキャナー」と「ヴァリス」の間に書かれた。散漫な内容ではあるが、気にな…

フィリップ・K・ディック「ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック IV」(サンリオSF文庫)

マーク・ハースト編、『 The Golden Man (1980) 』 の邦訳。二分冊の第二巻。 「フヌールとの戦い」 The War with the Fnools 1969.02 ・・・ 間抜けな侵略者。身長二フィートで全員同じ格好と姿。でも、人類はずっとしてやられて、絶滅寸前。最前線ではうん…

フィリップ・K・ディック「虚空の眼」(サンリオSF文庫)-1

1959年10月2日、カリフォルニアに建造された陽子ビーム偏向装置が、始動初日、暴走事故を起こした。居あわせた八人の男女は、陽子にさらされ、高みから投げ出される。サンリオSF文庫には登場人物票がないので、自分が補足。 ジャック・ハミルトン: ミサイ…

フィリップ・K・ディック「虚空の眼」(サンリオSF文庫)-2

2018/09/07 フィリップ・K・ディック「虚空の眼」(サンリオSF文庫)-1 1957年 多元宇宙とか平行世界などで語られることが多いようだが、そこは素通りすることにして。 陽子ビーム偏向装置の放出したエネルギーで吹き飛ばされた先の世界。読者の物理現実や執…

フィリップ・K・ディック「時は乱れて」(サンリオSF文庫)

1950年代のアメリカの田舎町。スーパーマーケットを開いている夫婦。そこに寄宿している独身の夫の弟。彼は仕事につかず、毎日新聞の懸賞クイズを解いている。「小さな緑の男」が次に行く先を1026のマス目の中から予測するのだ。この懸賞に独身男レイグル・…

フィリップ・K・ディック「あなたを合成します」(サンリオSF文庫)

通常は中期から後期をつなぐ作品とされている。ここではポール・ウィリアムズ編「フィリップ・K・ディックの世界 消える現実」(ペヨトル工房) の長編作品一覧に基づき、1962年10月4日SMLA受理の日付を優先する。刊行は1972年。SMLAの日付を優先すると、作…

フィリップ・K・ディック「ブラッドマネー博士」(サンリオSF文庫)

西メイン州の田舎町。狭い町で、人々がうろちょろ。PKDの眼は、社会的な弱者に注がれる。たとえば、デレビ販売&修理店の店員でちょっと頭のあたたかい黒人スチュアートであり、1964年生まれの「海豹(ママ)」男の少年であるホッピィであり(同年におきたサ…

フィリップ・K・ディック「シミュラクラ」(サンリオSF文庫)

ともあれ大量のキャラクターが数ページごとにでてきて、それぞれのオブセッションにとらわれている悪夢や不安を語っている。失業、オーディション不合格、赤字続きの事業、特権階級からの蔑視、体臭恐怖症、政府に監視されている不安、不倫が発覚する恐れな…

フィリップ・K・ディック「アルファ系衛星の氏族たち」(サンリオSF文庫)

シミュラクラのプログラマーであるチャック・リッタースドルフは、離婚の危機。なにしろ妻のメアリーはマリッジ・カウンセラーとして成功していて、最も有名なコメディアンバニー・ヘントマンの支援を受けて大成功。夫婦関係を清算して、アルファ系衛星で心…

フィリップ・K・ディック「最後から二番目の真実」(サンリオSF文庫)

この長編を読む前に短編「ヤンシーにならえ@(ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック III・サンリオSF文庫)」を読むことを推奨。短編はガニメデが舞台だが、長編では地球。ヤンシーの役割は同じ。 さて、1945年から歴史がずれている世界。米ソの対立は深…

フィリップ・K・ディック「テレポートされざる男」(サンリオSF文庫)

ポール・ウィリアムズ編「フィリップ・K・ディックの世界」(ペヨトル工房)とこの文庫の注によると、前半部が1964年8月26日SMLA受理、1966年出版。ただし商業的な理由で三万語を削除した版。後半部は1965年5月5日に日SMLA受理。脱落した部分を元に戻して再…

フィリップ・K・ディック「銀河の壺直し」(サンリオSF文庫)

PKD本人は「やっつけ仕事だよ」「書きすすめながら、先がどうなるか、まるでわからなかった」というのだが(「ザップ・ガン(P366)」所収のインタビュー)、どうしてどうして、読みやすい。テーマもはっきり。この小説を気に入ってくれたという人もいたとPK…

フィリップ・K・ディック「死の迷宮」(サンリオSF文庫)

さまざまな技能士(言語学者、経済学者、神学者、医師、物理学者、写真家、心理学者、海洋生物学者、社会学者、コンピューター技師)たちが選ばれて植民惑星デルマクーO(オー)に派遣される。片道燃料だけを搭載した飛行機で到着した。技能士たちは全部で14…

フィリップ・K・ディック「流れよ我が涙、と警官はいった」(サンリオSF文庫)-1

3000万人の視聴者のいる娯楽番組。その司会で歌手でもあるジェイスン・タヴァナー。仕事を順調で、人気は絶大で、女遍歴も優雅にこなしている。でも、その日若い歌手志望の娘がジェイスンを恨んで、カリスト海綿生物を投げつけた。昏睡状態の一夜のあと、安…

フィリップ・K・ディック「流れよ我が涙、と警官はいった」(サンリオSF文庫)-2

2018/07/12 フィリップ・K・ディック「流れよ我が涙、と警官はいった」(サンリオSF文庫)-1 1974年 女性たちにフォーカスすることになるのは、自分のIDが失われるという非常事態、不条理にみまわれながらも、渦中にあるジェイソンはのんきで傍観者でいられ…

フィリップ・K・ディック「暗闇のスキャナー」(創元推理文庫)-1

邦訳タイトル、原題「A Scanner Darkly」の意味は小説の中の説明によるとこんな具合になる。脳は二つのコンピュータが連結したようなもの。左半球と右半球でそれぞれ異なる機能をもっているが、それぞれの情報が統合されて世界認識の同一性を保持している。…

フィリップ・K・ディック「暗闇のスキャナー」(創元推理文庫)-2

2018/07/06 フィリップ・K・ディック「暗闇のスキャナー」(創元推理文庫)-1 1977年 もうひとつのやるせなさは、ボブ・アークター=フレッドにおきたことが、これもまたやるせないほど読者の現実に続いている。ボブは覆面麻薬捜査官の仕事をしている。彼の…

フィリップ・K・ディック/ロジャー・ゼラズニイ「怒りの神」(サンリオSF文庫)

小説の背景は、文庫のサマリーに詳しいので、まず引用。メモしながら読んだが、地の文に断片的に語られるので詳細をつかめなかった。 「第三次大戦で地球は全滅した。人々が奇妙な逆説を信仰したためだった。エネルギー調査開発庁長官カールトン・ルフトオイ…

フィリップ・K・ディック「アルベマス」(サンリオSF文庫)-1

これまでの長編と色合いがずいぶん異なるのは、PKDの経歴や体験がほぼそのまま書かれているため。もちろん、この国の私小説や、自伝のように、正確な情報を提供しているわけではない。想像力をふくらませたり、存在しない人物に評価を語らせるなど、フィクシ…

フィリップ・K・ディック「アルベマス」(サンリオSF文庫)-2

2018/07/02 フィリップ・K・ディック「アルベマス」(サンリオSF文庫)-1 1985年 ニコラスに起きた神秘体験には白けるのだが、彼らを取り巻くアメリカの状況はすさまじく迫真的だ。すなわち1968年までのアメリカは史実通りに進んでいたのだが、60年代の暗殺…

フィリップ・K・ディック「ヴァリス」(サンリオSF文庫)-1

突き放したしかたでサマリーをつくるとこうなる。心身が不安定な中年のSF作家がいる。このところ立て続けに悪いことが起きる。妻が離婚して子供を連れてでていき、ひとりきりの家には薬物中毒者がでいりするようになる。その一人が、作家フィルに電話を掛け…

フィリップ・K・ディック「ヴァリス」(サンリオSF文庫)-2

2018/06/28 フィリップ・K・ディック「ヴァリス」(サンリオSF文庫)-1 1981年 2018/06/25 フィリップ・K・ディック「ヴァリス」(サンリオSF文庫)-3 Tod Machoverのオペラ「VALIS 1981年 本書の記述のほとんどは、神をめぐる考えの羅列。本書の訳者によっ…

フィリップ・K・ディック「聖なる侵入」(サンリオSF文庫)-1

CY30=CY30B星系で、受信した地球の電波を入植者のために配信している男ハーブ・アシャーがいる。ひとり暮しの独身であったが、その星の神<ヤー>が受信テープをダメにしてしまった。隣のドームに住む同じ独身女性リビス・ロビーのところに行くと、彼女の具…

フィリップ・K・ディック「聖なる侵入」(サンリオSF文庫)-2

2018/06/22 フィリップ・K・ディック「聖なる侵入」(サンリオSF文庫)-1 1981年 ハーブとリビス、あるいはリンダ・フォックスに起こる巻き込まれがたサスペンスといっしょに、霊的な闘争が進行する。それを担うのは、リビスから生まれた異星人と地球人の子…

フィリップ・K・ディック「ティモシー・アーチャーの転生」(サンリオSF文庫)-1

PKDには極めて珍しい女性の一人称視点。長編でも短編でも、このような書き方をしたのはなかったのではないか。 カリフォルニアの聖公会のティモシー・アーチャー主教。神の遍在を証明しようと、文献を読み漁っていた。今回彼が注目したのは紀元前2世紀ころの…

フィリップ・K・ディック「ティモシー・アーチャーの転生」(サンリオSF文庫)-2

2018/06/19 フィリップ・K・ディック「ティモシー・アーチャーの転生」(サンリオSF文庫)-1 1982年 物語をティムの側から見ると、「ヴァリス」のホースラヴァー・ファットの行ってきたことに等しい。異なるのは、ティムは主教で名声があり、精神疾患を持っ…

サンリオ編集部「悪夢としてのP・K・ディック」(サンリオ)

さて、8カ月(2016.11-2017.06)かけて手持ちのPKDの長短編を48冊読んだ。その間、意識的に評論を読まずにいたわけだが、全部読み終えた今、読み返すことにする。これは1986年にでた評論集。たぶん「あぶくの城 -フィリップ・K・ディックの研究読本」(北宋…

ヴォンダ・マッキンタイア「夢の蛇」(サンリオSF文庫)

「脱出を待つ者」と同じころか数百年あと。<中央>はあいかわらずシステムの外の人たちを排除して、科学その他の知識を独占して生存。それ以外の荒地に住む人たちは、小さなコミューンをつくって、地球の中世時代のような自給自足の生活をしている。医療は…