odd_hatchの読書ノート

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哲学思想

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1

正義はこれまで宗教や倫理による要請として語られてきたが、そのような権威を人があまり認めなくなったので、功利主義で説明するようになった。個人の幸福の増大が社会全体の幸福につながるという考え方。でも、不遇な人をさらに不遇にさせたり、再分配を拒…

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-2

2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年 サンデル、あるいは政治哲学の議論を読むときに、ヨーロッパとアメリカの違いを意識することは重要。本書の指摘をまとめると、社会契約説はヨーロッパでは仮構であるとみなされるが、アメ…

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-3

2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年2019/07/18 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-2 2010年 読みながらいろいろ疑問をもっていたら(サンデルの議論は東洋でも使える? コミュニティって封建的じゃない?)、最…

バックミンスト・フラー「宇宙船「地球」号」(ダイヤモンド社)-2

原著は1969年刊行、邦訳は1972年。前回2005年に読んだので、2015年に再読。2011/12/16 バックミンスト・フラー「宇宙船「地球」号」(ダイヤモンド社) 綜合的な性向 ・・・ 人類の生存地域の拡大や資源の有効活用などは少数の冒険家のおかげ。彼らは未知に…

林達夫/久野収「思想のドラマツルギー」(平凡社)

林達夫の本は「歴史の暮方」(中央文庫) と「共産主義的人間」(中央文庫)しか読んでいない。なるほど、書かれた時代のわりにとても先鋭なこと(しかし20世紀後半以降になると陳腐)をいっていた。一方で、この国の哲学者や思想家は林達夫をえらい、すごい…

マルティン・ハイデッガー「形而上学入門」(平凡社ライブラリ)-1

たしかに哲学に熱中した一時期があって、そのときにこの「形而上学入門」を読んだ。そのときの線引きが今でも残っていて、読んで興奮した記憶を思い出せる。でも、それから四半世紀を超えて、今では「存在」という厄介な問題は、科学の「素朴実在論」でいい…

マルティン・ハイデッガー「形而上学入門」(平凡社ライブラリ)-2「シュピーゲル対談」

ハイデガーは、1933年4月21日にフライブルグ大学の総長に就任。5月1日に同僚とともにナチスに入党。5月27日就任演説でナチスを礼賛したように取れる文言があった(「ドイツ大学の自己主張」)。戦後、当時の講義がいくつかまとめられ、そのなかに1935年夏の…

大森壮蔵「音を視る、時を聴く」(朝日出版社)

朝日出版社は、いろいろな学問の著名学者と文筆業者と対談させるというシリーズを1980年代に出していて、たぶん20冊強までいったのではなかったかな。数冊は読みました。その中でも印象的な一冊。版元を変えていまでも入手可能なのはこの一冊くらい。 大森哲…

エマニュエル・スウェデンボルグ「霊界からの手記」(リュウ・ブックス)

幽霊やオーラを見ることができる知り合いが何人かいて、ときどき霊を見たという話をしてくれる。聞くと、彼ら、「見える」ひとたちは自分のような凡庸な人とは別の苦労をしょっているみたい。子供のころから霊的体験による恐怖に会うとか、メンターについて1…

今道友信「エコエティカ」(講談社学術文庫)

「エコエティカ」という学問分野をつくった著者の啓蒙書。講演五つを並べたので、話題がいったりきたりでわかりにくい。そこで、以下は章ごとのサマリーではなく、自分の自由なまとめ。 エコは生態学、生態圏から借りてきた言葉であるが、自然と同義ではない…

加藤尚武「環境倫理学のすすめ」(丸善ライブラリ)

1991年初出。「環境倫理学」をこの国に導入した哲学者?の啓蒙書。いろいろと「過激」な主張を読んできたものだが、これもそのひとつ。自分のように近代主義と自然科学にどっぷりと浸かったものには、ここで主張されることはいろいろ気に障って仕方がない。 …

マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-1

ハーバード大学の政治哲学教授の講義はとても人気があった。30年間の受講生が14000人!を超えたので、映像に収録して放送した。その時の内容に教授が手を入れて、テキストにしたのがこの本。アメリカでもこの国でも盛んに読まれたという。遅ればせながら入手…

マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-2

2016/07/6 マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-1 2010年の続き 続けて後半。 平等の原理(ジョン・ロールズ) ・・・ 社会契約が薄ばれているのは。ロックは暗黙の合意といい、カントは仮想上としたが、ロールズはどちら…

マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-3

2016/07/6 マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-1 2010年 2016/07/5 マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-2 2010年の続き 徳や善を考えるのはこの国ではなかなか難しい。日常ではその…

竹内靖雄「経済倫理学のすすめ」(中公新書)

タイトルはあまり聞かない学問の名前であるが、これは経済学でも倫理学でもない。我々が日常で直面する問題に対して、徳や正義で判断するのではなく、人に「ノブリス・オブリージュ」のような態度を要求せず、感情をカッコにいれて勘定で判断するようにしよ…

イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-1

カントの政治哲学や歴史哲学の論文を読む。道徳論の難解さはここにはなくとても平易(下記にあるように翻訳のせいかもしれない)。楽しみながら高揚しながら読むことができました。まあ、素人であるおいらがカントの考えを正確に伝えられるはずもなく、解説…

イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-2

2016/06/30 イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-1 1795年 の続き つづいて「永遠平和のために」を読む。政治哲学ではあまり言及されることがないようだが(おいらの偏見)、別の分野の本で言及されることがある。この国では…

久野収/鶴見俊輔/藤田省三「戦後日本の思想」(講談社文庫)-2

2015/12/23 久野収/鶴見俊輔/藤田省三「戦後日本の思想」(講談社文庫)-1 の続き。 社会科学者の思想――大塚久雄・清水幾太郎・丸山真男 ・・・ ほかに名の出るのは、川島武宜、内田義彦、花田清輝、大河内一男、宮城音弥、渡辺慧、都留重人、南博、磯田進、…

久野収/鶴見俊輔/藤田省三「戦後日本の思想」(講談社文庫)-1

1957年から中央公論に連載された論文。戦後の日本の思想運動から6つのタイプを抽出する。3人で分担して一人がレジュメをつくって発表。そのあと、3人の対談となる。このやり方はたぶんアメリカのゼミなどではあっても、この国のアカデミズムにはなかった(好…

日高六郎「戦後思想を考える」(岩波新書)

日高六郎は1917年生まれ。戦後東大教授。1968年の東大紛争で辞職。リベラルとして社会運動にいろいろ参加。この本は1970年代後半に書かれたさまざまな文章を再編集して、1980年に出版された。個人的な記憶でいうと、この本に収録された元の文章を雑誌(主に朝…

ジョージ・スタイナー「ハイデガー」(岩波現代文庫)-2

2015/12/17 ジョージ・スタイナー「ハイデガー」(岩波現代文庫)-1 の続き 2 存在と時間 ・・・ (承前)。本来的な自己の回復は、「もはやそこにないこと」に直面することで行なわれる。そのような無において自己の全体性と有意味性を把握することが可能に…

ジョージ・スタイナー「ハイデガー」(岩波現代文庫)-1

現象学とハイデガーの本(おもには解説書)はいろいろ読んできたが、どれを読んでもよくわからない。むしろ若いときより理解や共感が浅くなっているのではないか、若いときの方がより理解・納得していたのではないかと不安になる。彼の言葉が変わるというこ…

ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)-2

2015/12/10 ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)-1 続けて後半。 7 伝統の欠如と生の歴史的正当化への要求 ・・・ 1871年に成立したドイツ帝国は経済的繁栄を遂げ、アメリカに次ぐ世界第2位の総生産を達成。それによっ…

ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)-1

もともとは1935年に「市民時代末期のドイツ精神の運命」というタイトルで出版された。この中身を正確に示しているわけではないタイトルはドイツ哲学の韜晦趣味もあるだろうが、当時の政権に対する配慮もあっただろう。注意深く設定されたタイトルではあるが…

羽仁五郎「君の心が戦争を起こす」(光文社)

出版されたのは1982年暮れ。自分の見聞でこの年をまとめると、前年ごろにポーランドの「連帯」運動が非合法化され、韓国の軍事政権が別の軍事政権になり、中国の四人組裁判の影響が取りざたされ、イランのイスラム革命が混沌とした様相を示し、ゴルバチョフ…

羽仁五郎「教育の論理」(講談社文庫)

この本に書かれたことのいくつかが、筑波大学と関係している。「新しい大学」と目されて作られた大学でこの著者の講演会を開こうとしたところ(開学3年目の1977年)、当局のお達しで不許可になる。「本学に批判的な人物の講演は認めがたい」とかいう理由。197…

柏木博「肖像の中の権力」(講談社学術文庫)

絵葉書、雑誌の表紙、ポスター、広告など、およそ作家性とは無縁のグラフィックがある。その作者の無名性により意味合いはないとされるが、たくさん収集したとき、おのずと権力の意思とか大衆の欲望が見えてくる。まあ、そんなことをとくに1930-40年代の上記…

なだいなだ「権威と権力」(岩波新書)

サブタイトルが「いうことをきかせる原理・きく原理」となっていて、もしかしたらこちらのほうが主題をよくあらわしている。「権威と権力」というタイトルであっても、予想するような権威と権力の定義を明らかにすることはしていない。むしろ、われわれはい…

ヴィクトール・フランクル「夜と霧」(みすず書房)

この絶滅収容所の記録を前にすると、おののき、恐怖し、震撼し、その記述が際限なく続くことに絶句し、沈黙するしかないところにいってしまう。これほどの惨劇をよくも人間が・・・とか、これほどの虐待をよくも人間が・・・とか、これほどの勇気をよくも人…

村上龍「EV cafe」(講談社)

1984年に村上龍と坂本龍一がゲストを読んで対談した記録。ゲストで呼ばれたのは、吉本隆明、河合雅雄、浅田彰、柄谷行人、蓮実重彦、山口昌男。 この時代、浅田彰の「構造と力」が売れて、ニューアカデミズムという名前で若手の哲学者・評論家の本が大量に流…